Noctua15基の球体ドームでCPU温度が約20度下がった
PCの側面パネルをまるごと球状のファンアレイに置き換えるという発想が、実際に動くものとして組み上がっている。しかも結果が笑えない。
PCの側面パネルをまるごと球状のファンアレイに置き換えるという発想が、実際に動くものとして組み上がっている。しかも結果が笑えない。
側面パネルを捨てて、代わりにファン15基を貼り付けた男
YouTubeチャンネル「Major Hardware」が公開した新作のタイトルは「Superdome」。 Lian LiのO11 Dynamic XLのガラス側面パネルを外し、そこにNoctuaのNF-A12x25 PWMを15基、球面状に配置した3Dプリント製のドームを被せる、というそれだけの企画だ。
発端は、以前に彼が作った「Fanhattan Project」への視聴者コメントだった。あの時は120mmファンのフレームの中に小さなファンを15個詰め込んだが、今回はその逆をやれ、という声が多かったらしい。つまり、120mmファンを15個、1枚のPCケース側面に並べてしまえ、と。
言うのは簡単だが、NF-A12x25は日本の実売で1基あたり約4,180円。15個そろえれば6万2,000円を超える。さすがに自腹では厳しい、と本人も動画の冒頭で率直に漏らしている。
Noctuaに連絡してスポンサーを打診したら、質問ひとつせずに15基のNF-A12x25を送ってくれた。おまけに茶色とベージュの3Dプリンタ用フィラメント、マウスパッドまで付いてきた。
Noctuaの即答ぶりは、むしろこの企画の異常さを物語っている。常識で考えれば、15個の高級ファンを1枚のパネルに貼り付ける企画に首を縦に振るメーカーはそう多くない。
ドームの構造と、印刷に何日かかったか
設計の要点は単純だ。ドームの頂点に1基、その周囲に5基、さらにベース側に9基。合計15基を、中心から外に向かって放射状に配置する。フレーム全体はNF-A12x25の外観を模したクリーム+ブラウンの2色刷りで、遠目には巨大な1基のNF-A12x25に見えるように整えられている。
問題は大きさだ。元になったO11 Dynamic XLの側面パネルはおよそ465×480mm。Bambu LabのH2DとH2Sの造形エリアにギリギリ収まる高さで、それでも1パーツあたり24〜25時間かかる分割印刷を、2台の3Dプリンタで並行稼働させてようやく完成した。
1パーツの出力に丸1日。フィラメントが足りなくなりかけて、途中で色違いのスプールをつないだ箇所がある。あの1枚だけは見ないでくれ。
ケーブル処理は本人も「ちょっとした惨状だ」と認めている。Y字分岐ケーブルを何本も束ねて最終的に1系統にまとめているが、ドームの裏側は配線で埋まっている。起動直後にファンの一部が回らなかったり、ケーブルがブレードに擦れて異音を立てる場面もそのまま映されていた。
Battlefield 6で計測した、20度という数字
肝心の冷却性能は、Battlefield 6を使ったA/Bテストで検証されている。
純正のガラス側面パネルを付けた状態でBF6を数ゲームプレイし、Ryzen Masterで記録した最高温度は約86度。その後、パネルをSuperdomeに差し替えて同じようにプレイし直すと、最高温度は約67度まで落ちた。差はおよそ20度。これは「ついでに冷えた」と呼べる幅ではない。
この構成が効いた理由は、Major Hardware自身のPC側の事情も大きい。彼のケースは上下2基のラジエーターが両方とも排気側に設定されている。普段は背面からの受動的な吸気しかない状態で、つまり吸気が弱いPCだったわけだ。そこに側面から15基分の新鮮な空気を押し込めば、効かないはずがない。
言い換えれば、この20度という数字は汎用の結果ではなく、彼のPC構成とSuperdomeの正圧吸気構造がたまたま噛み合った産物でもある。別の構成で同じ数字が出ると考えるのは楽観的すぎる。
消費電力は27.6ワット、騒音は「意外と静か」
気になる消費電力も動画内で測定されている。電源単体のアイドルが6.1ワット、そこにNF-A12x25を1基動かすと8.1ワット。そしてSuperdome全体を回すと27.6ワットまで上がる。15基を束ねた割に伸びが控えめなのは、NF-A12x25の電力効率の高さがそのまま表れた結果だろう。
騒音についても、本人の言葉は率直だ。
正直に言って、かなり静かだ。ほとんど1基のファンが回っているようにしか聞こえない。今デスクトップで動いている私のPCのほうが、この15基よりうるさいくらいだ。
ケーブル干渉の異音さえ処理してしまえば、15基あっても耳に刺さらない。Noctuaのファンを15基束ねても1基の延長線にしか聞こえない、というのは数字以上に印象的な結果だ。
一方で、無視できないトレードオフもある。側面パネルに防塵フィルターが入っていないため、部屋のホコリがそのままPC内部に吸い込まれる構造になっている。長期運用を考えるなら、このドームの前に防塵フィルターを一枚挟む工夫が欲しいところだ。
「ネタで作ったものが、本当に一番冷えた」という結末
動画の最後、Major Hardwareは少しだけ真顔になる。これはネタ企画として始めたけれど、このままメインPCに付けっぱなしにするかもしれない、と。
冷却性能と静音性のバランスという観点で言えば、AIO水冷の強化やファンカーブの見直しなど、もっと整然とした解決策はいくらでもある。それでも側面パネルを1枚ごと吸気装置に置き換えるというアイデアがこれほどきれいにハマってしまうのは、PCケースの空気設計がまだ最適化されきっていない領域を抱えていることの証拠でもある。
彼はすでに3DプリントファイルをThingiverseで公開すると表明している。O11 Dynamic XLを持っていて、余ったNoctuaが15基ある読者は、試してみる価値はあるかもしれない。そんな読者がどれだけいるかは別として。
自作PCの冷却は、結局のところ「空気をどこからどれだけ入れるか」という物理の問題に帰結する。ネタで始めた球体がその問いに正面から答えてしまったのは、冷却設計の定石がまだ完成形ではないことを、斜め下から突きつけている。
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