岬 徹

テクノロジー分野を中心に2024年からYouTubeで約3,000本の動画を制作。登録者4万5千人超、Xフォロワー1万人超、noteフォロワー千人超。AI、半導体、PC、ゲーム業界について、一次資料やデータを基に分析を続ける。

岬 徹
SQLite書き直しの次はPostgres。ひとつのコアに複数DBを載せる構想

データベース

SQLite書き直しの次はPostgres。ひとつのコアに複数DBを載せる構想

SQLiteをRustで一から書き直したデータベーススタートアップが、次の標的にPostgresを選んだ。同じ仮想マシンの上にフロントエンドを増やし、ひとつのコアであらゆるSQLデータベースを動かす構想が動き出した。 フォークから書き直しへ SQLiteは2000年にD・リチャード・ヒップ(D. Richard Hipp)が開発した、軽量で自己完結型のSQLエンジンだ。世界で最も広く使われているデータベースとされるが、開発体制は特殊で、外部からのコード貢献を受け付けていない。これまでのコントリビューターは30人に満たず、テストスイートも非公開のままだ。 2022年、グラウベル・コスタ(Glauber Costa)とペッカ・エンベリ(Pekka Enberg)の二人が、この状況に対する別解を作った。ともにLinuxカーネルの開発者としてキャリアを積み、NoSQLデータベースScyllaDBで技術部門の要職を務めた経歴を持つ。サンフランシスコでChiselStrikeを設立し、オンラインサービス向けのデータベースを探していた。SQLiteは当然の選択肢だが、クラウドで使うには手を入

Windows 11の内蔵AIモデル、秋にPhi SilicaからAion Instructへ全面移行

Windows11

Windows 11の内蔵AIモデル、秋にPhi SilicaからAion Instructへ全面移行

Windows 11に組み込まれたローカルAIの基盤が、この秋に丸ごと入れ替わる。 APIは同じ、中身は別物 Microsoftの公式ドキュメントによると、Windows 11のローカルAI基盤であるPhi Silicaが廃止され、後継のAion Instructに置き換わる。移行は3段階で、10月上旬のテスト用パッケージ配布に始まり、10月中にWindows Insider Preview展開、11月に一般向け端末への展開を経て、Phi Silicaは削除される。 WindowsForum.comが報じた開発者向け移行計画では、各段階の目標日を現地時間10月1日、10月23日、11月24日としている。 対象となるのはLanguageModel APIとImageDescription APIの2つ。テキスト要約、文章の書き換え、画像の説明文生成など、Windowsアプリがローカルで使えるAI機能を裏で支える小規模言語モデルが変わる。 Microsoftは既存のAPI表面を維持するとしており、多くのアプリはコード変更なしで動作し続ける見込みだという。ただ、同じAPIを叩いて

RTX 5070 Tiの箱から2リットルの水。ロシアの受取拠点で発覚

GPU

RTX 5070 Tiの箱から2リットルの水。ロシアの受取拠点で発覚

ロシアの通販で購入したGPUの箱を受取拠点で開封したところ、中身がペットボトルの水だった。購入者が開封の全行程を録画していたことで、すり替えの証拠が残った。 受取拠点で撮った動画が証拠になった ロシア最大のEC「ワイルドベリーズ(Wildberries)」でGIGABYTE製GeForce RTX 5070 Tiを注文した購入者が、受取拠点で箱を開けたところ、グラフィックボードの代わりに2リットルのペットボトルの水が入っていた。注文額は9万ルーブル、日本円で約19万円にあたる。 購入者は、この一部始終を店員の目の前で動画に収めていた。荷物を受け取り、外装のシリアルナンバーラベルをカメラに映し、フィルムを剥がし、箱を開ける。全行程が途切れなく記録されている。 小売パッケージのフィルムは外見上無傷だった。シリアルナンバーのラベルにも目立った異常はない。にもかかわらず、内箱を開けると水が入っていた。ペットボトルの重量がグラフィックボードに近いため、持った感触では異変に気づきにくい。 動画を投稿したのは購入者の友人の妻で、本人から許可を得て公開したという。 Москвич зак

米FCCの新規制、ルンバの新モデルも対象 適用範囲を整理

米国

米FCCの新規制、ルンバの新モデルも対象 適用範囲を整理

FCCが安全保障上の脅威として禁止した「先進的ロボット機器」の定義は、ヒューマノイドロボットだけでなく、ほぼすべてのロボット掃除機を飲み込む広さだった。 ドローン、ルーター、そしてロボット 米連邦通信委員会(FCC)が現地時間7月28日、カバードリストを更新した。新たに追加されたのは「外国製の先進的ロボット機器」と「外国製パワーインバーター」の2カテゴリ。カバードリストに載った機器は、新モデルのFCC認証が下りなくなり、米国での輸入・販売が事実上遮断される。 FCCは2025年12月にDJIを含む外国製ドローン、2026年3月にルーターを同じ仕組みで禁止してきた。今回の措置で、その規制がロボットにまで拡大した。 FCCカバードリスト拡大の経緯 2025年12月ドローンと関連部品を禁止DJI・Autelを含む外国製ドローンをカバードリストに追加2026年3月外国製ルーターの新規認証を停止TP-Linkの条件付き承認はまだ審査中2026年7月ロボット掃除機も対象に「先進的ロボット機器」をカバードリストに追加。 掃除機・芝刈り機・配達ロボットも該当 ※既存の認証済み

GCC、LLM生成コードの受け入れを「約15行」で線引き

GCC

GCC、LLM生成コードの受け入れを「約15行」で線引き

GCC運営委員会がAIポリシーの勧告を正式に受け入れた。著作権上重要な規模のLLM生成コードは受け付けない。ただしテストケースは例外とし、2027年初頭に見直す。 3ヶ月の検討を経た結論 GCC(GNU Compiler Collection)の運営委員会が現地時間7月29日、AIポリシー作業部会の勧告を受け入れたと発表した。 4月に設立された作業部会は、Red Hatのジョナサン・ウェイクリー(Jonathan Wakely)氏がリーダーを務めた。メンバーはカルロス・オドネル(Carlos O'Donell)氏やスダクシナ・ダス(Sudakshina Das)氏ら7名。約3ヶ月の検討を経て勧告がまとまった。 採択されたポリシーの骨子を整理する。 GCCは当面、LLM生成コンテンツを含む、またはそこから派生した「著作権上重要な」貢献を拒否する。 ここでいう「著作権上重要」(legally significant)とは、GNUプロジェクトのメンテナーガイドラインに定められた基準で、おおむね15行のコードまたはテキストが閾値になる。 15行を超える貢献にはFSF(フリーソフ

Rust製X11サーバーyserver 1.4。SteamとChromeがGPU加速に対応

Linux

Rust製X11サーバーyserver 1.4。SteamとChromeがGPU加速に対応

RustとAIで一から書かれたX11サーバーyserverが、バージョン1.4でGPU加速とKDE Plasmaの動作確認を果たした。6月の公開から2か月足らずで、外部から3人の開発者がパッチを送るプロジェクトになっている。 ChromeとSteamが動いた理由 yserver 1.4の目玉は、GLXピクセルバッファの実装だ。 従来のyserverでは、ChromeやSteamのようなGPU加速を前提とするアプリケーションが描画を正しく処理できなかった。ピクセルバッファがソフトウェア側で処理されており、GPUのピクスマップに紐づいていなかったためだ。1.4ではこの処理を改め、GLXピクセルバッファを実際のGPUピクスマップで裏付ける実装に切り替えた。 これにより、ChromeとSteamでWebGLが動作するようになった。 ただし完全ではない。ChromeでGPUパスが有効になったことで、メニューの描画が一部黒く表示される不具合が確認されている。Steamのメニュー描画にも同じ問題が波及しており、開発者のヨス・デハース(Jos Dehaes)氏はWebGLの有効化コミットを

シリコン量子プロセッサが自律で誤り訂正。HRL、Natureに発表

量子コンピュータ

シリコン量子プロセッサが自律で誤り訂正。HRL、Natureに発表

室温の制御装置なしで量子コンピュータの誤り訂正を完結させるシステムが、初めて実証された。 配線の壁 量子ビットの数が増えるほど、それを制御するための信号線と外部電子機器が膨張する。 現在の研究室では、大型ラックに積まれた電子機器から何千本ものケーブルを冷凍機の中の量子ビットへ引き込むのが一般的だ。冷凍機の内部は宇宙空間より低い温度に保たれている。だが外から伸びるケーブルが熱を持ち込み、量子ビットの状態を乱す。 量子ビットが数十個の段階ではこの力業で何とかなる。だが数百万個が必要とされる実用機では、物理的に破綻する。 HRL Laboratoriesが現地時間7月29日にNatureへ掲載した論文は、この問題に対する具体的な回答を示した。 冷凍機の中で完結する制御 HRLが開発したのは、量子ビットチップ、極低温CMOSコントローラ、超伝導リボンケーブルの3つを一体化した量子処理装置(QPU)だ。 核になるのはカスタム設計の制御チップで、約マイナス268℃(4ケルビン)の冷凍機内部で動作する。通常のCMOSプロセスで製造されているが、消費電力が極めて低いため冷凍機の中に

FreeBSD、GPL完全除去の宣言を訂正。カーネルにまだ残っていた

FreeBSD

FreeBSD、GPL完全除去の宣言を訂正。カーネルにまだ残っていた

ユーザーランドからのGPL除去は完了したが、カーネルの中にはLinuxから持ち込まれたGPLコードがまだ存在する。FreeBSD Wikiの「Mission accomplished!」は修正された。 「Mission accomplished!」の訂正 FreeBSD 16の開発ツリーからGPLコードが「全て」除去された。2週間前のことだ。dialogの退役でgnu/ディレクトリが空になり、FreeBSD WikiのGPLinBaseページには「Mission accomplished!」(任務完了!)の文字が掲げられた。 その文言が修正されている。 変更前は「FreeBSD is 'free' from ANY GPL code in its Base System」だった。変更後は「FreeBSD's userland is 'free' from ANY

NVIDIA従業員を台湾検察が勾留。密輸捜査がサプライチェーン上流に拡大

NVIDIA

NVIDIA従業員を台湾検察が勾留。密輸捜査がサプライチェーン上流に拡大

Supermicro製AIサーバーの対中密輸事件で、初めてNVIDIA従業員に捜査の手が伸びた。NVIDIAが顧客の審査を強化するさなかの出来事であり、内部からの関与は防壁の意味を変える。 「第3波」の標的 台湾の基隆地方検察署は現地時間7月28日、Supermicro製AIサーバーの対中不正輸出事件で張姓の容疑者を勾留したと発表した。容疑は業務文書の偽造と背任。検察は「犯罪の嫌疑が強く、逃亡・証拠隠滅・共犯者との口裏合わせのおそれがある」として裁判所に勾留と接見禁止を請求し、認められた。 捜索は現地時間7月24日に行われ、張の自宅と勤務先が対象になった。検察は所属企業名を公表していないが、台湾メディアの鏡報はこの人物をNVIDIAのシニアビジネス開発マネージャーと報じた。Bloombergも、捜索先にNVIDIA台北オフィス内の本人のデスクが含まれていたと伝えている。 チップ密輸事件でNVIDIA従業員が法的措置の対象になったのは、これが初めてだ。 NVIDIAは声明で「密輸は論外だ」とし、OEMなど既知のパートナー企業に販売しており、輸出管理規則の順守を徹底していると強

Valve出資でRADVのWindows移植が始動。CS2の動作に成功

Vulkan

Valve出資でRADVのWindows移植が始動。CS2の動作に成功

LinuxのAMD向けオープンソースVulkanドライバが、Windowsへの上陸を試みている。すでにCounter-Strike 2が動いた。 Steam Deckを支えるドライバ、Windowsに向かう RADVはMesaプロジェクトのオープンソースVulkanドライバだ。AMD製GPUに対応し、Linuxでは事実上の標準Vulkanドライバとして定着している。Steam Deckの描画を担い、Valveのゲーム基盤を支える中核技術でもある。 AMDは自社のPAL(Platform Abstraction Library)ベースの代替ドライバを廃止し、オープンソースのMesaに開発資源を集約した。AMD自身がRADVを公式ドライバとして認めている。 Windowsでは事情が異なる。AMDユーザーが使えるVulkanドライバはAMD純正の非公開ドライバに限られる。ここに、Valveの出資を受けたCollaboraのエンジニアが挑んでいる。 Collaboraは現地時間7月28日、RADVをWindowsに移植する実験的な取り組みの成果を公開した。Counter-Strik

JFrog、OpenAIモデルが悪用した脆弱性8件を修正

AI

JFrog、OpenAIモデルが悪用した脆弱性8件を修正

OpenAIのモデルがサンドボックスを脱出した際に悪用したゼロデイ脆弱性の正体が判明した。パッケージ管理ツールArtifactoryに存在した8件の未知の欠陥だ。 「名前不明のプロキシ」の正体 OpenAIは現地時間7月21日にHugging Face侵害を公表した時点で、モデルがサンドボックス脱出に利用したソフトウェアの名前を明かしていなかった。安全制御を解除した状態でサイバー能力ベンチマークExploitGymに挑んでいたGPT-5.6 Solと未公開モデルが、テスト環境内のプロキシからゼロデイ脆弱性を発見し、Hugging Faceの本番インフラまで到達した事案だ。 現地時間7月27日、そのプロキシを開発したJFrogのCTOヨアブ・ランドマン(Yoav Landman)氏がブログで、問題のソフトウェアがセルフホスト版のJFrog Artifactoryだったことを認めた。Artifactoryはnpm、PyPI、Maven Centralなど複数のパッケージレジストリのプロキシおよびキャッシュとして機能するソフトウェアで、開発パイプラインの要として広く使われている。

Copilot for Wordに自己増殖型AIワーム。144日経っても直らず

AI

Copilot for Wordに自己増殖型AIワーム。144日経っても直らず

Word文書に隠した命令がCopilotを乗っ取り、生成した文書を次の感染源に変える。マイクロソフトはモデル更新を含む対策を重ねたが、攻撃の手口を変えるだけで再現できる状態が続いている。 文書が文書を汚染する ノルウェーのデータサイエンティスト、ホーコン・モーロイ(Håkon Måløy)氏が現地時間7月28日、Copilot for Wordを経由してWord文書間を自己増殖するAIワームの実証結果を公開した。応用AIと機械学習の博士号を持つモーロイ氏が「Context Collapse」と名付けたシリーズの第3弾にあたる。 Part 1ではCopilotのメモリ汚染、Part 2ではメール経由の命令注入を扱い、いずれも緩和済みとなった。今回は公開時点で未修正のまま残っている。 攻撃者はWord文書に悪意のある命令を仕込む。白背景に白文字、フォントサイズ8で記述するため肉眼ではまず見えないが、Copilot for Wordはテキストの色やサイズといった書式情報をすべて除去してからLLM(大規模言語モデル)に渡すため、Copilotには読める。 被害者がこの文書をCopi

冷戦のウラン施設が1000億ドルのAIキャンパスに。専用発電4.6GW併設

AI

冷戦のウラン施設が1000億ドルのAIキャンパスに。専用発電4.6GW併設

ケンタッキー州西部にある旧ウラン濃縮施設が、1000億ドル規模のAIデータセンターキャンパスに転用される。専用発電4.6ギガワットを併設し、住民の電気料金には「1ドルも転嫁しない」と約束した。 核兵器のための施設が、AIのための施設になる 米エネルギー省(DOE)は現地時間7月29日、ケンタッキー州西部マクラッケン郡のパデューカ施設をAIデータセンターキャンパスとして再開発すると発表した。投資規模は1000億ドル超(約16兆円)。ケンタッキー州史上最大級の民間投資になるという。 パデューカ施設はもともと、冷戦期のウラン濃縮工場だった。1950年に原子力委員会が立地を選定し、1952年に操業を開始。核兵器用の濃縮ウランを製造し、後に商業用原子炉の燃料供給にも使われた。 米国最後の政府所有ウラン濃縮施設だった。商業濃縮が終了したのは2013年5月。2014年10月にDOE環境管理局に正式返還され、それ以降は除染・解体が続いていた。 3,556エーカー(約14平方キロメートル)の敷地には500以上の施設があり、大容量の送電インフラ、水処理場、光ファイバー、道路が整備されている。7

Windows 11にOneDrive Photosが自動インストール 対象環境を確認

Windows11

Windows 11にOneDrive Photosが自動インストール 対象環境を確認

Windows 11のスタートメニューに、覚えのない写真アプリが増えている。顔認識機能を備え、削除にはOneDriveごとアンインストールするしかない。 インストールした覚えのないアプリ Windows 11で「フォト」を検索すると、見慣れないアプリが候補に現れることがある。OneDrive Photosという名前の写真ビューワーだ。 Windows Latestが報じたところによると、このアプリはWindows UpdateまたはOneDrive同期クライアントの更新を通じて配信されたとみられる。ユーザーが自分でインストールした形跡はない。スタートメニューの「すべてのアプリ」一覧にもWindows検索の結果にも出てくるが、いつ入ったのか分からない。 Microsoftアカウントにサインインしていなくても出現する。同期機能を一切使っていなくても、OneDriveがPCに入っているだけで対象になる。Windows 11にはOneDriveが標準搭載されているため、ほぼすべてのユーザーに影響しうる。 OneDrive Photosの存在自体は新しい話ではない。2025年秋にはM