Firefox 149 vs Chrome 147、Linuxベンチマーク対決の勝者と敗者
新ベンチマーク「JetStream 3」がChrome優位を鮮明にした。だが数字の裏には、両ブラウザの設計思想の違いが透けて見える。
JetStream 3が突きつけた現実
LinuxデスクトップにおけるFirefoxとChromeの性能差が、新たなベンチマークで改めて浮き彫りになっている。
Phoronixが2026年4月10日に公開した比較テストでは、Intel Core Ultra X7 358H(Panther Lake)搭載ノートPC上のUbuntu 26.04環境で、Firefox 149.0.2とChrome 147.0.7727.55を複数のベンチマークで計測した。JavaScript性能ではChromeが圧勝した。だがレンダリングではFirefoxが食い下がる。エンジニアリングの力点の違いが、そのままスコアに出た格好だ。
最も注目すべきは、3月31日にリリースされたばかりのJetStream 3での結果だろう。Apple、Google、Mozillaが共同開発した7年ぶりのメジャーアップデートで、Chromeは284.65、Firefoxは194.85を記録。Chromeが約1.47倍の性能差をつけた。
新しいモノサシで測っても、V8の優位は変わらなかった。
JetStream 3は、2019年のJetStream 2以来のメジャー更新で、WebAssemblyのSIMDやWasmGC、例外処理に対応。C#、Dart、Java、Kotlin、Rustなど多言語から生成されたWasmアプリの評価が可能になった。
この差は新ベンチマークに限った話ではない。旧世代のJetStream 2でもChromeが419.79対291.16で約1.44倍、さらに古いJetStreamでも601.29対436.27で約1.38倍。むしろベンチマークが新しくなるほど、Chromeの優位は拡大している。GoogleがV8の最適化に注いできたリソースの厚みが、そのまま数字に出ている。
| ベンチマーク | Chrome 147 | Firefox 149 | Chrome倍率 |
|---|---|---|---|
| JetStream | 601.29 | 436.27 | 1.38倍 |
| JetStream 2 | 419.79 | 291.16 | 1.44倍 |
| JetStream 3 | 284.65 | 194.85 | 1.47倍 |
JavaScriptの壁、レンダリングの意地
JavaScript処理速度の差は、JetStream系だけに留まらない。
ARES-6ではChromeが5.61ミリ秒に対しFirefoxが10.86ミリ秒と、約2倍の速度差がついた。Octaneでも10万4359対6万8252と、1.53倍の開きがある。Speedometer 3.1でもChromeが38.8、Firefoxが31.3で、約1.24倍の差だ。
純粋なJavaScript実行速度では、テスト項目を問わずChromeが上だ。
だが、ブラウザの性能はJavaScriptだけで決まるものではない。
描画性能を測るMotionMarkでは、Firefoxが1777.72を記録してChromeの1703.30を上回った。CSSのスタイル解決速度を測るStyleBenchでは、Firefox 144.00に対しChrome 86.84と、Firefoxが1.66倍もの差をつけている。
MotionMarkはCanvasやCSS、SVGの描画パフォーマンスを計測するベンチマークで、日常的なWebページの表示体験により近い指標とされる。
Geckoエンジンのレンダリングパイプラインが、CSSの処理とグラフィック描画において依然として強みを持っていることを、この数字は示している。JavaScriptで大敗しても、画面に映るものを速く描くという土俵ではFirefoxが譲らない。
Geckoエンジンのレンダリングパイプラインが、CSSの処理とグラフィック描画において依然として強みを持っていることを、この数字は示している。
WebAssemblyは接戦、勝敗は項目次第
もう一つ興味深いのが、WebAssembly(WASM)関連テストの結果だ。
PSPDFKit WASMではFirefoxが375でChromeの396を上回り、WASM collisionDetectionでもFirefoxが198.90対201.23とわずかに勝利した。一方、WASM imageConvoluteではChromeが14.39ミリ秒でFirefoxの16.60ミリ秒を下回っている。
WASMの分野では両者がほぼ互角の戦いを繰り広げている。JetStream 3でWASMの比重が15〜20%に増加したことを考えると、今後のエンジン最適化の方向性を占う重要な領域だろう。
| ベンチマーク | Chrome 147 | Firefox 149 |
|---|---|---|
| JetStream 3 | 284.65 | 194.85 |
| ARES-6 ▼ | 5.61ms | 10.86ms |
| Speedometer | 38.8 | 31.3 |
| Octane | 104,359 | 68,252 |
| MotionMark | 1,703.30 | 1,777.72 |
| StyleBench | 86.84 | 144.00 |
| PSPDFKit ▼ | 396 | 375 |
| WASM衝突 ▼ | 201.23 | 198.90 |
| WASM画像 ▼ | 14.39ms | 16.60ms |
消費電力とメモリ、意外な接近戦
ベンチマーク実行中のシステムリソースにも目を向けたい。
CPU消費電力は、Chromeが平均11.44W、Firefoxが平均11.74Wとほぼ同水準。CPU使用率もChromeの8.13%に対しFirefoxが8.35%で、実質的な差はない。メモリ使用量はChromeが平均4.67GB、Firefoxが4.83GBで、Chromeがやや省メモリという結果になった。
| 項目 | Chrome 147 | Firefox 149 |
|---|---|---|
| 消費電力 | 11.44W | 11.74W |
| CPU使用率 | 8.13% | 8.35% |
| メモリ | 4.67GB | 4.83GB |
かつて「メモリ大食い」の代名詞だったChromeが、2026年にはFirefoxより省メモリで動いている。立場が逆転していることに、気づいている人はまだ少ないかもしれない。
ベンチマークのスコア差は大きいのに、リソース消費はほぼ互角。日常のブラウジングで感じる差は、数字が示すほど劇的ではないかもしれない。
ベンチマークの「勝者」は、ユーザーの「勝者」か
数字だけを見れば、Chromeの勝利は明確だ。特にJavaScript処理速度では圧倒的であり、計算負荷の高いWebアプリケーションを日常的に使うユーザーにとって、この差は無視できないかもしれない。
だが、このテストのコメント欄で多くのLinuxユーザーが指摘しているように、ブラウザ選びの判断材料は速度だけではない。Firefoxのアドオンエコシステム、プライバシー保護の設計思想、そしてChromium一強体制への懸念。性能テストが映し出さないこれらの要素が、多くのユーザーにとってはJetStreamのスコアよりも重い。
MozillaにはBugzillaにJetStream 3の性能改善を追跡するメタバグがすでに立っている。数字で負けている事実を、Mozilla自身が正面から受け止めている証拠だ。
ブラウザ戦争は、もはやベンチマークのスコアだけでは語れない。だが、スコアを無視していい時代でもない。Mozillaが次のFirefoxで、この差をどこまで詰めてくるか。それが、Linuxデスクトップにおけるブラウザの多様性を左右する。
参照元
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