ゲーム業界「83年の崩壊より酷い」DOOMの父が断言

1983年のビデオゲーム大崩壊を肌で知る二人が、今の業界の方がもっと酷いと断言した。その言葉の重みは、業界の誰にも否定できない。

ゲーム業界「83年の崩壊より酷い」DOOMの父が断言

1983年のビデオゲーム大崩壊を肌で知る二人が、今の業界の方がもっと酷いと断言した。その言葉の重みは、業界の誰にも否定できない。


「80年代のクラッシュよりも、確実にひどい」

ゲーム業界が静かに壊れ続けている。ヒット作を出しても、出さなくても、何をしても職を失う可能性がある——そんな時代が、もう3年以上続いている。

FPS(一人称シューティング)の生みの親であるジョン・ロメロと、1981年からゲーム開発に携わるブレンダ・ロメロ。『DOOM』と『Wizardry』という二つの伝説を背負う夫妻が、英ウェイクフィールドで開催されたGame Republicの「Dark and Doomy」イベントでGamesIndustry.bizの取材に応じた。

ブレンダの言葉は率直だった。「業界は本当にひどい場所にいる」。そして彼女はこう続けた。「80年代のクラッシュの時、私たちはそこにいた。そして今の方が確実にひどい」。

1983年のビデオゲーム大崩壊では、米国の家庭用ゲーム市場の収益が約32億ドルから約1億ドルへ、97%も暴落した。任天堂のNES(ファミコン)が登場するまで、ゲーム産業そのものが終わったと考えられていた。

97%の崩壊こそ起きていない。だが彼女が「今の方がひどい」と感じる理由は、被害の規模と構造にある。2023年から2024年だけで2万5,000人以上ゲーム開発者が職を失った。2025年も出血は止まらず、2026年に入ってからも状況は悪化の一途をたどっている。


110人から9人へ——ロメロ・ゲームズが見た地獄

この発言に説得力を与えているのは、彼ら自身の経験だ。2025年7月、Microsoftが9,000人規模の大量レイオフを実施した際、ロメロ・ゲームズへの資金提供も突然打ち切られた。

開発中だったUnreal Engine 5ベースの新作FPSは、すべてのマイルストーンを期日通りにクリアし、高い評価を得ていた。前日にはパブリッシャーとの会議すら行われていた。それなのに、翌日にはすべてが消えた。スタジオは約110人から9人にまで縮小された。

ブレンダはこう振り返る。「影響を受けていない人なんてほとんどいない。パートナーが影響を受けているか、次は自分かと怯えている」。10年以上共に働いた仲間を失い、20年以上のキャリアを持つ開発者たちが一夜にして路頭に迷った。

それでも彼女は冷静だった。「しばらくは大丈夫だと思う。もし2027年がまた『刺激的な』年になったとしても、二人とも良いキャリアだったと言える」。その言葉には諦めではなく、40年以上業界を生き抜いてきた者の覚悟がにじんでいた。


年間最高売上でも解雇される——壊れた成功の方程式

ジョン・ロメロが指摘したのは、さらに不条理な現実だ。Battlefield 6は2025年の米国年間ベストセラーとなり、発売3日で700万本を売り上げた。シリーズ史上最高の成績だ。

にもかかわらず、EAは開発に携わったDICE、Criterion、Ripple Effect、Motiveの全4スタジオでレイオフを実施した。「まったく理解できない」とジョンは首を振った。

EAはBattlefield 6の開発に4億ドル以上を投じたとされ、1億人のプレイヤーという目標を掲げていたとも報じられている。シリーズ史上最高の売上を記録しても、経営陣の期待値には届かなかったということになる。

そして今週、Epic Games1,000人以上を解雇した。Fortniteのエンゲージメント低下が原因だという。CEOのティム・スウィーニーは「業界が直面している市場環境は、創業以来もっとも厳しい」と述べ、5億ドル規模のコスト削減も併せて発表した。年間60億ドル以上の収益を上げる企業ですら、人員削減に追い込まれている。

成功しても切られる。失敗しても切られる。この業界には、もう安全な場所がない。


出口の見えない迷路で、それでもコードを書く

答えを誰も持っていない。ブレンダ自身がそう認めた。「本当にわからない時期のひとつだ」。生成AIへの期待と反発が業界の内側で同時に渦巻き、ハードウェア価格の高騰がユーザーを直撃し、コンソールの販売台数も前世代を下回っている。

GDC 2026の調査によれば、米国のゲーム開発者の3人に1人が過去2年以内にレイオフを経験した。AAA開発費は3億ドルを超えたとも推定されており、成功しても回収できるかわからない賭けが日常になっている。

それでもロメロ夫妻は、希望を完全には捨てていない。ブレンダはLocalThunkやエド・マクミランといったインディー開発者の名を挙げ、「まだゲームを作り続けている人たちがいる。こんな状態が永遠に続くはずがない」と語った。

ジョンの答えはもっとシンプルだった。「ゲームを作ることはやめない。作りたいものが多すぎる」。ブレンダは笑いながら付け加えた。「この人の理想の最期は、椅子に座ってコーディングしたまま見つかること」。

1983年、業界は97%の崩壊から蘇った。今回の危機にファミコンのような救世主が現れるかどうかは、まだ誰にもわからない。だが少なくとも、まだコードを書き続けている人たちがいる——それが最後の灯火なのか、次の時代の種火なのかは、もう少し先にならないと見えてこないだろう。


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