SNS規制

豪ビクトリア州、匿名中傷者の身元開示を可能にする新法案を発表

オーストラリア

豪ビクトリア州、匿名中傷者の身元開示を可能にする新法案を発表

オーストラリア・ビクトリア州政府が、SNS上の匿名ヘイト投稿者の身元を暴く権限と、子どもの精神被害をめぐる訴訟のハードルを引き下げる2つの法案を発表した。選挙まで4ヶ月、成立は不透明だ。 匿名アカウントの身元を暴く ビクトリア州のジャシンタ・アラン(Jacinta Allan)首相は7月19日、SNSの匿名アカウントによるヘイト投稿に対処する2つの新法案を発表した。 1つ目は「デマスキング命令」の導入だ。ビクトリア州民事行政裁判所(VCAT)に新たな権限を与え、人種・宗教・性的指向などの属性を理由にした中傷(vilification、差別的言動)を行った匿名アカウントの身元を、SNS企業に開示させる。 オーストラリアの州レベルではこうした仕組みは初となる。 2つ目は、子どもに精神的被害を与えたSNS・AI企業を家族が訴える際のハードル引き下げ。現行法では「永久的障害10%以上の証明」が必要だが、未成年の訴訟に限りこの要件を撤廃する。成人への拡大も検討するとしている。 判決が後押しした この発表の背景には、米国での判例がある。2026年3月、ロサンゼルスの陪審はMeta

EU、13歳未満のSNS利用制限へ 夏以降に立法提案

EU

EU、13歳未満のSNS利用制限へ 夏以降に立法提案

EUが全面禁止ではなく「段階的アクセス」を選んだ。安全性の証明はプラットフォーム企業が負う。 専門家パネルが報告書を提出 フォン・デア・ライエン(Ursula von der Leyen)欧州委員長が設置した子どものオンライン安全に関する専門家パネルが7月13日、最終報告書を提出した。2025年9月の施政方針演説で設置が決まり、共同議長にはウルム大学児童青年精神科のイェルク・フェーゲルト(Jörg Fegert)教授とフランス国立衛生医学研究所のマリア・メルシオール(Maria Melchior)氏が就いた。医療・神経科学・心理学・ITの専門家と若者の代表が3回の会合を重ね、提言をまとめた。 報告書の柱は年齢区分ごとのアクセス制限だ。3歳未満はスクリーンそのものを使わせない。3〜12歳は、保護者や教師の監督のもとで、年齢に適したサービスに限って利用を認める。13〜18歳には、安全機能が備わったプラットフォーム上で「段階的な自律利用」(evolving autonomous use)を許可する。 全面的なプラットフォーム禁止は勧告しなかった。 報告書が繰り返し強調したのは、立

グレイ氏、ハイト氏の「スマホ犯人論」に反論する本を9月刊行

子どものメンタルヘルス

グレイ氏、ハイト氏の「スマホ犯人論」に反論する本を9月刊行

子どものメンタルヘルス危機の原因はスマートフォンではなく学校にある。ハイト氏と共にLet Growを創設した心理学者が、50万ドルの前払い金を得て反論書を刊行する。 同志だった二人の心理学者 ピーター・グレイ(Peter Gray)氏とジョナサン・ハイト(Jonathan Haidt)氏は、かつて同じ方向を向いていた。 グレイ氏は82歳の進化心理学者で、ボストンカレッジの研究教授。遊びの進化心理学を専門とし、2013年に刊行した著書『Free to Learn(自由に学ぶ)』で、子ども自身が主導する遊びの時間が奪われたことこそメンタルヘルス悪化の原因だと論じた。スティーブン・ピンカー氏をはじめ学術界から高い評価を受け、ハイト氏もグレイ氏を「遊びの分野におけるスター学者」と呼んでいたという。 2017年、二人は他の2名とともに非営利団体Let Grow(自由に育てよう)を共同で設立した。子どもの自立した活動を取り戻すことを目的とし、2024年の寄付金は約200万ドル(約3億2000万円)に達している。 転機は2023年に訪れた。 「非倫理的だ」 ハイト氏がグレイ氏に新著

プルタルコスが書いたSNS依存の処方箋。2026年の法廷が追認した

SNS

プルタルコスが書いたSNS依存の処方箋。2026年の法廷が追認した

古代ローマの哲学者プルタルコスが『モラリア』に残した処方箋が、2026年のSNS規制をめぐる法廷判決や各国の立法と正確に重なっている。 壁の落書きを読むな 紀元1世紀、プルタルコスは他人の生活を覗き見る衝動について書いた。 オーストラリアン・カトリック大学のマシュー・シャープ(Matthew Sharpe)准教授が学術メディアThe Conversationに寄せた論考で、『モラリア』の一節を引いている。自分の人生と向き合えない者は、内面のあらゆる悪徳に怯え、外へ飛び出し、他人の問題を嗅ぎ回って自分の悪意を肥え太らせる。 プルタルコスの診断は正確だった。他人の秘密を探りたがる者は、もっとも扇情的で誇張された噂に引き寄せられる。噂が噂を呼び、事実は消え、残るのは悪意だけだ。 怒りを反芻する習慣は「薄く叩き延ばされた鉄のように」、些細な刺激で傷つく脆い精神を作る。 シャープ氏はニューヨーク・タイムズ紙の記者マックス・フィッシャー(Max Fisher)氏の著書『The Chaos Machine』(混沌の機械)にも触れている。フィッシャー氏はこの本で、SNS企業がプルタルコス

米国成人の56%が16歳未満のSNS禁止を支持

SNS規制

米国成人の56%が16歳未満のSNS禁止を支持

16歳未満のSNS利用を法で禁じる動きが世界各国で加速するなか、米国の成人も過半数がその禁止を支持していることが大規模調査で明らかになった。 調査が映す、6割の「もう待てない」 ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)が2026年7月1日、新たな調査を公開した。2026年5月26日から6月1日にかけて米国の成人9750人を対象に実施されたもので、16歳未満のSNS利用禁止を支持すると答えた成人は56%に達した。反対は21%。残りの23%は態度を決めかねている。 この56%は、特定の層に偏っていない。 30〜49歳の支持率が63%で、全年齢層の中で最も高い。自分自身がSNSで育ちながら、いま子どもにスマートフォンを渡す立場にいる世代だ。18〜29歳でも52%が支持に回り、65歳以上の49%を上回った。 18歳未満の子どもを持つ親に絞ると支持率は65%に跳ね上がる。子どものいない成人は52%。子どもの顔を毎日見ている親のほうが、禁止への切迫感が高い。 党派の壁も低い。共和党支持層の59%、民主党支持層の54%がいずれも支持を表明した。子どものSNS

スターマー辞任が残すテック政策の宿題

テクノロジー

スターマー辞任が残すテック政策の宿題

キア・スターマー(Keir Starmer)首相が6月22日、辞任を表明した。2024年7月の地滑り的勝利からわずか2年足らず。英国は10年で7人目の首相を迎えることになる。スターマー氏がテック政策に残した遺産を検証する。 「AI超大国」を掲げた2年間 スターマー政権のテック政策は、一言でまとめるなら「壮大な計画書と、未完の法律」だ。 2025年1月、首相はマット・クリフォード(Matt Clifford)氏に委託した「AI機会行動計画」を発表し、50の提言すべてを受け入れると宣言した。国内のAI計算資源を2030年までに20倍にする。750万人にAIスキル研修を受けさせる。英国をG7最速のAI導入国にする。数字は大きく、意思は明確だった。 辞任のわずか2週間前、London Tech Week 2026の壇上でも勢いは衰えていなかった。AIチップ購入に4億ポンド(約850億円)を含む11億ポンド規模のAIハードウェア計画を発表。AMDが最大20億ポンド、ネビウス(Nebius)が17億ポンドの英国投資を表明し、英国初のソブリンAIフロンティアモデル「Lumen Sovere

英国が16歳未満のSNS利用を全面禁止へ。その先にある問い

テクノロジー

英国が16歳未満のSNS利用を全面禁止へ。その先にある問い

キア・スターマー(Keir Starmer)首相が現地時間6月15日、ダウニング街で記者会見を開き、16歳未満の子どもに対するSNSプラットフォームの利用を全面的に禁止すると発表した。年内に議会で規制を通し、2027年春の施行を目指す。対象はSnapchat、TikTok、YouTube、Instagram、Facebook、Xなど主要プラットフォーム。WhatsAppやSignalといったメッセージサービスは含まない。 2025年12月に世界で初めて同様の禁止法を施行したオーストラリアを超える範囲の規制を、英国は打ち出した。ゲームでの見知らぬ人物との通信やライブストリーミングの遮断、AIチャットボットの「恋愛コンパニオン」機能への18歳未満の利用制限など、SNSの外にまで網を広げる。 子どもの安全をめぐる政策として、これは間違いなく大きな一歩だ。だが、禁止の先にある問題は、まだ誰も答えを出していない。 「子どもに子ども時代を返す」という宣言 スターマー首相は会見で繰り返した。SNSは子どもを不幸にしている、いじめを助長している、精神的健康を損なっている、と。保護者の9割が1

カナダ、16歳未満のSNS利用を禁止する法案を提出。AIチャットボットにも安全義務

セキュリティ

カナダ、16歳未満のSNS利用を禁止する法案を提出。AIチャットボットにも安全義務

カナダ政府が6月10日、16歳未満のSNSアカウント保有を原則として禁止する法案「安全なソーシャルメディア法」(Bill C-34)を下院に提出した。プラットフォーム規制だけではない。AIチャットボットへの安全基準、独立規制機関の新設まで一本の法律に盛り込んだ、カナダ史上最大規模のデジタル安全法制だ。 「子どもが命を落としている」 法案を提出したマーク・ミラー(Marc Miller)アイデンティティ・文化大臣は、記者会見で一言こう述べた。政策文書の数字ではなく、この一文がすべてを語っていた。 背景にあるのは、2026年2月にブリティッシュ・コロンビア州タンブラーリッジの中等学校で起きた銃乱射事件だ。加害者の18歳はChatGPTと銃撃に関する会話を繰り返していた。OpenAIは社内でその危険を察知していたが、当局への通報を見送った。生徒5人と教員1人を含む8人が命を落としたこの事件は、カナダ社会に深い傷を残し、プラットフォームとAIの両方に対する法的義務を求める世論を一気に押し上げた。 Bill C-34は、自由党政権としてオンライン有害情報対策の3度目の挑戦にあたる。前身

英国、16歳未満の「有害」SNS禁止へ テック企業に3ヶ月の猶予

テクノロジー

英国、16歳未満の「有害」SNS禁止へ テック企業に3ヶ月の猶予

スマートフォンを子どもに渡すとき、親は何を心配しているか。いじめ、性的画像、終わらないスクロール。英国のスターマー(Keir Starmer)首相が6月8日、ロンドン・テック・ウィークの演説で切り込んだのは、その不安の一つひとつだった。 テック企業への最後通告 スターマー氏が打ち出したのは二つの柱だ。 ひとつは、16歳未満にとって「有害」とされるSNSプラットフォームへのアクセス禁止。YouTube Kidsなど一部の「安全な」サービスは除外される見通しで、今後10日以内に正式発表されると報じられている。 もうひとつが、より即効性のある要求だった。AppleやGoogleといったデバイスメーカーに対し、子どもの端末で性的画像の撮影・送受信・閲覧をブロックする機能を導入するよう求め、3ヶ月の猶予を設定した。従わなければ立法で強制する、という最後通告だ。 対象は販売済みの端末も含む。iOSやAndroidといったOSレベルでの対応を想定しており、年齢確認を経た成人の端末には影響しない。 英国 未成年SNS規制の経緯 2025年 12月オ

Xが違法ヘイト審査48時間に短縮、Ofcomと合意

X

Xが違法ヘイト審査48時間に短縮、Ofcomと合意

イーロン・マスクのXが、英国の通信規制当局Ofcomに対し、違法なヘイトコンテンツとテロ関連投稿の審査時間を大幅に短縮することを約束した。背景には反ユダヤ系のテロ事件が積み重なっている。 24時間平均、48時間以内に85% Ofcomは2026年5月15日、Xから提出された新たなユーザー保護のコミットメントを受諾した。これまでXは、ヘイトや暴力扇動の通報に対する対応の遅さで再三批判されてきた。今回の合意はその応答プロセスに数値目標を設けるものだ。 公約の中身は3つある。第一に、英国の通報窓口に届いた違法テロ・ヘイトコンテンツを 平均24時間以内 に審査・評価する。第二に、バックストップとして、通報の85%を最大48時間以内に処理する。第三に、英国の指定テロ組織が運営、あるいはその代理として運営しているとXが判断したアカウントは、英国内からのアクセスを遮断する。 通報システムの改善も合意に含まれた。市民団体からは「通報したのに反応がない」「届いているのかすら分からない」と苦情が相次いでいた。Xは外部の専門家と連携し、レポーティングの仕組み自体を作り直す姿勢を示している。 X