60億ドルAIデータセンター承認、住民が市議会の半数を落選させた
人口1万4000人の町が、議会の半数を投票で追い出した。理由は60億ドル規模のAIデータセンター建設計画を、住民の声を聞かずに承認したことだ。反発はもはや選挙に収まりきらない。
人口1万4000人の町が、議会の半数を投票で追い出した。理由は60億ドル規模のAIデータセンター建設計画を、住民の声を聞かずに承認したことだ。反発はもはや選挙に収まりきらない。
議会の半数が消えた選挙
ミズーリ州セントルイスから南に約56キロ、人口およそ1万4000人のフェスタス市で異例の結果が出ている。4月7日の市議会選挙で、再選を目指した現職4人が全員落選した。8人の議会の、ちょうど半分だ。
引き金は1週間前、3月30日の臨時議会である。賛成6、反対2で市議会が承認したのは、Claycoのデータセンター部門CRGが主導する60億ドル(約9,582億円)規模のハイパースケール施設建設計画だった。建設予定地はハイウェイ67号線の北側に広がる360エーカー(約146ヘクタール)。
承認からわずか8日後、住民は現職を一掃した。落選した4人のうち3人は、この計画に賛成票を投じた議員だ。勝者は全員、「透明性の回復」と「データセンター反対」を公約に掲げた新人たちだった。
「このデータセンターをめぐる戦いは、このコミュニティの核心を揺さぶった。正直に言って、住民主導の運動に火を点けたんだ」
ワード3で現職ボビー・ベンズを破ったダン・ムーアは、セントルイス公共ラジオの取材にそう答えている。選挙日の各投票所では、市長サム・リチャーズを含む残る議員4人のリコール請願の署名集めも並行して行われた。支援者の一人によれば、投票者の約9割が署名したという。
「裏で決めた」という怒り
市側の言い分は明快だった。市行政官グレッグ・キャンプは昨年末、この計画を「市にも郡にも、関係する課税地区にも、かつてない規模の収入源」だと語っていた。市の法務担当ブライアン・マロンによれば、市への収益は生涯で13億ドル(約2,078億円)に達する見込みで、その大半は施設の膨大な電力需要に紐づく公共料金税から来る。財源難の小都市にとって、断る理由のない数字に見える。
ところが住民の怒りは、金額の大小ではなく「どう決まったか」に向かっていた。
秘密会議とSunshine Law
反対派住民は「Wake Up JeffCo」という団体を立ち上げ、4月10日、4人の地権者とともに市と開発業者CRGを相手取って提訴した。54ページ、12訴因の訴状によれば、市は2025年8月から2026年3月にかけて、開発業者との協議のほとんどを非公開で進め、ミズーリ州のサンシャイン法(公的機関の透明性を担保する州法)の要件を回避しようとした。訴状は、2025年11月24日の再区画承認と、3月30日の開発契約承認の両方について、住民が内容を精査する時間も、正式な公告も不十分だったと主張している。
裁判は、市職員が反対派住民を内輪でどう呼んでいたかも暴き出した。原告側弁護士ステファン・ジェフリーが公開した内部メッセージには、反対派を「無学な人々の見世物騒ぎ」と切り捨て、別の市職員に「群れを一か所にまとめておけ」と指示する文言があったという。
一人の住民ローレン・アルバーズは、3月末の荒れた市議会でこう訴えていた。
「成長に反対しているわけじゃない。私が反対しているのは、家と家の間にデータセンターを押し込むこと。住民が本当の情報と答えと発言の機会を得る前に開発を急ぐことだ」
この言葉は、承認後の選挙結果を予言していたようにも読める。
同じ日、ウィスコンシンでも
フェスタスの乱は、単発の事件ではない。同じ4月7日、ウィスコンシン州ポートワシントンでも住民投票が行われていた。対象はOracleとOpenAIが手掛ける150億ドル(約2兆3,955億円)規模のデータセンターキャンパスで、将来のプロジェクトを制限する住民発議は、ほぼ2対1の差で可決された。全米初の「データセンター反対」住民投票である。
ミズーリ州内でも動きは広がっている。フェスタスから車で1時間足らずのセントチャールズでは、データセンターを永久に禁止する条例の議論が進行中だ。同じクレイコの別プロジェクトは、1年間のモラトリアム(建設凍結)を食らって頓挫した経緯がある。隣町のフォリステルでは、データセンター用地にされる懸念から、市街化編入の提案が農地指定のまま修正された。
反対運動は党派の線を引き直している。電気料金の高騰、土地収用による立ち退き、冷却用水の大量消費——これらの論点は保守層にもリベラル層にも等しく刺さる。報道によれば全米で計画中のデータセンターの約半数が、遅延または中止に追い込まれている。最大のボトルネックは高圧変圧器で、納期が従来の約2年から最長5年にまで延びているという。
選挙を超えた暴力
ただし、抗議の形は投票所の中に留まっていない。
4月10日未明、サンフランシスコのラッシャンヒル地区で、OpenAI CEOサム・アルトマンの自宅門扉に火炎瓶が投げ込まれた。20歳の男が逮捕されている。さらに48時間後の日曜未明には、同じ住所で別の2人組が拳銃を1発発射し、逮捕された。自宅で見つかった銃は3丁だった。
事件を受けて、アルトマンは自身のブログで業界内のレトリックを抑えるよう呼びかけた。
「議論を続けるにしても、言葉のぶつけ合いや戦術の激しさは少し下げよう。家で起きる爆発は、比喩の意味でも文字通りの意味でも、減ったほうがいい」
比喩として書かれたはずの言葉が、文字通りに起きてしまった世界で、彼はそれを言わなければならなかった。
フェスタスの民主的な反乱と、アルトマン邸の連続襲撃を同じ棚に並べるのは雑だ。前者は制度の内側の怒り、後者は制度の外側に噴き出した暴力で、評価の仕方がまったく違う。
だが、どちらも同じ圧力の下から出てきている。AIインフラの急拡大に、地域社会の合意形成も個人の心の耐久度も追いついていない。インディアナ州インディアナポリスでは、データセンター計画を支持した議員の自宅が13発の銃弾を受ける事件も起きている。
フェスタスの新議員は月末に就任する予定だ。就任初日の議題は既に組まれており、計画を「今の状態で止める方法」を探ることから始めるという。訴訟は独立して進む。
60億ドルの契約書より、住民の「どう決まったか」への怒りのほうが強かった。それが今回の選挙の結論だ。AIインフラを地域に受け入れてもらう手順を、企業も自治体も設計しないまま走ってきた。そのツケが、今まとめて返済を求められている。
契約書の金額は、人の生活のそばに建つ建物を正当化する理由にはならない。フェスタスの有権者はそれを1週間で示した。
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