Defenderのゼロデイ2件、すでに攻撃で使われていた

Defenderのゼロデイ2件、すでに攻撃で使われていた

セキュリティソフトが攻撃の足場になる。その現実が、また一つ記録に加わった。


守るソフトの中に穴があった

Microsoftが5月21日(日本時間)、Microsoft Defenderに存在する2件のゼロデイ脆弱性に対する修正パッチの配布を始めた。どちらも発見時点ですでに実際の攻撃で使われていた。

1件目はCVE-2026-41091。MicrosoftのマルウェアスキャンエンジンであるMalware Protection Engineのバージョン1.1.26030.3008以前に存在する特権昇格の脆弱性だ。シンボリックリンク——ファイルシステム上で別の場所を指す「近道」のようなもの——の処理に問題があり、ローカルの攻撃者が SYSTEM 権限、つまりWindowsで最も強い管理者権限を手に入れられる。CVSSスコアは 7.8(高)

2件目はCVE-2026-45498。Microsoft Defender Antimalware Platformのバージョン4.18.26030.3011以前が対象で、こちらはサービス運用妨害(DoS)の脆弱性だ。ローカルで細工したファイルをDefenderがスキャンしようとすると、エンジンがリソースを際限なく消費して応答不能に陥る。CVSSスコアは4.0(中)と数値は低いが、セキュリティソフト自体を止められるという点で実害は軽くない。

2件のゼロデイ脆弱性 比較
CVE-2026-41091 CVE-2026-45498
種別 特権昇格 サービス運用
妨害(DoS)
対象 Malware
Protection
Engine
Antimalware
Platform
脆弱な
バージョン
1.1.26030.3008
以前
4.18.26030.3011
以前
修正
バージョン
1.1.26040.8 4.18.26040.7
CVSS 7.8(高) 4.0(中)
攻撃
ベクター
ローカル
(AV:L)
ローカル
(AV:L)
認証要否
(低権限)
不要
主な影響 SYSTEM権限
を奪取
Defenderの
スキャンが
停止

修正は自動更新で届く

Microsoftは両脆弱性に対し、Malware Protection Engineのバージョン 1.1.26040.8 とAntimalware Platformのバージョン4.18.26040.7でそれぞれ修正を実施した。

Microsoftによれば、「アンチマルウェアソフトウェアの既定の構成では、マルウェア定義とDefenderプラットフォームが自動的に最新の状態に保たれる」ため、ほとんどのユーザーは手動で何もしなくてよい。

ただし、更新が正しく当たっているかどうかの確認は推奨されている。Windowsセキュリティを開き、「ウイルスと脅威の防止」→「保護の更新」→「更新プログラムの確認」の順に進む。その後、設定の「バージョン情報」で「マルウェア対策クライアントのバージョン」の番号が上記のバージョン以上であれば対処済みだ。

CISAが連邦機関に6月3日までの対応を命じた

もう一つ、見過ごせない動きがある。

米国のサイバーセキュリティ・社会基盤安全保障庁(CISA)は5月20日、この2件をKEV(既知の悪用された脆弱性)カタログに追加した。KEVへの掲載は「理論上危険」ではなく「実際に攻撃で使われた」ことを意味する。

CISAはBOD 22-01に基づき、連邦民間行政機関(FCEB)に対して 2026年6月3日 までに対処するよう命じた。

「この種の脆弱性は悪意あるサイバー攻撃者の常套的な侵入口であり、連邦機関にとって重大なリスクをもたらす」

民間企業に法的義務はないが、KEVに載った脆弱性はすでに攻撃ツールキットに組み込まれている可能性が高い。対処の優先度を上げる判断材料としては十分だ。

要点:自動更新が有効であれば修正は自動で適用される。念のため「Windowsセキュリティ」→「保護の更新」で最新バージョンが当たっているか確認しておきたい。

守るためのソフトが、突破口になる逆説

二つの脆弱性の構造を並べると、ある戦術の形が見えてくる。

CVE-2026-41091でSYSTEM権限を取得し、CVE-2026-45498でDefenderを機能不全に追い込む。特権昇格→防御無力化という二段階の侵害が成立する組み合わせで、Microsoftはどちらも実際の攻撃で使われたと認めている。攻撃者はDefenderを「無効化すべき障害物」ではなく「踏み台として使える資産」と見ている。

2段階攻撃フロー
Step1
CVE-2026-41091
Phase 1 — 権限昇格
SYSTEM権限を奪取
ローカル低権限ユーザーがシンボリックリンクを悪用し、Defenderのスキャンエンジン(MMPE)を騙してSYSTEM権限で任意ファイルを操作させる
Step2
CVE-2026-45498
Phase 2 — 防御無力化
Defenderのスキャンを停止
細工したファイルをスキャンさせることでAntimalware Platformを無限リソース消費状態に追い込み、脅威検知機能を停止させる
最終状態
SYSTEM権限を持った攻撃者が、検知されない環境で活動できる状態が完成する
※ 両CVEともAV:Lのため初期侵入には別の手段が必要。端末へのローカルアクセスを前提とした二段階構成

ウイルス対策ソフトは、マルウェアを見つけるために多くのファイルへ深くアクセスする。その「深いアクセス」が攻撃者にとって魅力的な標的になる。今回の件はDefender特有の問題ではなく、セキュリティ製品全般が抱える構造的な矛盾だ。

自動更新が機能していれば今回は対処済みのはずだが、その「はず」を一度確認する価値はある。


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