Windows 11、統合メモリのGPU・AI配分をユーザーが選べる設定を準備中
Insiderビルドに、統合メモリの「予約量」を調整する未発表機能が見つかった。RTX Sparkを筆頭に、CPUとGPUがメモリを共有する次世代PCで、配分をOS設定からユーザー自身が調整できるようになる見通し。macOSにはない選択肢になる。
Insiderビルドに、統合メモリの「予約量」を調整する未発表機能が見つかった。RTX Sparkを筆頭に、CPUとGPUがメモリを共有する次世代PCで、配分をOS設定からユーザー自身が調整できるようになる見通し。macOSにはない選択肢になる。
Insiderビルドに眠る「選択権」
Windows 11の実験ビルド29648.1000(現地時間8月17日リリース)に、まだ公式には発表されていない機能が隠れている。
Windows Latestが報じたところによると、同メディアが内部のNVIDIAドキュメントで統合メモリの制御に関する記述を発見。その後、Microsoftウォッチャーのphantomofearth氏がプレビュービルド内にも痕跡があることを確認した。
内部名はIntelligentCarveoutで、日本語にすれば「知的な切り出し」。フィーチャーIDは61121285で登録され、新しいDLLファイル SettingsHandlers_UnifiedMemory.dll が同梱されている。
ビルドからはUIに表示される予定の文字列も見つかった。設定画面のラベルとして用意されている文字列の一つには、こうある。
Let Windows reserve additional unified memory for graphics and AI intensive games and applications. Reserved memory is not available for other applications.
(グラフィックスやAI負荷の高いゲーム・アプリ向けに、統合メモリの追加予約をWindowsに許可する。予約されたメモリは他のアプリからは使えなくなる)
ほかにも「Reserved memory for accelerators」(アクセラレータ向け予約メモリ)、「Memory for graphics and AI acceleration」(グラフィックスとAI処理向けメモリ)といった文字列が確認されている。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 内部名 | IntelligentCarveout |
| フィーチャーID | 61121285 |
| 発見ビルド | 29648.1000(8月17日) |
| 対象 | 統合メモリ搭載PC |
| 状態 | 未発表・テスト段階 |
| 機能 | GPU・AI向け予約量の調整 |
英語版ビルドの痕跡からは、Settings > System > Advancedの配下に設定が置かれる見通しだが、日本語版での表示名は未確認で、最終的なUIがスライダーになるのかプリセット式になるのかも判明していない。Microsoftのリリースノートにも一切の記載がない。
なぜ「予約」が必要なのか
従来のWindows PCでは、メモリは2つの領域に分かれていた。CPUが使うシステムRAMと、GPUが使うVRAM(ビデオメモリ)。ゲーミングノートPCにGeForce RTX 5090が載っていれば、24GBのVRAMはGPU専用で、システムRAMとは別の物理メモリとして存在する。
タスクマネージャーに表示される「共有GPUメモリ」は、その名の通りシステムRAMの一部をGPUに貸し出す仕組みだが、あくまで上限値であって固定の予約ではない。
今回見つかった機能は性質が異なる。文字列にある通り、予約されたメモリは他のアプリには回らない。ユーザーの判断で、メモリプールの一部をGPU・AI処理に「切り出す」(carve out)設計になっている。
この仕組みが活きるのは、CPUとGPUが同じメモリプールを共有する「統合メモリ」(ユニファイドメモリ)構成のPC。
NVIDIAのRTX Sparkは、20コアのGrace CPU(Armアーキテクチャ)とBlackwell GPUを1チップに統合し、最大128GBの統合メモリをCPU・GPU・AIアクセラレータで共有する。AMDのRyzen AI Max「Halo」シリーズも統合メモリ構成を採用している。
128GBを共有するとなると、用途によって最適な配分は変わる。ローカルで1200億パラメータのAIモデルを動かすなら、メモリの大部分をGPU側に回したい。逆に、大量のアプリを開いて通常作業をするなら、GPU予約は最小限にしてシステム側に余裕を持たせたい。
固定配分ではユーザーの使い方に対応できない。かといってOS任せでは、AIモデルのロード中にメモリが足りなくなる事態もありうる。ユーザーが自分の使い方に合わせて配分を選べる設定は、統合メモリ時代のWindowsに欠かせない。
macOSにはない選択肢
Appleは2020年のM1チップ以降、PC市場で統合メモリを広めてきた。だが、その配分をユーザーが公式に調整する手段は、macOSには用意されていない。
macOSのMetalドライバは、GPUが確保できるメモリの上限を物理メモリの約75%に固定している。128GBのMacなら約96GBまでしかGPUに割り当てられない。残りの32GBはOSとアプリのために確保される。
ローカルでAIモデルを動かすユーザーの間では、ターミナルから sysctl コマンドで隠しパラメータを書き換え、GPU上限を引き上げる手法が広まっている。だがAppleが公式にサポートしている操作ではなく、やりすぎればシステムが不安定になるリスクを伴う。
Windowsが準備しているのは、この配分調整をOS標準の設定画面から行える仕組みそのもの。上限をOSが一律に決めるのではなく、ユーザーが自分の使い方に合わせて選べる。ゲームに振る日もあれば、AIモデルに振る日もある。その「選択権」をGUIで渡すアプローチは、macOSとの差別化になりうる。
RTX Sparkに合わせて進むOS側の準備
Microsoftはこの機能を突然思いついたわけではない。
2026年5月31日、MicrosoftでWindowsとデバイスを統括するパヴァン・ダヴルリ(Pavan Davuluri)氏は、RTX Sparkの発表に合わせた公式ブログで、統合メモリへの最適化に踏み込んでいる。
GPUが利用できるシステムメモリの上限を引き上げたこと、共有メモリ領域のページサイズ管理を改良したことが明言されている。加えて、RTX Sparkの異種混合アーキテクチャに合わせたスケジューラの最適化(Workload Profile Scheduling、ワークロード別のスケジューリング)や、電力・熱管理の統合フレームワークであるMPTF(Microsoft Power and Thermal Framework)の対応も進んでいる。
今回見つかったIntelligentCarveoutは、このブログで語られた「統合メモリ最適化」の具体的な実装の一つとみられる。Experimentalチャネルの「Future Platforms」(将来のプラットフォーム向け)ブランチに存在しており、RTX Sparkに限らず、統合メモリを採用する他のチップでも利用できる可能性がある。
RTX Spark搭載のノートPCやミニデスクトップは今秋、Microsoft(Surface Laptop Ultra)、Lenovo、ASUS、Dell、HP、MSIから発売される。128GBの統合メモリを1チップに載せたPCを実際に使えるようになったとき、その配分を自分で選べるかどうかは、体験を大きく左右する。
macOSでは75%の壁にぶつかったユーザーがターミナルに手を伸ばした。Windowsが同じ壁をOS設定で取り払おうとしているなら、統合メモリ時代のPCは、ユーザーの手に少し多くの選択肢を残して届くことになる。