Intel Nova Lake、52コアと独自巨大L3の全貌

Intelの本気が、ロードマップ全体として表に出てきた。最大52コア、175W、そしてAMDの3D V-Cacheを真似ない独自の巨大キャッシュ。Nova Lake-Sの全貌が、ようやく見えてきた。

Intel Nova Lake、52コアと独自巨大L3の全貌
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Intelの本気が、ロードマップ全体として表に出てきた。最大52コア、175W、そしてAMD3D V-Cacheを真似ない独自の巨大キャッシュ。Nova Lake-Sの全貌が、ようやく見えてきた。


175Wは始まりに過ぎない、52コアの正体

VideoCardzが入手したIntel内部資料には、Nova Lake-SCore Ultra Series 4)の予備SKUリストとして13モデル、5種類のダイ構成が記載されている。2026年後半に控えたIntelの次世代デスクトップの全体像が、これでようやく形になった。

最上位は型番「P3DX」。8P+16Eコアのコンピュートタイルを2つ束ね、4基のLPEコア(低消費電力Eコア)を加えて合計52コアに達する。Product Base Power、いわゆるPBPは175W。現行フラッグシップCore Ultra 9 285Kの125Wと比べて4割増しだ。

ただし175Wはあくまで「ベース電力」だ。Intelの過去を思い出せばいい。285Kは125WのPBPに対し、実際のMTPは250Wに到達した。Nova Lakeのデュアルタイル版に至っては、2月にリークされた電力プロファイルでPL2が496W、瞬間ピークのPL4が854Wという数字まで出ていた。リーカーのJaykihn氏自身が「古い構成の値だ」と但し書きを付けたが、桁の感覚としては175Wの上に倍以上が乗ると思っておいたほうがいい。

興味深いのは、52コアと44コアの2モデルに、Intelがまだ「Core Ultra 9」のブランドを割り当てていないことだ。リーク資料のブランド欄には「Core Ultra X?」と疑問符付きで仮置きされている。海外メディアの一部は、10年近く姿を消していた「Core X」シリーズの準HEDT復活ではないかと見ている。コア戦争の口実で、消えたカテゴリが舞台に戻ってくるのかもしれない。

Intel Nova Lake-S 予備SKUリスト(13モデル)
ブランド 型番 コア コア構成 Cache TDP
Ultra X? P3DX 52 16P+32E+4LPE bLLC 175W
Ultra X? P2DX 44 16P+24E+4LPE bLLC 175W
Ultra 9 P2D 28 8P+16E+4LPE bLLC 125W
Ultra 9 P2K 28 8P+16E+4LPE 標準 125/65W
Ultra 9 P2 22 6P+12E+4LPE bLLC 65W
Ultra 7 P1D 24 8P+12E+4LPE bLLC 125W
Ultra 7 P1K 24 8P+12E+4LPE 標準 125/65W
Ultra 7 P1 16 4P+8E+4LPE 標準 65/35W
Ultra 5 MS2K/F 22 6P+12E+4LPE 標準 125/65W
Ultra 5 MS2 12 4P+4E+4LPE 標準 65/35W
Ultra 5 MS1 8 4P+0E+4LPE 標準 65/35W
Ultra 3 T1 6 2P+0E+4LPE 標準 65/35W
※ VideoCardzが入手したIntel内部資料による予備SKUリスト。P3DX/P2DXはコンピュートタイル2基構成、上位2モデルにIntelはまだ「Core Ultra 9」を割り当てていない。MS2K/Fの「F」はiGPU非搭載版で、計13モデル。
175W、52コア、Coreブランド外し。Nova Lakeは「電源とブランドの常識」を、一緒に書き換えにきている。

bLLCは「積まない」、Intelが選んだ別の道

今回のリークで最も核心的な事実は、コア数でも消費電力でもない。Intelの巨大キャッシュ「bLLC」(big Last Level Cache、L3の拡張版)が、AMD3D V-Cacheとは物理構造そのものから違うことだ。

X3DはCCDの上にSRAMを垂直に積層する。Intelのアプローチは、その逆を行く。リーカーのJaykihn氏は「より大きく、より幅の広いダイ」だと断言し、具体的な数字まで添えた。標準のコンピュートタイルが98平方mmなのに対し、bLLC版は154平方mm。垂直に積むのではなく、水平に広げる選択だ。

この選択にはトレードオフが両方ある。積層しないので発熱の集中は起きにくく、X3D初期世代が抱えていた「キャッシュ層の上にコアを置けないから周波数が伸びない」問題からも逃れられる。一方でダイ面積が増えるぶん、ウェハ1枚から取れる数は減る。製造原価が上がる方向にしか働かない。安くなる理由は、どこにもない。

ダイそのものが大きい。98平方mm対154平方mm。(原文:Bigger die, 98 > 154 mm^2.)

そしてもう一つ重要なのは、デュアルタイル版では両方のコンピュートタイルにbLLCが載るという点だ。AMDの9950X3Dは2つのCCDのうち片方だけにX3Dを積む非対称構成で、Windowsスケジューラが「ゲーム向きコア」と「生産性向きコア」を毎回仕分ける必要がある。Intelの対称配置は、その面倒をスケジューラ側から消す可能性がある。

ワークロードが偏ってもキャッシュ恩恵を受けられるかどうか。それがNova Lakeの真価を測る、最初の物差しになる。

LGA1954は約束を守れるか

ソケットLGA1954」、別名「Socket V」もまた、Intelにとっての宿題だ。リーク資料には「将来CPUとの前方互換性」が明記され、Razer Lake、Titan Lake、Hammer Lakeが同一ソケットに載る計画がある、とされている。

Intelのデスクトップソケットは長らく「2世代で打ち切り」と批判されてきた。LGA1851がその典型で、Arrow Lakeとそのリフレッシュで早くも役目を終える。AMDAM4が約7年生き延びたことと比較すれば、見劣りは明らかだった。LGA1954は最大4世代を視野に入れている——少なくとも、ロードマップ上では。

LGA1954ソケット 4世代対応のロードマップ(噂)
2026
Nova Lake
Core Ultra 400
2027
Razer Lake
噂段階
2028
Titan Lake
噂段階
2029
Hammer Lake
噂段階
※ Moore's Law is Deadのリーク情報を起点とした業界報道による。Intelは前方互換性を強調しているが、過去にもMeteor Lake-Sなどロードマップに載りながら市場到達しなかった例があり、実際の対応世代は今後の判断に依存する。

実際に守られるかは、過去の履行率を考えると楽観しすぎないほうがいい。かつて消えたMeteor Lake-Sも、Intelのロードマップに堂々と載っていた製品だ。

プラットフォーム側の進化は確かに大きい。DDR5-8000のネイティブ対応、CUDIMM/CQDIMMによる256GB超の容量、Wi-Fi 7とThunderbolt 5のチップ統合。Arrow Lake世代から完成度は確実に一段上がっている。

AMD Olympic Ridgeとの正面対決

噂されているAMDの次世代RyzenOlympic Ridge」(Zen 6)と並べると、構図はわかりやすい。最大コア数はAMDの24に対しIntelは52。製造プロセスはどちらもTSMC N2P。最大bLLCはIntelの288MBに対し、AMDのX3Dは1スタック64MB前後。発売時期はどちらも2026年後半が目標だ。

Intel Nova Lake-S vs AMD Olympic Ridge 主要スペック
項目 Intel Nova Lake-S AMD Olympic Ridge
コア種類 Coyote Cove + Arctic Wolf Zen 6
製造プロセス TSMC N2P TSMC N2P
最大コア数 52 24
最大Pコア 16 24
最大スレッド 52 48
最大キャッシュ 144〜288MB (bLLC) 96MB+X3D 64MB/層
メモリ規格 DDR5-8000 DDR5-7200
ソケット LGA 1954 AM5
最大PBP 175W 125W+
発売時期 2026後半 2026後半
※ Intel側はVideoCardz/Wccftech経由のリーク資料、AMD側はZen 6関連の各種リークを基にした想定値。AMDのコア数・キャッシュ・PBPはOlympic Ridgeの最終仕様によって変動する可能性がある。

数字だけを並べれば、Intelが圧倒している。だがArrow Lake発表時も、紙の上の数字は同じくらい魅力的だった。実際の評価は、レイテンシ、スケジューラの賢さ、価格、そして発熱で決まる。コア数とキャッシュ容量は前提条件にすぎず、勝敗そのものではない。

それでも、Intelが本気で勝負の土俵に戻ってきたという事実は、市場全体にとって悪い話ではない。価格競争、選択肢、そして次の半年で漏れてくるであろうベンチマーク自作PCを組む人間にとっては、久しぶりに楽しみな材料が揃ってきた。

数字が出揃うのは2026年後半から2027年初頭にかけて。それまでは半身の構えで、続報を一つずつ拾っていけばいい。


参照元

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