RTX 5060 Ti/5060に9GB版の噂、帯域幅は25%削減へ

RTX 5060 Ti/5060に9GB版の噂、帯域幅は25%削減へ
NVIDIA

NVIDIAGeForce RTX 5060 TiとRTX 5060に「9GB GDDR7」の新バリアントを準備していると報じられている。容量は1GB増える。代わりに、メモリ帯域幅は25%削られる。


中途半端な「9GB」という数字の正体

発端は中国のBoard Channelsというフォーラムに投稿された内部情報だ。VideoCardzとWccftechがそれぞれ日本時間の4月14日に報じた。発売時期は5月下旬から6月上旬と見られている。

9GBという端数の容量には、ちゃんと理由がある。GDDR7の3GBチップを3枚搭載する構成だ。これまで主流だった2GBチップを4枚積む「4チップ128-bit」から、3GBチップ3枚の「3チップ96-bit」へと設計が変わる。掛け算の結果、容量は8GBから9GBへとわずかに増える。

3GB×3=9GB。この単純な掛け算が、RTX 50シリーズのメモリ構成を静かに書き換えようとしている。
RTX 5060 Ti / RTX 5060 : 現行版と噂の9GB版
RTX 5060 Ti RTX 5060
現行 8GB 噂の 9GB 現行 8GB 噂の 9GB
メモリ容量 8GB 9GB 8GB 9GB
メモリ規格 GDDR7 GDDR7 GDDR7 GDDR7
チップ構成 2GB×4枚 3GB×3枚 2GB×4枚 3GB×3枚
バス幅 128bit 96bit 128bit 96bit
メモリ速度 28Gbps 28Gbps 28Gbps 28Gbps
メモリ帯域幅 448GB/s 336GB/s 448GB/s 336GB/s
発売時期 発売中 5月下旬~6月上旬 発売中 5月下旬~6月上旬
※ 9GB版は中国Board Channelsフォーラム発のリーク情報。赤字は現行比で後退する項目。帯域幅はメモリ速度×バス幅÷8で算出。

問題はバス幅の方だ。128-bitから96-bitへと25%縮む。これが何を意味するかというと、容量は増えても、GPUメモリと会話できる「道幅」が狭くなる。

帯域幅336GB/sという後退

現行のRTX 5060 Ti 8GBは、28Gbps GDDR7を128-bitバスで動かし、448GB/sの帯域幅を確保している。噂の9GB版は、同じ28Gbpsのまま96-bitに縮むため、帯域幅は 336GB/s にとどまる。単純計算で25%の差だ。

仮にメモリ速度を32Gbpsまで引き上げたとしても、384GB/sにしかならない。現行の448GB/sには及ばない。

メモリ帯域幅の比較 (RTX 5060 Ti)
現行 8GB 版128bit × 28Gbps
448 GB/s
噂の 9GB 版 (32Gbpsを仮定)96bit × 32Gbps
384 GB/s
噂の 9GB 版 (28Gbps据え置き)96bit × 28Gbps
336 GB/s (−25%)
※ バー長は現行版の448GB/sを100%とした相対値。9GB版のメモリ速度は噂段階で未確定のため、28Gbps据え置きと32Gbps引き上げの2パターンを併記。

つまりこれは、スペック表の「メモリ容量」欄だけを見れば進化だが、実際にゲームを動かす文脈では性能低下のリスクを伴う構成だ。ミドルレンジGPUはただでさえメモリ帯域がボトルネックになりやすい。そこに25%の削減は、決して軽い話ではない。

容量が足りないゲームでは9GBが効く。帯域が足りないゲームでは9GBが足を引っ張る。同じ製品名で、勝てる場面と負ける場面が入れ替わる。

なぜNVIDIAは苦しい選択をしているのか

ここで話は2025年末から続いているメモリ危機につながる。AIHBMへの需要集中とDDR5価格の急騰で、メモリメーカーはGDDR7の生産を後回しにしている。GDDR7の値段は上がり、入手性も悪化した。

NVIDIAは2025年12月ごろからRTX 5060 Ti 16GBの生産を絞り、8GBモデルに供給を寄せているとTweakTownなどが伝えていた。16GB版は単純にチップ使用量が2倍であり、逼迫した在庫の中では「贅沢品」になっていたからだ。

そこへ登場したのが、このGDDR7の3GBチップだ。SamsungMicronが生産能力を立ち上げており、NVIDIAはこれを活用する計画を「公式に組み込んでいる」と中国側の報告は述べている。

ただし、3GBチップを使う方法は本来もっと魅力的な設計を可能にする。128-bitバスを維持したまま3GBチップを4枚積めば、12GBのミドルレンジGPUが成立する。帯域幅も容量も、どちらも現行より強化できる。

それをやらずに、わざわざ96-bitへ道幅を狭める選択をした。理由は単純で、チップ数を4枚から3枚に減らせば基板コストとチップ単価の両方で節約できるからだ。メモリ危機の中で利益を守るための、徹底した原価優先の判断だ。


GB205流用の話とセットで見えてくるもの

同じ時期に、別の噂も流れている。リーカーのMEGAsizeGPU氏によれば、RTX 5060の新バリアントはRTX 5070で使われている GB205ダイ を流用する計画があるという。6144基のCUDAコアを持つGB205を3840基まで削って、RTX 5060として出荷する構想だ。

背景は同じだ。AIBパートナーがRTX 5060 Ti 8GBの生産に集中した結果、RTX 5060向けのGB206ダイが不足している。そこで、RTX 5070用のGB205ダイの欠陥品を下位製品に転用する。歩留まりで発生する不良品の有効活用として、業界では珍しくない手法ではある。

こうして並べてみると、今のNVIDIAミドルレンジの絵がはっきりする。帯域より容量、性能より供給。市場に製品を流し続けることが最優先で、技術的な完成度は二の次だ。

消費者にとっての意味

では、9GB版は買うべきなのか。答えは「買おうとしているゲーム次第」という、歯切れの悪いものになる。

VRAM不足フレームレートが崩壊するタイトル、たとえば高解像度テクスチャを多用する最新AAAゲームでは、9GBの方が8GBより安定するだろう。DLSSフレーム生成VRAMを食うため、余裕が効く場面はある。

一方、メモリ帯域がボトルネックになる用途では、336GB/sという数字が足を引っ張る。同じ「RTX 5060 Ti」という名前で、シーンによって勝ち負けが入れ替わる製品が店頭に並ぶことになる。購入前のベンチマーク確認が、これまで以上に重要になりそうだ。

RTX 5060 Ti 16GBの供給が絞られつつある中で8GBと9GBが主戦場になれば、賢い買い物はますます難しくなる。同じ「RTX 5060 Ti」の看板の下に、バス幅もVRAM容量も帯域幅も異なる3種類が並ぶからだ。

RTX 5060 Ti 3バリアントの想定スペック
8GB 版 9GB 版 (噂) 16GB 版
容量 8GB 9GB 16GB
バス幅 128bit 96bit 128bit
帯域幅 448GB/s 336GB/s 448GB/s
チップ構成 2GB×4 3GB×3 2GB×8
供給状況 主力 準備中 生産縮小
強い場面 帯域重視 VRAM容量重視 両立
※ 16GB版の生産縮小は2025年12月ごろから。9GB版のスペックは中国Board Channels発のリーク情報に基づく。
スペック表の「9GB」だけを見て飛びつくと、思ったより遅い製品を掴む可能性がある。記憶しておくべき数字は、容量ではなく帯域幅の方だ。

Computexが答え合わせの場になる

NVIDIAはまだ公式には何も発表していない。この話は現時点で噂の域を出ない。ただし発売時期として囁かれている5月下旬から6月上旬は、ちょうどComputex 2026の開催時期と重なる。台北で、答え合わせが行われる可能性が高い。

1GBのために25%の帯域幅を手放す。このトレードオフを、NVIDIAが本当に市場に問うのか。メモリ危機の長期化は、ミドルレンジGPUの姿を静かに、しかし根本から変えつつある。


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