Chrome、ようやく垂直タブに対応──競合から5年遅れの「追いつき」

世界最大のブラウザが、ようやく他のブラウザに追いついた。皮肉でも批判でもなく、ただの事実だ。

Chrome、ようやく垂直タブに対応──競合から5年遅れの「追いつき」

世界最大のブラウザが、ようやく他のブラウザに追いついた。皮肉でも批判でもなく、ただの事実だ。


Googleが垂直タブと読書モードを全ユーザーに展開

Chromeに垂直タブがやってきた。2026年4月7日、Googleはデスクトップ版Chromeに2つの新機能を展開すると発表した。タブをブラウザウィンドウの左側に縦に並べる垂直タブと、ページ全体を使った没入型の読書モードだ。

Google

どちらも「ついに」という言葉がふさわしい。Microsoft Edge2021年3月から、Firefoxは2025年3月から垂直タブを標準搭載している。Chromeは世界シェア約6割を超える最大のブラウザでありながら、この機能では完全に後発だった。

垂直タブは、タブをサイドバーに配置することで、ページタイトル全体を表示し、タブグループの管理を容易にする。多くのタブを開く「タブ中毒者」にとっては待望の機能だ。

Stripe共同創業者のジョン・コリソンも、正式展開に先立ちフラグ設定での有効化方法を共有していた。「外部モニターの画面領域をより効率的に使える」と述べている。


5年の沈黙と「10年前の実験」

垂直タブの歴史を振り返ると、Googleの慎重さが際立つ。TechCrunchの報道によれば、Googleは過去に一度垂直タブを実験していたが、ベータ版のまま終わっている。

主要ブラウザ 垂直タブ対応時期
Edge
2021年3月
Firefox
2025年3月
Chrome
2026年4月
2021 2022 2023 2024 2025 2026
Edgeから5年、Firefoxから1年遅れ
Edgeは89、Firefoxは136、Chromeは正式版で対応

その間、競合は次々と動いた。Microsoft Edgeは2021年3月にEdge 89で垂直タブを正式導入。Firefox2025年3月のバージョン136で対応。Arc、Vivaldi、Braveといった新興ブラウザは、垂直タブを差別化要素として前面に押し出してきた。

Chromeが垂直タブを持たないことは、これらの競合にとって「Chromeにはない機能がある」と言える貴重な材料だった。

2026年1月にはChrome Beta(バージョン145)でフラグとして利用可能になったが、バグが多く一度は取り下げられた。正式な全ユーザー展開は4月まで待つことになった。


使い方は右クリックだけ

有効化の手順はシンプルだ。Chromeのウィンドウ上部を右クリックし、「Show Tabs Vertically」(タブを縦に表示)を選択するだけ。タブがサイドバーに移動し、ページタイトルが完全に表示されるようになる。

垂直タブの状態では、タブグループも縦に整理される。サイドバーはファビコンのみの最小表示にも切り替え可能で、必要に応じて展開できる。水平タブに戻したい場合も、同じメニューから切り替えられる。


読書モードも全面刷新

垂直タブと同時に、読書モードの大幅な改善も発表された。従来の読書モードはサイドパネルとして開くものだったが、新版はフルページインターフェースを採用している。

ページを右クリックして「Open in reading mode」を選ぶと、広告やサイドバーなどの視覚的ノイズを除去し、テキストに集中できる画面に切り替わる。フォント、色、行間隔も調整可能で、音声読み上げ機能もある。

ニュースサイトの広告過多が問題視される中、皮肉なことにその広告収入減の一因となったGoogle自身が、広告を非表示にする機能を強化している。


「追いつき」の先にあるもの

Chromeの垂直タブ対応は、機能としては「当然」であり、タイミングとしては「遅い」。だが、世界最大のブラウザが対応したことで、垂直タブはもはやニッチな選好ではなくなった。

主要ブラウザのすべてが垂直タブをサポートした今、水平タブが「デフォルト」であり続ける理由は、慣れ以外にあるだろうか。

TechCrunchは「競合ブラウザが差別化に使っていた機能をChromeが取り込んだことで、Arcのような新興ブラウザの訴求力が弱まる可能性がある」と指摘している。実際、Arc開発元のThe Browser Companyは、Arcの開発を縮小AIブラウザ「Dia」に注力すると発表している。

Chromeが追いついたのか、それとも競合が差別化の武器を失ったのか。どちらにしても、垂直タブはもはや標準だ。


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