地政学

ハサビスとアモデイ、規制を求めるAI企業の急転換

AI

ハサビスとアモデイ、規制を求めるAI企業の急転換

フロンティアAIを開発する企業のトップが、34日の間隔を置いて相次ぎ「自分たちを規制する制度」の設計図を発表した。 FINRA型かFAA型か Google DeepMindのデミス・ハサビス(Demis Hassabis)CEOが7月14日、個人のSubstackにエッセイ「A Framework for Frontier AI and the Dawning of a New Age」(フロンティアAIの枠組みと新時代の幕開け)を公開した。 AGIは「おそらくあと数年」で到達するとの認識を示したうえで、米国主導のAI監視機関「Frontier AI Standards Body」(フロンティアAI基準機構)の設立を提案している。 モデルにした組織はFINRA(金融業規制機構)。証券業界を自主規制するこの民間団体は、SEC(米証券取引委員会)の監督下で運営され、業界からの拠出金で成り立つ。ハサビス氏はこの仕組みをAIに持ち込もうとしている。 フロンティアモデルの開発企業がリリースの最大30日前にモデルを提出し、独立した専門家がサイバーセキュリティ、生物兵器、欺瞞行為に関する

アリババ、「軍事企業」認定の撤回を求め米連邦裁判所に提訴

テクノロジー

アリババ、「軍事企業」認定の撤回を求め米連邦裁判所に提訴

6月8日に米国防総省の1260Hリストに掲載されたアリババが、わずか15日で法廷に立った。カリフォルニア州サンノゼの連邦地方裁判所に提訴し、掲載の撤回を求めている。 提訴の経緯 現地時間6月23日、アリババ・グループ・ホールディング(Alibaba Group Holding Limited)がカリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に訴状を提出した。1260Hリストからの削除を求め、国防総省を相手取っている。 訴状でアリババは2つの憲法上の権利侵害を主張している。合衆国憲法修正第5条に基づく適正手続き(デュープロセス)の違反と、修正第1条に基づく言論の自由の侵害だ。国防総省は十分な証拠も説明もなしにリスト掲載を決定した、とアリババは訴えている。 アリババは訴状で言い切っている。「この認定は事実にも法にも根拠がない。アリババの取締役は独立した人物で構成されており、軍との関係を持つ者はいない。当社の製品とサービスは小売、物流、企業向けITのために作られたものであり、兵器でも国防でも情報機関でもない」。 もう一つ、訴状には注目すべき主張がある。アリババは2月の段階から国防総省と数

中国にASMLのEUV装置があるとの疑惑を検証 確認できる証拠と反証

半導体

中国にASMLのEUV装置があるとの疑惑を検証 確認できる証拠と反証

米商務長官ハワード・ラトニック(Howard Lutnick)氏がASML幹部に、同社のEUVリソグラフィ装置が中国に渡った可能性があると伝えた。ASMLは全面否定し、米側は証拠を開示していない。地球上で唯一のEUV装置メーカーに突きつけられたこの「疑惑」の裏で、商務省自身がASMLの独占に風穴を開ける投資を進めている。 証拠を見せない告発 ラトニック商務長官が一連の会合でASML幹部に懸念を伝えたと、6月19日に報じられた。ASMLのEUVリソグラフィ装置が中国に存在する可能性があるという。EUVは第一次トランプ政権以来、対中輸出が禁じられてきた技術だ。もし事実なら、ここ数年かけて構築された半導体輸出規制体制で最大級の違反になる。 ただ、この「懸念」は奇妙な姿をしている。米政府高官は、ASMLがEUV関連の部品や輸送機材を中国に出荷した証拠があると主張しているが、その証拠をASMLにも報道機関にも見せていない。商務省は、実際にEUV装置が中国の土地の上にあるのかという問いにも答えなかった。 ASMLの反論は具体的だ。同社はワシントンで「ASMLのEUV装置が中国に存在する兆

Mythos輸出規制の引き金はSKテレコムだった

AI

Mythos輸出規制の引き金はSKテレコムだった

Fable 5とMythos 5の全面停止から6日。その裏で何が起きていたのか、見えてきた。 「中国との関係が疑われる韓国の通信企業」 現地時間6月15日、ワシントン・ポスト紙がホワイトハウス当局者の証言をもとに経緯を報じた。 AnthropicはMythosの優先アクセス対象として111の組織を米政権に提出し、承認を受けた。だがその後、リストは約50組織ぶん膨らんでいた。追加リストの提出が遅れるなか、政権側が独自に精査を始めたところ、1つの名前に目が止まった。「中国との関係が疑われる韓国の通信企業」だ。 この発見がAnthropicへの信頼を大きく損ねたという。Anthropicは即座にこの企業のMythosアクセスを取り消したが、米政権の懸念はむしろ深まった。ある当局者の言葉が端的だ。「広げすぎた」。 ワシントン・ポスト紙は企業名を伏せた。6月17日、WIREDがSKテレコムと報じた。韓国の通信大手3社のうち、Project Glasswingを通じてMythosアクセスを公式に得ていたのはSKテレコムだけだ。KTは「該当しない」、LGユープラスは「Mythosへのアク

インド発「AI主権」論。欧州との決定的な違い

AI

インド発「AI主権」論。欧州との決定的な違い

Fable 5の全面停止から48時間。欧州では政治家たちが「主権」を叫んだ。同じ時間軸で、インドではまったく別の声が上がっていた。政治家ではなく、企業の創業者たちだ。しかも金額つきで。 提携発表の翌日に遮断された国 まず時系列だ。 6月11日、TCS(タタ・コンサルタンシー・サービシズ)がAnthropicとの大型提携を発表した。Claude専任の事業部門を新設し、5万人の社員にClaudeへのアクセスを付与する。金融、医療、公共サービスなど規制の厳しい業界向けにAIソリューションを共同展開する、という内容だった。Anthropicのダリオ・アモデイ(Dario Amodei)CEOは声明で「インドは米国に次ぐ第2の市場」と明言している。 その翌日の夜、Fable 5とMythos 5が停止された。 TCSの5万人がClaudeを学び始めた矢先に、最上位モデルが消えた。2月にはInfosysとも提携を結んでいる。インドのITサービス大手2社がAnthropicのエコシステムに深く組み込まれた直後の出来事だった。 欧州にとってFable 5停止は「自分たちが使っていたサービ

Computex 2026、中国大陸の出展者が締め出し

テクノロジー

Computex 2026、中国大陸の出展者が締め出し

世界最大級のテクノロジー見本市が6月2日、台北で開幕した。33カ国・地域から1,500社超が集う会場に、219社の中国大陸企業がカタログ上は名を連ねている。だが、その多くのブースにスタッフの姿がないと報じられている。 正式な「拒否」は一つもない 出展企業に登録された中国大陸の2社の担当者が匿名で証言した内容はこうだ。チーム全員の入境許可が下りなかった。申請は却下されたのではなく、保留のまま放置されるか、直前になって調達困難な追加書類を求められた。多国籍企業に勤める大陸籍の3人目の証言者も、他地域の同僚は渡航書類を取得済みなのに自分の申請だけが止まっていると語った。 両岸渡航を専門とする旅行代理店2社も、今年は公式出展者を含むすべてのクライアントについて許可が下りていないと述べている。 台湾の移民署は取材に対し「所定の手続きに従い、関係機関と協議の上で審査している」と回答するにとどまった。 この「拒否なき排除」は初めてではない。4月のTaipei AMPA(台北国際自動車部品見本市)でも同様の許可凍結が発生し、多くの大陸出展者がスタッフを送れなかったと報じられている。