Windows 11を直すチームと、壊すチームが同じ会社にいる矛盾

Windows 11を直すチームと、壊すチームが同じ会社にいる矛盾

Windows 11の改善に取り組むチームがいる。同時に、その努力を台無しにする別のチームもいる。どちらもMicrosoftの社員だ。


改善の約束と、裏切りの同時進行

MicrosoftWindows 11を本気で立て直そうとしている。2026年3月、Windows責任者のパヴァン・ダヴルリは「Windows 11の品質基準を引き上げる」と宣言した。

Our commitment to Windows quality
Hello Windows Insiders, I want to speak to you directly, as an engineer who has spent his career building technology that people depend on every day. Windows touches more people’s lives than almost any technology on Earth. Every day, we hear from th

具体的な約束も次々と発表された。タスクバーの移動機能の復活、コンテキストメニューの高速化、ファイルエクスプローラーの起動時間短縮、そしてWinUIへの移行によるネイティブ化の推進。アップデートを無期限に延期できる機能も追加される。

さらに、Windows Phone時代から知られる開発者ルディ・ヒュンが「100%ネイティブアプリ」を作るチームを編成中だと発表した。WebアプリやPWAに頼らない、本物のWindowsアプリを復活させる試みだ。

ヒュンはXで「プラットフォームの経験は問わない。重要なのは強いプロダクト思考と顧客へのフォーカスだ」と語り、チームへの参加を呼びかけている。

ここまでは希望の光だ。問題は、この光を消そうとする動きが同じ社内で起きていることにある。

時系列で見る「改善」と「問題」の同時進行
3月20日
パヴァン・ダヴルリがWindows 11品質向上を宣言
タスクバー移動復活、WinUI移行など具体策を発表
3月26日
ルディ・ヒュンが「100%ネイティブアプリ」チーム編成を発表
WebアプリやPWAに頼らない開発方針
3月30日
GitHub Copilotの広告注入が発覚
150万件以上のPRに宣伝文を無断挿入
4月初旬
Edge自動起動テストがInsider Previewで開始
オプトアウト方式で「No thanks」を押さないと有効化
4月5日
新CopilotアプリがInsiderに配信
4月6日
新Copilotの正体が850MBのEdgeバンドルと判明
mscopilot.exeをmsedge.exeにリネームするとEdgeが起動
🔵 改善施策 🔴 問題事象

GitHub Copilotが「広告」を1万件以上注入

3月30日、メルボルンの開発者ザック・マンソンは、自分のプルリクエストに見覚えのない文章が追加されていることに気づいた。

同僚がCopilotにタイポの修正を依頼しただけだった。だがCopilotは修正と同時に、「Raycastを使えばCopilotコーディングエージェントmacOSWindowsのどこからでも起動できる」という宣伝文句をPRの説明文に挿入していた。

同じ文言を検索すると、GitHub上で1万1000件以上のプルリクエストに同一の文章が見つかった。GitLabにまで波及していた。Neowinの調査では、Slack、Teams、VS Code、JetBrains IDEなどを宣伝する類似の「tips」が150万件以上のPRに注入されていたことが判明した。

GitHubのプロダクトマネージャー、ティム・ロジャースは「開発者エージェントの新しい使い方を学んでもらうためだった」と説明した。

「振り返れば、人間が書いたPRをCopilotが勝手に編集するのは間違った判断だった」と認め、機能は無効化された。

Microsoftは「広告ではなくプログラミングロジックの問題」と主張している。だが、問題の本質は広告かバグかではない。ユーザーの成果物を無断で書き換えたという事実だ。


Edgeが起動時に勝手に立ち上がる

翌週、別の問題も浮上した。

Windows 11Insider Previewで、Edgeがサインイン時に自動的に起動する機能がテストされている。「Edgeはサインイン時に起動するようになりました。ブラウズしたいときにすぐ使えます」というバナーが表示され、「No thanks」を押さない限り、デフォルトで有効になる。

つまりオプトアウト方式だ。ユーザーが明示的に拒否しなければ、毎回Edgeが勝手に開く。ChromeFirefox、その他のブラウザをデフォルトに設定していても関係ない。

Microsoftは長年、Edgeをバックグラウンドでプリロードする「スタートアップブースト」機能を提供してきた。今回のテストは、それを一歩進めてブラウザ自体を画面に表示させるものだ。

「便利さ」と「強制」の境界線は紙一重だ。そして今回の実装は、明らかに後者に踏み込んでいる。


新Copilotアプリの正体はEdgeだった

4月5日、新しいCopilotアプリがInsiderに配信された。Microsoft Storeからダウンロードでき、以前のWinUIベースのネイティブアプリを置き換えるものだ。

だが、中身を調べた開発者たちが驚くべき発見をした。

インストールフォルダには、約850MBMicrosoft Edgeがまるごと含まれていた。msedge.exe、msedge.dll、Chromiumエンジン一式、DRMモジュール、拡張機能サブシステム——完全なブラウザが同梱されていたのだ。

@TheBobPonyがXで実験結果を共有した。mscopilot.exeをmsedge.exeにリネームし、フォルダ名を「Copilot」から「Edge」に変えると、普通にMicrosoft Edgeが起動した。逆も同様だ。

Windows Latestの検証では、Copilotアプリのバージョン番号がEdgeのバージョン番号と一致することも確認された。バージョン146.0.3856.63のCopilotは、バージョン146.0.3856.59のEdgeと事実上同一のコードベースだった。

Microsoftは「100%ネイティブアプリ」を作ると宣言した。その直後に、Edgeを丸ごとバンドルしたWebラッパーをリリースしたのだ。


一貫性のない意思決定の代償

2026年3〜4月:Microsoft社内の改善と問題
🔧 改善の動き ⚠️ 問題の動き
タスクバー移動機能の復活 GitHub Copilotが150万件以上のPRに宣伝文を無断挿入
コンテキストメニューの高速化 Edgeがサインイン時に自動起動するテスト開始
ファイルエクスプローラーの起動短縮 新CopilotアプリがEdge丸ごと(850MB)バンドル
WinUIへの移行によるネイティブ化 「100%ネイティブ」宣言の直後にWebラッパー配信
アップデート無期限延期オプション オプトアウト方式でEdgeを強制表示
改善施策はWindows Insider Blogの公式発表、問題事象は各報道に基づく

これらの出来事を個別に見れば、それぞれに「理由」がある。Copilotの「tips」は開発者教育のため。Edgeの自動起動はユーザビリティのため。新CopilotがEdgeベースなのは開発効率のため。

だが、ユーザーの視点から見れば、すべてが同じ方向を向いている。Microsoftの製品やサービスを押し付ける方向だ。

Windows 11チームが信頼回復に取り組んでいる最中に、別のチームがその信頼を削っている。改善と改悪が同時進行している。この構造を変えない限り、どれだけ素晴らしい機能を追加しても、ユーザーの不信感は消えない。

パヴァン・ダヴルリの約束は本物かもしれない。ルディ・ヒュンのチームは優れたアプリを作るかもしれない。だが、GitHubチームやEdgeチームやCopilotチームが同じ方向を向いていなければ、Windows 11の「復活」は永遠に完成しない。

Microsoftにとって最大の障壁は、Microsoft自身だ。


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