データセンター、3000万ガロン無断使用 水圧低下で発覚

ジョージア州フェイエットビルで、AI需要を支えるデータセンターが住民の知らないところで地域の水道を吸い上げ続けていた。気づいたのは水道局ではなく、シャワーの水圧が落ちた近所の住民だった。

データセンター、3000万ガロン無断使用 水圧低下で発覚

ジョージア州フェイエットビルで、AI需要を支えるデータセンターが住民の知らないところで地域の水道を吸い上げ続けていた。気づいたのは水道局ではなく、シャワーの水圧が落ちた近所の住民だった。


水圧の異変から発覚した「無計上」3000万ガロン

ジョージア州フェイエットビルの高級住宅街アネリーゼ・パークの住人たちは、去年から水圧の低さに首をかしげていた。原因を追ったフェイエット郡水道局が突き止めたのは、アトランタの南32キロにあるデータセンター施設に向かう、誰も把握していない2本の産業用水道接続だった。

1本は水道局の許可なく敷設されていた。もう1本は事業者の口座にひもづいておらず、請求書すら発行されていなかった。運営会社のクオリティ・テクノロジー・サービシズ(Quality Technology Services、以下QTS)が支払うべき金額は 約15万ドル (約2310万円)、無計上の水の総量は2900万ガロンを超えていた。オリンピックの公式プールに換算すれば 44杯分 にあたる。

この数字は計画段階で合意された使用上限を大きく超えている。それでも、住民が水圧低下を訴えるまで、誰も気づかなかった。

1人の職員が1100億円規模の施設を見ていた

水道局の責任者バネッサ・タイガート(Vanessa Tigert)は、見落としをシステム移行と人員不足のせいだと説明している。郡がクラウド型の計測システムへ切り替える最中に、産業向け顧客の対応も同時に進めていた。接続プロセスが「混線」した結果だという。

どんな水道局も同じだろうけれど、人手が足りない。雇っても続かない。検査と設計レビューを1人で回しているから、その1人がカツカツになっている。

タイガートはそう述べた。米メディアPoliticoの取材で、検査報告書が見つからないまま「『送信』を急ぎすぎたかもしれない」と、2025年5月にQTSへ送った請求書について語っている。

監視する側の人員は1人。監視される側は、約620万平方フィート、稼働中の建物だけで 13棟 という米国でも有数の規模のデータセンター群だ。

QTSは私募ファンドの傘下、訴えるのは元住民

QTSは2021年に投資ファンドのブラックストーン(Blackstone)に約100億ドル(約1兆5700億円)で買収されている。AI向け需要の急拡大で、データセンターは投資家にとって「次のインフラ」になっている。

QTSは無断使用を否定していない。同社の説明によれば、昨年の水使用量が多かったのはコンクリート打設・粉塵対策・整地など建設時の一時的な作業のためで、稼働後は閉ループ式の冷却で外部の水を使わないという。

稼働後は、トイレやキッチンといった生活用途にしか水を使わない。

QTSの説明はそう続く。ただし、その「稼働後」が来るのはまだ先だ。フェイエットビルのキャンパスは現在も建設中で、完成には 3〜5年 かかる見込みになっている。

「市民には節水を求め、QTSは無計量で使う」

住民の怒りに火をつけたのは、無断使用そのものよりも、その対比だった。

ジョージア州は今、中程度から深刻な干ばつの最中にある。ブライアン・ケンプ(Brian Kemp)州知事は先月、州内で続く山火事に対して非常事態を宣言した。郡の水道局は住民に対し、芝生への水やりを控えるよう通知を出している。

地元の弁護士で、QTSへの請求書を公開請求で入手したジェームズ・クリフトン(James Clifton)は怒りを隠さない。

フェイエット郡水道局から「節水のために芝生への水やりをやめてください」と通知が来る。一方でQTSは絶対量で郡内最大の水利用者だ。月によっては郡内のNo.1で、ほぼ枯らす勢いで使っている。最初に頭を下げさせられるのは市民の方なのか。

クリフトンはフェイエット郡委員会の議席を目指して立候補している。市民の怒りは、政治の争点になりつつある。


罰金はゼロ、追徴金だけで処理

注目すべきは、郡水道局がQTSに罰金を課さなかった点だ。建設用の高い料金体系で追徴請求は行ったが、規約違反としての罰則は適用していない。

UCLA水資源研究グループのグレゴリー・ピアース(Gregory Pierce)所長は、ルールを破った相手に罰金を科さない判断を「異例」と評する。

何が起きているのか正確には分からないが、新規かつ最大顧客の機嫌を損ねたくないのだろう。

タイガートは郡の判断について、こう語っている。

QTSは最大の顧客であり、私たちはパートナーでなければならない。それがカスタマーサービスというものだ。

「顧客」が言葉通りの意味なら、最大の顧客を怒らせない判断は理解できる。ただし、その判断のしわ寄せは、 芝生に水をやれない近隣 の住民に降りていく。

ジョージア州内200拠点、各地で禁止条例の動き

ジョージア州内のデータセンター施設は200を超える。州公益事業委員会は2025年7月、Georgia Power(ジョージア・パワー)の基本料金凍結を決めた。期限は2028年まで。データセンター由来のコストが家庭向け電気料金に転嫁されないよう、3年の時間を稼ぐ措置だ。

フェイエットビル市議会は2026年3月5日、市内すべてのゾーニング区域で新規データセンターを禁止する 条例26-O-12 を可決した。米国データセンター・モラトリアム・トラッカーの集計では、米国内で新規データセンター建設の禁止条例を持つ自治体は少なくとも50を数え、うち4自治体は恒久的な禁止に踏み切っている。

フェイエットビルの事例は、AI時代のデータセンター需要と地方自治体の管理能力との間に、思った以上に大きな開きがあることを露わにした。 問題は水ではなく監視の薄さ だ。設備は産業規模、検査するのは1人。この開きは、フェイエット郡だけの話ではないだろう。

2900万ガロンが計上されないまま流れていたのは、誰かが隠したからではない。見る人がいなかったから起きた。AIの巨大化が議論される傍ら、現場ではメーター1個と検査員1人が追いつかなくなっている。


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