Mint 23 AlfaがUbuntu 26.04で進行中
Linux Mintの次期メジャー版が、ついにUbiquityインストーラを置き換える。コードネーム「Alfa」はベータに届かない仮称だが、中身は確実に次世代へ歩を進めている。
Linux Mintの次期メジャー版が、ついにUbiquityインストーラを置き換える。コードネーム「Alfa」はベータに届かない仮称だが、中身は確実に次世代へ歩を進めている。
「Alfa」という仮の名前で始まった作業
Linux Mintの開発責任者Clem(クレメント・ルフェーブル)は日本時間の4月16日、公式ブログで3月のマンスリーニュースを公開し、次期リリース「Mint 23」の名称を暫定的に「Alfa」としたうえで、2026年クリスマス の公開を目指して開発を進めていることを明らかにした。
「Alfa」という名前は、Linux Mintが伝統的に採用してきた「aで終わる女性の名前」という命名規則から見ればかなり異質だ。Mintはメジャー版番号の増加と同時にアルファベットを1つ進める方式を取ってきたが、Mint 22はWilmaで、22系のポイントリリースはXia、Zara、Zenaと続いた。本来Mint 23はXで始まる名前になるはずが、22.1ですでにXを消費してしまっている。
そこでClemは、正式名が決まるまでの仮称として軍用フォネティックコード由来の「Alfa」を選んだ。開発段階を示すアルファ版とかけた駄洒落でもある。
Alfaという名前がベータまで生き残る可能性は低いので、この名前はぴったりだ。
Clem自身がこう書いているあたりに、Mintらしい地に足のついたユーモアが滲む。
リリース戦略そのものを再設計する
今回のマンスリーニュースで注目すべきは、Mint 23の中身より、リリース戦略の全面見直し のほうだ。
Clemは2月の投稿で「転換点にある」と触れていたが、3月に入って正式に方針を決めた。決定事項は3つある。より長い開発サイクルへの移行、次期リリースを2026年クリスマスに設定、そしてLMDE(Linux Mint Debian Edition)で使っているインストーラ「live-installer」を統一採用する。
一方で、まだ決まっていないこともClemは率直に認めている。サイクルの長さそのもの、ポイントリリースを固定するかローリング的にするか、アルファ版を公式に導入するかどうか──これらは議論の途中だ。
方向性に対する明確さを誰もが望んでいる。だが、私たちは決定を急がない。
この一文に、Mintが取ってきた姿勢がそのまま出ている。ユーザーに直接届く決定ほど、慎重に時間をかける。急がないからこそ、信頼が積み重なる。
Ubuntu 26.04「Resolute Raccoon」という土台
Mint 23 Alfaが現時点で同梱しているのは、 Ubuntu 26.04 をパッケージベース、 kernel 7.0 、Cinnamon 6.7-unstable(新しいWaylandスクリーンセーバー入り)、CJS 140、そしてLMDEから移植したlive-installerだ。
Ubuntu 26.04 LTSは2026年4月23日リリース予定のLTSで、コードネームは「Resolute Raccoon」。GNOME 50を採用し、GNOMEセッションは完全にWayland専用となる。sudoとcoreutilsはRust実装(sudo-rs、uutils)に置き換えられ、TPMベースのディスク暗号化は実験段階から正式機能へと昇格する。
つまりMint 23は、Ubuntuの歴史的な転換点のひとつと足並みを揃える形で公開されることになる。
Ubiquityとの決別
今回の発表で最も技術的意味が大きいのは、インストーラの変更だ。MintはこれまでUbuntuから受け継いだ「Ubiquity」を使い続けてきたが、これをLMDEの「live-installer」に統一する。
Ubiquityは長らくUbuntu系ディストリビューションの標準だったが、Canonical本体はすでにUbuntu 24.04でSubiquityベースの新インストーラに移行しており、Ubiquityは実質的に役目を終えつつあった。MintはSubiquityを採用せず、自分たちがLMDEで育ててきたlive-installerを本家Mintにも持ち込む道を選んだ。
live-installerはUbiquityを置き換えるためにLMDEから移植された。OEMインストール、BIOS/EFI、SecureBoot、LVM/LUKSに対応する。
ここで大きいのは、 インストーラの共通化 だ。ディストリビューションを維持するコストは重複作業の削減で大きく下がり、バグ修正や機能追加が両方に同時に届くようになる。これは保守の効率化だけでなく、ユーザーが将来LMDEに乗り換えるときの学習コストも下げる。
Wayland対応、「早めに試す」という判断
Cinnamon 6.7-unstableには、新しいWaylandスクリーンセーバーが含まれている。開発チームはこれについて、「サイクルの後半ではなく早期にテストしたい」と述べている。
この判断は地味に重要だ。Mint 22系ではCinnamonのWayland対応は「実験的」の域を出なかった。キーボードレイアウトと入力メソッドの扱いは改善されたものの、デフォルトセッションはX11のままだった。
Mint 23では、長い開発サイクルを確保したうえでWayland周りを 早期につぶしにかかる 構えだ。Linuxデスクトップ全体がWayland必須の時代に突入するなか、Mintもついに「遅れて取り残される側」から抜け出そうとしている。
長いサイクルがもたらす余裕
Clemの言葉で印象的なのは、「長いサイクルの恩恵をすでに感じている。きちんとやる時間があるし、限界を感じさせるものは何もない」という一節だ。
短いサイクルで機能を詰め込むやり方は品質の底上げにつながりにくいが、長いサイクルは停滞のリスクと表裏一体でもある。Mintは「停滞ではなく、熟成のための時間」を選ぼうとしているのだと思う。
現時点の作業はベースシステムとインストーラに集中しており、デスクトップやアプリケーションへのフォーカスはこの後に来る。クリスマス公開という目標は、この順番で作業を積み上げるための逆算なのだろう。
誰にとって良いのか、誰にとって微妙か
Windows 10のサポート終了で流入してきた新規ユーザーにとって、Mint 23の長い開発サイクルは朗報だ。安定したLTSベース、Wayland対応、統一されたインストーラ──定住する先として完成度の高い土台が用意される。
一方、最新機能を半年ごとに追いかけたいユーザーには、今回の方針転換は退屈に映るかもしれない。だが、Mintが一貫して選んできたのは「派手さではなく、安心して使い続けられること」だった。今回の決定もその延長線上にある。
クリスマスまであと8か月。開発者ジョーク混じりの「Alfa」が最終的にどんな正式名称に落ち着くのか。その答えが出る頃には、Ubuntu 26.04の実戦投入もひと段落しているはずだ。
参照元
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