岬 徹

テクノロジー分野を中心に2024年からYouTubeで約3,000本の動画を制作。登録者4万5千人超、Xフォロワー1万人超、noteフォロワー千人超。AI、半導体、PC、ゲーム業界について、一次資料やデータを基に分析を続ける。

岬 徹
Mastodon 4.6、アカウント不要のメール購読機能を追加

SNS

Mastodon 4.6、アカウント不要のメール購読機能を追加

分散型SNSのMastodonが、バージョン4.6でメールニュースレター機能を導入した。Mastodonのアカウントを持っていなくても、メールアドレスを入力するだけで特定のユーザーの投稿を受信できる。アプリのインストールもfediverseの知識も要らない。 「壁」を自分から壊しにいく Mastodonの最大の弱点は、使い始めるまでのハードルにある。サーバーを選び、アカウントを作り、フォローする相手を自力で探す。この手間が、興味はあるが登録には至らない層を長年はじき続けてきた。月間アクティブユーザーは約73万5000。登録アカウント1050万に対して、実際に動いているのはわずか7%だ。 今回のニュースレター機能は、その壁を迂回する。気になる発信者のプロフィールページにアクセスし、メールアドレスを入力するだけで購読が始まる。Mastodonのアカウントもfediverseの知識も要らない。 メールという、40年以上の歴史を持つインフラに乗せたことで、どのプラットフォームのユーザーにも届く。アルゴリズムによる選別もない。既存のニュースレターサービスと異なり、Mastodonは広告

Apple自身が捨てて17年。AppleTalkがLinuxからも消える

Linux

Apple自身が捨てて17年。AppleTalkがLinuxからも消える

Appleが2009年に見切りをつけたプロトコルが、2026年のLinuxカーネルでようやく退場する。直接の引き金は、コードの老朽化ではなくAI生成パッチの氾濫だった。 3694行の静かな退場 AppleTalkの実装がLinuxカーネルから消える。ネットワーク共同メンテナーのヤクブ・キチンスキ(Jakub Kicinski)氏が、現地時間6月15日付でコミットを投入した。Linux 7.2に向けたnet-nextツリーへの変更で、37ファイル、3694行の削除を含む。 AppleTalkは1985年にAppleが導入した独自のネットワークプロトコルスイートだ。ケーブル1本でMacintosh同士がつながる、プラグ・アンド・プレイのLANを実現した。だがTCP/IPに主役の座を奪われ、Apple自身がMac OS X 10.6 Snow Leopard(2009年8月リリース)でサポートを打ち切っている。 生みの親が17年前に葬ったプロトコルを、Linuxはなぜ今まで抱えていたのか。 AIパッチという名の引き金 キチンスキ氏はコミットメッセージにこう書いた。 「最近、

Anthropic従業員「狙い撃ちされている」。Fable停止から6日、社内の混乱

AI

Anthropic従業員「狙い撃ちされている」。Fable停止から6日、社内の混乱

AIの安全性を掲げてきた企業が、安全性を名目に製品を止められた。Fable 5とMythos 5の停止命令から6日。Anthropicの約3000人は、いまだ納得のいく説明を受けていない。 変わり続けた「理由」 現地時間6月12日金曜、ホワイトハウスからAnthropicに電話が入った。最新モデルのFable 5とMythos 5を市場から引き揚げろ、という指示だった。猶予は90分もなかった。 社内のグループチャットは即座に騒然となったと報じられている。マネージャーたちは顧客向けの案内を準備するよう指示されたが、肝心の「理由」が二転三転した。最初は外国企業によるアクセスが問題だと告げられ、次にはモデルに重大な脆弱性が見つかったと説明が変わった。 社内チャットでは混乱がにじんでいたという。「クライアントに何と伝えればいい?」「何を信じればいいのか、誰か知ってる?」「そもそも何が問題なのか分からない」。 6日が経った。Anthropic幹部はワシントンへ飛び、月曜・火曜と政府側と面会を重ねたが、制限解除には至っていない。Anthropicは月曜の声明で「政府との協力を継続する」

Epic GamesがGitの死角を突く。バージョン管理「Lore」公開

ゲーム開発

Epic GamesがGitの死角を突く。バージョン管理「Lore」公開

フォートナイトの開発現場から生まれたバージョン管理システムが、ゲーム業界のインフラを書き換えようとしている。Epic Gamesが現地時間6月17日、State of Unreal 2026でオープンソースのバージョン管理システム「Lore」を正式公開した。 ゲーム開発が30年抱えてきた問題 バージョン管理の世界には、長い間ひとつの断層がある。 Gitはソースコードの管理では無敵だ。分散型で、ブランチは軽く、マージは賢い。ソフトウェア開発の標準として定着してから、もう20年近くが経つ。だがゲーム開発の現場には、Gitが苦手とする領域がある。テクスチャ、3Dモデル、音声ファイル。数GBに達するバイナリアセットを日常的に扱うゲームスタジオにとって、Gitの設計思想は根本的に合わない。 Git LFSという拡張はある。だがLFSは後付けだ。大容量ファイルをGitの管理対象から切り離し、別のサーバーに逃がす仕組みであって、バイナリを正面から扱う設計ではない。必要なファイルだけを取得するスパースチェックアウトもオフラインでは使いづらく、複数チームを安全に分離する仕組みもない。 そこで

Snap、約35万円のARグラス発表。株価は急落

AR

Snap、約35万円のARグラス発表。株価は急落

10年以上の開発期間を経て、SnapがARグラス「Specs」をようやく一般消費者向けに発売する。2,195ドル(約35万2,000円)。この価格を見て、市場は拍手ではなく売りで応えた。 10年かけた「本命」が世に出た Snap共同創業者兼CEOのエヴァン・シュピーゲル(Evan Spiegel)氏は現地時間6月16日、ロングビーチで開催されたAugmented World Expo(AWE)2026の壇上で、ARグラス「Specs」を披露した。自らSpecsをかけてCNBCのインタビューに応じ、「iPhoneの登場から約20年、人々はコンピューティングについて違う考え方をする準備ができている」と語った。 ここに至る助走は10年を超える。Snapが最初にカメラ付きサングラス「Spectacles」を発売したのは2016年。130ドルのその製品は、ポップアップ自販機の前にできた長蛇の列こそ話題になったが、需要の読み違いで数十万台の在庫を抱え、約4,000万ドルの評価損を計上する結果に終わった。その後、2019年に第3世代を消費者向けに出したのを最後に、後継モデルは開発者限定だった

DeepSeekのブラックリスト入り、承認済みなのに棚上げ

AI

DeepSeekのブラックリスト入り、承認済みなのに棚上げ

2025年、米国の省庁間委員会はDeepSeekをエンティティリストに追加すると決めた。中国軍・情報機関への支援、東南アジアのペーパーカンパニーを通じた先端チップの不正調達。根拠は揃っていた。だが2026年6月現在、その決定は実行されていない。商務省はリストの更新を2025年10月から一度も公表していない。10年以上で最長の空白期間だ。 安全保障の判断は終わっている 事実関係が明らかになったのは今回が初めてだ。 昨年、商務・国防・エネルギー・国務・財務の各省からなる省庁間委員会が、DeepSeekとメモリ大手CXMT(長鑫存儲技術)を含む100社超の中国企業について、エンティティリスト追加を承認した。だが商務省は公表していない。先端半導体製造、半導体製造装置、AIモデリングの分野だけで少なくとも75社が含まれる。 国務省の高官はロイターに対し、DeepSeekが中国の軍事・情報機関の活動を支援していると証言した。人民解放軍と関連防衛機関の調達記録に150回以上登場するという。さらに東南アジアのペーパーカンパニーを使い、規制対象の米国製先端チップを不正に調達しようとしていた。今

Appleが値上げを宣言。退任直前のクックCEOが語った「限界」

Apple

Appleが値上げを宣言。退任直前のクックCEOが語った「限界」

ティム・クック(Tim Cook)氏が、Apple製品の値上げを公式に認めた。退任まで残り2ヶ月半。iPhoneの価格帯を守り続けてきたCEOが、最後に残した言葉は「もう持たない」だった。 「避けられない」の重さ Appleのクック氏は現地時間6月17日、The Wall Street Journalの独占インタビューで製品の値上げを明言した。 「残念ながら、値上げは避けられない。我々に転嫁される巨額のコスト増を抑えようと最善を尽くし、お客様を守ろうとしてきたが、状況は持続不可能になった」 どの製品がいつ、いくら上がるのかは明かさなかった。だが市場はその先を読む。Appleの次の大型発売は9月のiPhone 18シリーズ。調査会社TechInsightsは、現在の利益率を維持するならiPhone 18 Proは約270ドル(約4万3000円)の値上げが必要になると試算している。1,299ドルのiPhone Proが現実になれば、10年以上据え置いてきたProの開始価格が動く。 Apple製品の値上げ実績と試算 製品旧価格新価格差額Mac mini9万4800円1

G7で浮上した「AIのキルスイッチ」問題

AI

G7で浮上した「AIのキルスイッチ」問題

Fable 5とMythos 5の輸出規制から1週間。G7エビアン・サミット最終日のワーキングランチで、マクロン仏大統領とモディ印首相が、米国によるAIアクセス遮断のリスクを正面から問題にした。 「スイッチを切れる」という現実 6月17日、フランス・エビアン=レ=バンで行われたG7のワーキングランチ。AIをテーマにしたこの場には、Anthropicのダリオ・アモデイCEO、OpenAIのサム・アルトマンCEO、Google DeepMindのデミス・ハサビス(Demis Hassabis)CEO、Mistral AIのアーサー・マンシュ(Arthur Mensch)CEO、そしてトランプ大統領が同席していた。 エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領はこの席で警告を発した。米国がAIへのアクセスを一夜にして遮断できる状態は、欧州の顧客経済だけでなく米国のAI企業そのものを傷つける。いつ止められるか分からないAIを買う国はない、とも踏み込んだ。 ナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相もAnthropicのモデル規制への懸念を示したと報じられて

FortiGate 7万5000台の認証情報が流出。日本も被害圏内

セキュリティ

FortiGate 7万5000台の認証情報が流出。日本も被害圏内

日本のファイアウォール市場で国内シェア首位を走るFortiGate。そのVPN認証情報が194か国・7万5000台分、一括で流出した。ゼロデイではない。パスワードの使い回しだ。 「FortiBleed」の全容 セキュリティ研究者のヴォロディミル・"ボブ"・ディアチェンコ(Volodymyr "Bob" Diachenko)氏が、FortinetのFortiGateファイアウォールに紐づく大量の認証情報が露出したサーバーを発見した。「FortiBleed」と呼ばれるこのデータセットには、7万3932件のファイアウォールURLとユーザー名、メールアドレス、平文のパスワードが含まれる。影響は194か国、2万1632のユニークドメインに及ぶ。 脅威インテリジェンス企業Hudson Rockがデータセットを分析し、結果を公表した。セキュリティ研究者のケヴィン・ボーモント(Kevin Beaumont)氏も独立にデータの真正性を確認している。ボーモント氏によれば、データに含まれる約7万5000台のFortinetデバイスはほぼすべてがまだオンラインで稼働しており、最近の侵害だという。 S

AI企業への政府出資、閣僚2人の構想が割れる

AI

AI企業への政府出資、閣僚2人の構想が割れる

トランプ政権が検討するAI企業への政府出資案をめぐり、閣僚の間で資金の使い道が割れていることが明らかになった。Anthropicへの輸出規制が交渉の空気を壊し、業界の大半は拒否姿勢を崩していない。 「トランプ口座」か「政府系ファンド」か スコット・ベッセント(Scott Bessent)財務長官とハワード・ラトニック(Howard Lutnick)商務長官が、政府がAI企業から取得する株式の使い道について異なる構想を持っていると報じられた。 ベッセント氏が支持するのは、AI企業の株式をトランプ口座の原資に充てる案だ。トランプ口座とは、2025年7月成立のOne Big Beautiful Bill Actで創設された18歳未満向けの税制優遇貯蓄口座だ。連邦政府が1人あたり最大1,000ドルの初期資金を拠出し、すでに400万人以上の子どもが登録している。AI企業の株式運用益をここに流し込めば「AIの恩恵を次世代に届ける」という政治的な絵が描ける。 一方のラトニック氏は、政府系ファンドへの充当を推している。重要鉱物のサプライチェーン確保を目的に複数の企業への出資を交渉してきた同氏

NVIDIA ACE Game Agent SDKが公開。NPCは自分で考え始める

AI

NVIDIA ACE Game Agent SDKが公開。NPCは自分で考え始める

NVIDIAがUnreal Fest 2026で、ゲーム内AIキャラクターを構築するためのオープンソースフレームワーク「ACE Game Agent SDK」のベータ版を公開した。同時に、Unreal Engine 5向けの新しいACEプラグイン群もリリース。台本を読み上げるだけだったNPCに、状況を読み、判断し、声で応える力を与える。その開発基盤が、具体的な形で開発者に届いた。 クラウドに頼らない、ローカル完結のAI NPC ACE Game Agent SDKは、C/C++で書かれた軽量なエージェント型フレームワークだ。オープンソースで公開され、小規模モデルに最適化されている。動作基盤はNVIDIA RTX。クラウドに推論を投げず、プレイヤーのGPU上ですべて完結する。 開発者がSDKを通じて触れるAPIは3つ。Agent API はチャット履歴を保持し、複数ステップの推論とツール呼び出しを自律的に駆動する。ゲームループの中でNPCが「次に何をすべきか」を自分で判断するための頭脳にあたる。Chat API は推論を直接制御するステートレスなインターフェースで、開発者が細かく

AMD Ryzen、メモリ暗号化が黙って消えていた

セキュリティ

AMD Ryzen、メモリ暗号化が黙って消えていた

あなたのRyzenで動いていたメモリ暗号化機能が、ファームウェア更新で無効化されていた。AMDは告知しておらず、BIOSの設定画面には今もスイッチが残っている。切り替えても、何も起きない。 動いていたものが、消えた TSME(Transparent Secure Memory Encryption)は、RAM上のデータをまるごと暗号化するハードウェア機能だ。起動時にAMD Secure Processorが暗号鍵を生成し、メモリへの書き込みをすべてAESで暗号化する。OSの関与は不要で、BIOSで有効にするだけでいい。この保護が効いている限り、コールドブート攻撃(メモリモジュールを冷却し、電源断後も残留するデータを読み取る物理攻撃)やDRAMモジュールの抜き取りで得られるのは、意味のない暗号文だけになる。 AMDは2017年頃にこの機能を導入し、当初はRyzen PROやEPYCといった業務・サーバー向けCPUを対象としていた。だが実際には、一般消費者向けのRyzenでもTSMEは動作した。BIOSにオプションがあり、有効にすれば暗号化が走る。AMDのエンジニア自身が2020年

Defenderのゼロデイ「RoguePlanet」にCVE割り当て。パッチはまだない

セキュリティ

Defenderのゼロデイ「RoguePlanet」にCVE割り当て。パッチはまだない

Microsoftは現地時間6月16日、Defenderのゼロデイ脆弱性「RoguePlanet」にCVE-2026-50656を割り当て、パッチを準備中であることを明らかにした。公開から1週間、脆弱性の存在を正式に認めたことになる。ただし修正の提供時期は示されておらず、発見者のクレジットもない。 1週間の沈黙を経て RoguePlanetが公開されたのは6月10日、月例パッチの数時間後だった。セキュリティ研究者Nightmare Eclipse氏が自前のGitリポジトリに実証コードを投稿し、複数の第三者が最新パッチ適用済みのWindows 10/11でSYSTEM権限の奪取を再現した。Defenderの内部処理に存在するレースコンディション(ファイルパスの検証と実行の間に生じるタイミングの隙)を突く手法で、リアルタイム保護の有効・無効を問わず動作する。 Microsoftはその時点で「調査中」とだけ回答していた。それから1週間。6月16日に公開されたアドバイザリで、MicrosoftはようやくCVE-2026-50656を割り当てた。CVSS 7.8(High)、深刻度はIm

6月パッチでOfficeが開かない。原因はMicrosoftではないかもしれない

Windows

6月パッチでOfficeが開かない。原因はMicrosoftではないかもしれない

6月の月例更新KB5094126で、また別の不具合が見つかった。サードパーティ製アプリからOfficeが起動しなくなる問題を、Microsoftが公式に認めた。ただし、原因は単純ではない。 「何も起きない」という不具合 6月9日配信のKB5094126(Windows 11 24H2/25H2)およびKB5093998(Windows 11 23H2)を適用した環境で、サードパーティ製アプリケーションからMicrosoft Officeアプリやドキュメントを開けなくなる不具合が報告されている。Windows 10向けのKB5094127でも同じ問題が起きる。 影響を受けるのはWord、Excel、PowerPoint、Accessなど主要なOffice製品だ。ただし、Office単体では正常に動作する。壊れたのはOfficeそのものではない。OLEオートメーションと呼ばれる連携の仕組みだ。 会計ソフトがWord文書を自動生成する、歯科診療ソフトが患者レポートをExcelに出力する。こうした「アプリからOfficeを操作する」処理の裏側で動いているのがOLEオートメーションで、