Xでリンク付き投稿は本当に損か ニーマンラボが18社調査
ニューヨーク・タイムズのフォロワー5,300万に対しGlobe Eye Newsは88万6,000。なのに1投稿あたりの反応数は後者が22倍多い。ニーマン・ラボが18社を調べ、ある歪みを浮き彫りにした。
ニューヨーク・タイムズのフォロワー5,300万に対しGlobe Eye Newsは88万6,000。なのに1投稿あたりの反応数は後者が22倍多い。ニーマン・ラボが18社を調べ、ある歪みを浮き彫りにした。
NYT5,300万対Globe Eye88万6,000という逆転
まずは生の数字から入る。ニーマン・ジャーナリズム・ラボの編集長Laura Hazard Owenが、大手18社のX公式アカウントから直近200投稿ずつを集め、反応数(いいね+リプ+リポスト)の中央値を測った。
結果は想像以上にはっきりしていた。ニューヨーク・タイムズは5,300万のフォロワーを持ちながら、1投稿あたりの反応中央値は383しかない。対するGlobe Eye Newsはフォロワー88万6,000しかないのに、1投稿あたり8,418の反応を集めている。
フォロワー数で53倍を超える開きを持つNYTが、反応数では22分の1に沈む。数字だけ見ても、何かが歪んでいる。
両者には決定的な違いが一つある。NYTの投稿のうち88%はリンク付き。一方のGlobe Eye Newsはサンプル期間中、リンクを一本も貼っていない。
| 媒体 | フォロワー数 | リンク含有率 | 反応中央値 |
|---|---|---|---|
| NYT | 5,300万 | 88% | 383 |
| CNN | 6,170万 | 90% | — |
| WSJ | 2,100万 | 98% | — |
| Fox News | 2,870万 | 9% | 18社中3位 |
| Globe Eye News | 88万6,000 | 0% | 8,418 |
リンクを載せた瞬間、アルゴリズムが沈める
きっかけはNate Silverが4月上旬に公開した記事だった。彼はXを速報の追跡手段として「ほぼ役に立たない」と切り捨てた。アルゴリズムが外部リンク付きの投稿を露骨に下位表示しているように見えたからだ。感覚論ではない。Owenの数値がそれを裏付けた。
NYTのフォロワーは5,300万だ。それでも、一刻を争う速報を伝えるツイートですら、いいね・リポスト・返信を合わせて数百件しか集まらないことが多い。
Silverはそう書いた。Owenが調べたもう2つの有料媒体も、事情はほとんど同じだ。CNN(6,170万フォロワー)はツイートの90%に、WSJ(2,100万フォロワー)は98%にリンクを含めている。
いずれも記者の取材を自社サイトへ誘導するのが本来の狙いだ。だがリンクを貼るたびに、アルゴリズムはその投稿を見せる相手を減らしていく。購読ビジネスを支えるための行動そのものが、プラットフォーム上では反応を削る原因になっている。
Owen自身がその露骨さをこう綴っている。
リンクがツイートの反応を削いでいることは、グラフを見るとはっきりわかる。18社を同じ図に収めると、リンクを多用する伝統メディアが左下隅にほとんど区別のつかない塊となって集中し、フォロワーの規模がどれだけ大きくても同じ場所に沈んでいく。
2016年から崩れていた「リンク経済」
10年前、Parse.lyが発表した調査では、かつてのTwitterがニュースサイトに送るトラフィックは全体の約1.5%にすぎなかった。それでも当時の報告書は「ニュースはTwitterで始まる」と評していた。速報と会話の起点として、数字以上の役割があったからだ。
10年後の現在、かつてTwitterと呼ばれていた場所は、トラフィックをほとんど送らず、速報と会話の場としても機能しなくなっている。代わりに台頭したのが「エンゲージメント最大化アカウント」と呼ばれる業態だ。
Globe Eye News、Leading Report、unusual_whalesといったアカウントは、速報を装った短文をリンクなしで流し続け、反応数だけを積み上げていく。取材コストはほぼゼロ。にもかかわらず、アルゴリズム上では本家の新聞社を圧倒する。報道の裏付けを持つ側が不利になる。これが今のXの設計思想だ。
Fox Newsだけが適応した理由
伝統メディアの中で1社だけ、この罠から抜け出している。
Fox News(2,870万フォロワー)はツイートにリンクを含める比率をわずか9%まで絞り込んだ。代わりに動画やグラフィックで完結する投稿に切り替えた。その結果、調査対象18社のうちGlobe Eye News、Leading Reportに次ぐ3位の反応中央値を記録している。
X側からの反論もある。プロダクト責任者Nikita Bierは、NYTの反応が伸びないのはペイウォールの存在と、投稿スタイルの硬直性のせいだと主張した。
NYTはTwitterが登場してからの20年間、投稿文の書き方を一度も見直してこなかった。
一理ある指摘だ。だがOwenの集計を見ると、ペイウォールを持たないAP、Reuters、BBC、CBS Newsといった媒体も、同じグラフの左下に団子状に固まっている。リンクが多く、反応が少ないゾーンだ。問題は個社の怠慢ではなく、リンクを含むという行為そのものに罰則が組み込まれている点にある。
誰のためのタイムラインなのか
新聞社がXに投稿し続ける理由は単純で、まだフォロワーが数千万単位で存在するからだ。しかし購読モデルが収益の柱になっている以上、彼らが本当に欲しいのは「反応」ではなく「クリック」である。アルゴリズムがその動線を切り詰めるほど、報道機関にとってXに残る意味は薄れていく。
ユーザー側から見ても、速報の信頼性を担保するのは「誰が取材したか」だ。取材した側の投稿は埋もれていく。代わりに上位に出てくるのは、誰が書いたかもわからない速報アカウントだ。こうしたタイムラインが情報流通として健全だとは、とても言えない。
リンクを貼る行為に罰を与えるアルゴリズムは、プラットフォームが何を育てたいのかという意思表示でもある。報道を育てないと決めた場所に、報道が居座り続ける。残っている理由はもう、数千万のフォロワー数だけだ。
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