Snapdragon X2 Eliteのゲーム性能が大幅向上、だが「買う理由」にはまだ足りない
Snapdragon X2 Eliteを搭載したノートPCのレビューが出揃い始めた。ゲーム性能は前世代から大幅に向上したものの、レビュアーたちは「まだ限界がある」と指摘している。
フレームレートは倍増、しかし「1% Low」に落とし穴
Qualcommの第2世代Windows向けARMチップ「Snapdragon X2 Elite」のゲーミング性能が、複数のレビュアーによって明らかになった。結論から言えば、前世代のSnapdragon X1 Eliteとは別物と言えるほどの進化を遂げている。
Hardware Canucksのテストでは、Cyberpunk 2077(1200p/中設定/FSR 3 Performance)で平均40fpsを記録した。X1 Eliteの22fpsから81%の向上だ。Baldur's Gate 3(1200p/低設定)では54.3fpsを叩き出し、こちらも83%の伸びを見せた。
12本のゲームをテストした結果、起動すらしなかったのは3本だけだった。X1 Elite世代ではおよそ半分が動作しなかったことを考えれば、互換性は着実に改善している。
だが、平均フレームレートだけを見て喜ぶのは早い。問題は1% Low、つまりフレームレートが最も落ち込む瞬間の数値だ。Cyberpunk 2077でX2 Eliteは平均40fpsを出しながら、1% Lowは18.4fpsまで落ち込む。Intel Core Ultra X9 388Hの1% Low(34fps)の半分程度しかない。
Hardware Canucksはこの現象を「平均値と1% Lowの間に巨大な乖離があり、画面上の動きが非常に不安定になる」と表現している。数字の上では遊べそうに見えるが、実際の体験はガタつく。これがSnapdragon X2 Eliteのゲーミングにおける最大の課題だ。
ソフトウェアからゲームの最適化まで全てが噛み合ったとき、X2 Eliteシリーズは288VやHX370、Ultra X7シリーズの間に位置するフレームレートを叩き出す。しかし多くのゲームでは、平均値と1% Lowの乖離が激しく、非常に不安定な映像になる。
Intel Panther Lakeとの直接対決で見えた現実
ゲーム性能を他のチップと比較すると、X2 Eliteの立ち位置がより明確になる。
| タイトル | X2 Elite | X1 Elite | Panther Lake | Apple M5 |
|---|---|---|---|---|
| Cyberpunk 2077 | 40 | 22 | 46 | 57 |
| Baldur's Gate 3 | 54.3 | — | — | 69.8 |
| CS2 | 113.3 | — | 188.7 | — |
Counter-Strike 2(1200p/最高設定/4x MSAA)では、X2 Eliteが113.3fpsに対し、Intel Core Ultra X9 388Hは188.7fps。約70%の差がついた。Cyberpunk 2077ではX2 Eliteの40fpsに対してPanther Lakeは46fps、Apple M5は57fpsを記録している。
AMD Ryzen AI 9 HX 370との比較ではX2 Eliteが勝つ場面もあるが、IntelのPanther Lakeには及ばない。「もしPanther Lakeがなければ、X2 Eliteは印象的だった」とレビュアーたちは口を揃える。
The Phawxのレビューでは、FortniteやSpace Marines 2が正常に動作したことが報告されている。Epic Online Services Anti-Cheatが2025年11月にARM版Windowsに対応したことで、以前は起動すらできなかったタイトルが遊べるようになった。
一方で、Doom: The Dark Agesは起動に失敗し、Celesteはプレイ中にクラッシュ。RTSSなどのオーバーレイツールが原因で動作しなくなるケースも報告されている。互換性は改善したが、完璧ではない。
ドライバ更新の遅さが足を引っ張る
ゲーミング性能の課題は、ハードウェアだけでなくソフトウェアにもある。Qualcommのグラフィックスドライバ更新は、IntelやNVIDIAのように頻繁ではない。VideoCardzによれば、更新は「四半期ごと」のペースで、新作ゲームのリリースに合わせた最適化が行われにくい構造になっている。
ユーザーからは「ドライバが未完成に感じる」「不安定で性能が一貫しない」という声が上がっている。OEMによってはリファレンスドライバのインストール自体がブロックされていたり、手動インストールでカメラや電源管理に問題が生じるケースもあるという。
Apple Siliconと異なり、Windows on ARMにはCrossOverのような強力なサードパーティゲーミングサポートが存在しない。Qualcommもゲーミングを優先事項として扱っていないように見える。
VideoCardzのWhyCryは記事の中で、Qualcommがゲーミング系メディアにレビュー用機材を提供しなかった点にも言及している。ゲーマーへのアピールを本気で考えているのか、疑問が残る対応だ。
NotebookCheckは「軽量ゲームなら十分」と評価
NotebookCheckはやや楽観的な評価を示している。Fortniteをパフォーマンスモード/最大設定で60fps、HadesやHollow Knightは問題なく動作したという。負荷の軽いタイトルであれば、十分に遊べるレベルに達しているとの見解だ。
Assassin's Creed ShadowsやF1 24/25のように、グラフィックエラーが発生したり完全に動作しないタイトルも存在する。ただし、2年前のX1 Elite発売時と比較すれば、互換性は大幅に改善されているのは事実だ。
FSR(AMD FidelityFX Super Resolution)にも対応しているが、フレーム生成には非対応。アップスケーリングで多少の延命はできても、根本的な性能不足を補うには限界がある。
「ゲーム目的で買うマシンではない」という結論
複数のレビュアーが同じ結論に達している。Snapdragon X2 Eliteは、ゲームのためにノートPCを買う人向けの製品ではない。
Hardware Canucksは「多くの点で、Qualcommのゲーミングにとって最良の時期はまだ先にある」と締めくくっている。PC Gamerは「互換性の懸念がある限り、Panther Lakeよりも性能が大幅に上でないと選ぶ理由がない。そしてそれは極めてありそうにない」と断じた。
生産性タスクでは他のどのチップよりも速い場面があり、バッテリー持続時間も優秀だ。CPU性能とAI処理能力では確かにトップクラス。だがゲームに関しては、「遊べなくはないが、あえて選ぶ理由がない」というのが現時点での評価だ。
Qualcommが本気でゲーマーを取りにいくなら、ドライバ更新の頻度を上げ、互換性の問題を一つずつ潰していく地道な作業が必要になる。ハードウェアの進化だけでは、ソフトウェアエコシステムの遅れは埋められない。
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他参照
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