AI排出量が過去最大。GoogleとAmazonの報告書

AI排出量が過去最大。GoogleとAmazonの報告書

GoogleとAmazonが今週公開した環境報告書は、AIが消費するエネルギーだけでなく、データセンターの建設資材やGPU製造まで含めた排出量の全体像を示した。効率改善は進んでいる。それでも、拡大の速度が改善を上回り続けている。


「排出量は増えたが、効率は上がった」の限界

Googleが2026年環境報告書で公表した2025年の排出量は、同社が「アンビション・ベース」と呼ぶ算定方式で約1450万トンCO₂換算に達した。前年比18%増、2019年の基準年からは81%増になる。事業運営に直結するスコープ1・2の排出は約290万トンで、前年比2%減。電力需要が前年比37%も伸びたにもかかわらず運営排出を減らせた点を、Google自身は成果として強調している。

問題は、排出全体の約80%を占めるスコープ3にある。サーバー、チップ、ネットワーク機器の製造、データセンターの建設資材がその大半を占め、前年比で25%増加した。Googleの最高サステナビリティ責任者ケイト・ブラント(Kate Brandt)氏は報告書の中で、AIインフラの拡大が電力網の脱炭素化よりも速いペースで進んでいると認めている。

Google 2025年排出量のスコープ別内訳
区分排出量割合
スコープ3約1160万トン約80%
スコープ1・2約290万トン約20%
合計約1450万トン100%
※スコープ3はサプライチェーン排出(GPU・サーバー製造、データセンター建設資材等)。スコープ1・2は自社施設の直接排出と購入電力。Google 2026年環境報告書(アンビション・ベース算定)

Amazonの数字はさらに大きい。2025年持続可能性報告書によると、総排出量は約8090万トンCO₂換算で、前年比16%増。ニュージーランド一国の年間排出量をわずかに上回る規模になった。2019年にClimate Pledgeを立ち上げて以来、数年間は横ばいか微増にとどまっていた排出量が、一気に跳ね上がった格好になる。

注目すべきは、Amazonのカーボンインテンシティ(売上あたりの排出量)が2019年以来初めて悪化に転じたことだ。Amazonはこの指標を「事業成長と排出のデカップリング(切り離し)が進んでいる証拠」として掲げてきた。その指標が逆転した意味は重い。

スコープ3が突きつける構造的な問題

両社とも、直接の電力消費に伴う排出はある程度抑え込めている。再生可能エネルギーの大量購入がそこでは機能している。Googleは2025年に過去最大となる12ギガワット超のクリーンエネルギー契約を結び、Amazonはクリーンエネルギーのポートフォリオを42ギガワット、712プロジェクトにまで拡大した。

排出増の主因はスコープ3、つまりサプライチェーン全体から発生する間接排出だ。データセンターに使う鉄鋼やセメントの製造は大量のCO₂を排出する。低炭素の鉄鋼やセメントを開発するスタートアップは存在するが、テック企業が必要とする規模にはまだ届いていない。

GPUとメモリチップの製造工程は、再エネ契約では対処できない。半導体の製造には莫大なエネルギーが必要であり、最先端の工場の多くは化石燃料依存の電力網が支配するアジアに集中している。加えて、製造工程で使われるフッ素系ガスなどの化学薬品は、CO₂の数千倍の温室効果を持つ。AI需要によるチップの大量調達が、両社のスコープ3を押し上げている。

Googleはこの問題への対策として「Clean Energy Addendum」を立ち上げ、主要なハードウェアサプライヤーに2029年末までにクリーン電力100%への移行を求めている。75社以上がすでに合意し、最大800万トンのCO₂削減効果が見込まれるという。だが、目標の2029年まであと3年以上ある。その間もデータセンターの建設は加速する。

効率改善は進んでいる。それでも足りない

誤解を避けるために書いておくと、両社の効率改善は確かに進んでいる。

GoogleのPUE(データセンターの電力使用効率)は1.09で、業界平均の1.56を大幅に下回る。冷却や配電のオーバーヘッドは業界平均より83%少ない。AmazonのPUEは1.14で、パブリッククラウド業界平均より9%、オンプレミス環境より30%優れている。

Googleは報告書の中で、AIの推論処理1回あたりの環境負荷にも触れている。Geminiのテキスト入力1回あたりの消費エネルギーは0.24ワット時、水は0.26ミリリットル、CO₂排出は0.03グラム。過去12カ月でプロンプトあたりのエネルギー消費は33分の1に、CO₂排出は44分の1にまで改善したという。

Google自身の試算では、効率改善策がなければ2025年の排出量は現在の5倍に膨らんでいた。5800万トンCO₂換算の排出を回避できたと主張する。

効率改善がなければ事態はもっと深刻だった。それは認めてよい。だが、現在の増加が許容範囲に収まっていることにはならない。37%の電力需要増を吸収しながら運営排出を2%減らした技術力は確かにある。それでもスコープ3を含めた総排出は18%増えた。データセンターの建設とチップの調達が拡大し続ける限り、この構造は変わらない。

ネットゼロ目標は維持されている。しかし

Googleは2030年までのネットゼロを「ムーンショット」と呼び続け、SBTi(科学的根拠に基づく排出削減目標イニシアチブ)の認定も取得している。スコープ1・2の50%削減とスコープ3の絶対量50%削減を目指す。Amazonは2040年のネットゼロを堅持し、Climate Pledgeの署名企業は107社を新たに加えて656社に拡大した。

Amazonの最高サステナビリティ責任者カラ・ハースト(Kara Hurst)氏は報告書の冒頭で、長期的な進歩に対して「自信と楽観を持っている」と述べている。

数字はその楽観を支持していない。Googleの排出量は基準年の2019年から81%増えた。半減目標の2030年まで4年を切っている。Amazonの排出量は16%増で跳ね、カーボンインテンシティの改善トレンドすら崩れた。

Microsoftもまた、2025年5月に公開した環境報告書で総排出量が2020年基準から23.4%増加したと報告している。増加分の97%以上がスコープ3、つまりサプライチェーンの排出だ。テック大手3社がそろって排出増を報告し、そろってネットゼロ目標を堅持している。

テック大手3社の排出量変化とネットゼロ目標
企業排出量変化総排出量(2025年)ネットゼロ目標
Google+18%約1450万トン2030年
Amazon+16%約8090万トン2040年
Microsoft+23.4%約1490万トン2030年
※Google・Amazonは2025年暦年データ(前年比)。Microsoftは2024年度(FY24、2020年比で23.4%増)のため基準年が異なる。Googleはアンビション・ベース算定、MicrosoftはFY2024マーケットベース

この状況をどう読むか。楽観的に見れば、効率改善とクリーンエネルギー投資は着実に進んでおり、拡大のピークを過ぎれば排出は反転する可能性がある。悲観的に見れば、AIの需要拡大にはまだ天井が見えず、ネットゼロ目標は「いずれ技術が追いつく」という期待に依存している。

確実に言えるのはひとつだけだ。AIのインフラは拡大し続けている。消費するエネルギーもCO₂の排出量も、利用者が増えるほど膨らむ。1回のGeminiテキスト入力が0.24ワット時であっても、それを毎日何億回と繰り返す利用者の総体が、一国分の排出量に匹敵するインフラを必要とする。効率改善は解決策の一部であって、全体ではない。

参照元

関連記事

この記事を共有する