ディスク廃止は「表計算の判断」。元PlayStation幹部が語る

ディスク廃止は「表計算の判断」。元PlayStation幹部が語る

PlayStationのディスク生産終了をソニー在籍32年の元最高幹部が「表計算の判断だ」と評した。同じ日、ソニー唯一のディスク工場が光学レンズ工場への転換を進めていることが判明している。署名活動が広がるより前に、工場はすでに動いていた。


32年いた人の目に映ったもの

ショーン・レイデン(Shawn Layden)氏がEurogamerのインタビューに応じた。SIEワールドワイド・スタジオの会長を務め、PS4時代のファーストパーティ事業を統括した人物だ。

1987年にソニーへ入社し、共同創業者の盛田昭夫氏のアシスタントからキャリアを始めている。1996年にPlayStation事業へ移り、2019年に退社するまでの32年間をソニーで過ごした。

レイデン氏は、SIEが2028年1月以降の新作ゲームディスク生産を終了するとした7月1日の発表について、率直な言葉を選んだ。

「必ずしも同意はしないが、もう事業にはいない。ディスクを打ち出すコストが高すぎるのかもしれない」(レイデン氏のEurogamerへの説明)

今回の判断を「表計算の判断だ」と表現した。製品や機能の廃止を決めるとき、スプレッドシートの数字が答えを出している。

数字はいつ答えを出したか

レイデン氏はデジタル販売がゼロだった時代を知っている。PlayStationの売上におけるデジタル比率が10%だった時期も記憶しているという。その数字は年々膨らみ続け、2025年度第4四半期には85%に達した。

この変化をさらに踏み込んで読み解いている。顧客の80%がデジタルを選び、その層が売上の95%を生んでいるとき、残り20%のために設備を維持する動機は何か。SIEの経営陣はスプレッドシートで答えを出した。

ブロードバンドの普及が判断の前提条件だったとも語っている。この20年間、毎年のように「いつディスクドライブをやめるのか」と問われてきたが、世界中で十分なダウンロード体験を届けられるだけの回線品質が整うまでは踏み切れなかった。その条件が、いま整ったということだ。

中古ゲーム市場は動機ではない

リーカーのKeplerL2氏は、ディスク廃止の真の動機が中古ゲーム市場の封殺にあると指摘した。デジタル販売に一本化すれば、中古の流通は物理的に不可能になる。

レイデン氏はこの見方を否定した。中古ゲーム販売はかつて大きな要因だったが、デジタル販売の拡大そのものが中古市場を事実上無力化したという認識だ。

GameStopのビジネスモデルは中古ゲームの流通を軸に組み立てられていたが、デジタル化がその基盤を徐々に削った。2019年にソニーを離れた時点でも、中古売買の影響はすでに縮小傾向にあったという。

中古ゲームの売買は今も行われている。だがレイデン氏の見方では、それは事業上の脅威ではなくなっている。

中古市場を潰すための判断ではなく、デジタル移行が数字として成熟した結果だという整理だ。

工場はすでに変わり始めている

レイデン氏のインタビューが公開されたのと同じ7月3日、もうひとつの事実が報じられた。オーストリア・タルガウにあるSony DADCのディスク製造工場が、光学マイクロレンズの製造拠点への転換を進めているという内容だ。

Sony DADC社長のディートマール・タンツァー(Dietmar Tanzer)氏がオーストリア放送ORF Salzburgに語ったところによると、タルガウ工場では現在1日あたり60万枚のディスクを生産しており、そのうち約半数がPlayStation向けだ。2028年にはこの生産量が現在の10%にまで縮小する。

ソニーはこの工場に3000万ユーロを投じて光学マイクロレンズの製造設備を整備しており、2024年12月の時点ですでにマイクロレンズの生産が始まっていた。従業員300人は全員が再訓練を受け、解雇は行わない方針だという。

タルガウ工場は、Sony DADCのディスク製造事業の本社機能を持つ拠点であり、ソニーが自社で保有する唯一のディスク工場でもある。アメリカ・インディアナ州テレホートで1983年から続いていたディスク製造は2022年にタルガウへ集約された。累計264億枚を超えるディスクを送り出してきた拠点が、光学レンズの製造へ向かっている。

声は届くか

Change.orgには複数の署名活動が立ち上がり、急速に拡大している。PlayStation公式アカウントの発表投稿にはXのコミュニティノートが付いた。SIEは発表後24時間以上にわたってSNSへの投稿を止めていた。

だがタルガウ工場の転換は、発表のはるか前から進行していた。3000万ユーロの投資は、署名が始まる前に執行されている。レイデン氏が「表計算の判断」と呼んだものは、表計算の段階をとうに過ぎていた。

ソニーのディスク製造拠点の変遷
1983年
テレホートで製造開始
米インディアナ州にSony DADCの主力工場を設立
2011年
ニュージャージー工場を閉鎖
米国内の拠点縮小が始まる
2022年
タルガウへ全面集約
テレホートの製造をオーストリアに移管。タルガウが唯一の自社工場に
2024年12月
マイクロレンズ生産を開始
3000万ユーロを投じて設備を転換。従業員300人を再訓練
2028年
ディスク生産を90%縮小
現在の1日60万枚から10%へ。累計264億枚超の歴史に幕
※Sony DADCのディスク製造事業の変遷。タルガウ工場データはオーストリア放送ORF Salzburgの報道に基づく

PS6がディスクドライブなしで出荷されることは、もはや推測ではない。レイデン氏はEurogamerのインタビューでそれを「当然の帰結」と語った。タルガウの工場転換が、その見立てを裏付けている。


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