Wine 11.7リリース、libxml2依存を排除するMSXML再実装に着手

WindowsアプリをLinuxで動かすWineが11.7になった。地味なバージョン番号だが、今回の変更はこの先の互換性を大きく左右するかもしれない。

Wine 11.7リリース、libxml2依存を排除するMSXML再実装に着手

WindowsアプリLinuxで動かすWineが11.7になった。地味なバージョン番号だが、今回の変更はこの先の互換性を大きく左右するかもしれない。


libxml2依存の解消、Wineが長年の宿題に手をつけた

WineはこれまでMSXMLの実装にLinuxのライブラリ「libxml2」を橋渡しとして使ってきた。

MicrosoftのXML処理コンポーネントMSXMLをWineで再現するのにlibxml2を使う構造は、Windowsとの完全な互換性の妨げになっていた。libxml2とWindowsのXML処理は挙動が完全には一致せず、XMLを多用するアプリで細かな不具合が出やすかった。

Wine 11.7はこの問題に正面から取り組み始め、libxml2に依存しないMSXMLの再実装に着手した。まだ完成ではない。それでも、この方向転換が意味することは大きい。

WindowsのアプリをLinux上で「なんとなく動かす」から「きちんと動かす」に変えるには、こういう地味な再実装の積み重ねが欠かせない。

VBScript修正35件、ゲームから業務アプリまで

今回の目に見えやすい成果が、35件のバグ修正だ。この2週間で積み上げられた修正のかなりの部分が、VBScript関連に集中している。

VBScriptはすでに主流から退いた技術だが、古いWindowsアプリや業務システムでは今も現役だ。パース処理、制御フロー、定数、辞書操作、行継続、split処理と、実際の利用シーンで躓きやすいポイントが丁寧に修正されている。

具体的には、ABBYY FineReader 12 Professional、VOCALOID6、SongbookPro、Fade In Pro、Kakaowork、Kinco Dtoolsでの動作が改善されている。ゲームではMapleStory World、1997年版Stratego、Act of War: Direct Action、FalsusのデモといったタイトルでWineとの相性が改善した。

古い業務アプリやゲームのために長年パッチを当て続けてきたWineらしい、愚直で誠実な修正リストだ。

Wineバグ修正は毎回「知っている人だけわかる」タイトルが多いが、それこそが実際に使われているアプリの現実でもある。

サウンドと映像、実用面の底上げ

地味な変更に見えるが、DirectSoundの7.1チャンネル対応ゲームユーザーには見逃せない。

7.1スピーカー構成に対応したことで、サラウンドシステムを持っているLinuxゲーマーはより広がりのある音響でゲームを楽しめるようになる。加えてD3DXではSRGBフィルターのサポートが追加されており、映像面でも前進がある。

低レベルな修正としては、大容量ファイルの処理改善、HTTPレスポンスの挙動修正、HIDデバイスのレポート処理など地道な項目が並ぶ。目立たないが、特定の環境でWineが突然止まる原因になりやすい部分だ。Wine新規作成時のWindowsバージョンがデフォルトでWindows 10になるよう修正されたことも、実際の利用に直結する変更のひとつだ。

「互換性レイヤー」の限界に挑み続ける意味

Wine 11系は2026年1月にスタートし、約2週間ごとにリリースが続いている。Wine 12は2027年初頭が見込まれており、11.7はその道のりの途中にある。

ValveProtonSteamLinuxゲーム互換レイヤー)とはアプローチが異なるが、アップストリームのWineが着実に地力を上げていくことは、Protonを含むWine派生の全体に波及する。今回のlibxml2依存排除への着手も、VBScript修正の積み上げも、単体では地味に映る。

だが、その積み重ねた先に、LinuxWindowsアプリを使うことへの心理的な壁は確実に下がっていく。

Wine 11.7のソースコードはGitLabで公開済み。各ディストリビューション向けのバイナリパッケージは近日中に公開予定とされている。

長年動かなかったアプリがあるなら、試す価値は十分にある。


参照元

関連記事

Read more

1メガビットDRAM商用化から40年、主役は三度入れ替わった

1メガビットDRAM商用化から40年、主役は三度入れ替わった

40年前の今日、IBMが世界で初めて1メガビットDRAMを商用機に載せた。日本勢が世界シェアの75%を押さえつつあった時代、米国が「まだ先頭にいる」と示したかった一枚のチップだった。 40年前の今日、メガビット時代が開いた 1986年4月18日、IBMが世界で初めて1メガビットのDRAMチップを商用コンピューターに搭載したと報じられた。搭載先は同社のメインフレーム IBM 3090(Sierraシリーズ)。前年に発表されたばかりのフラグシップ機だ。 当時の個人向けPCに積まれていたのは 64キロビット のメモリチップが主流で、日本勢が量産していた最先端も256キロビットにすぎなかった。一気にその4倍の容量を、1.2ミクロンプロセスで実現したのがIBMの新チップだった。 チップは米バーモント州エセックス・ジャンクションの半導体工場で作られた。IBMはそこを強調した。上級副社長のジャック・D・キューラー(Jack D. Kuehler)は、これを「我々の半導体技術における先進性の証」と位置づけた。 東京の工場ではなく、我が社のバーモント工場で作られたチップ。キューラーはその一点

Microsoft Fairwater、前倒し稼働の裏で「Microslop」と呼ばれる現実

Microsoft Fairwater、前倒し稼働の裏で「Microslop」と呼ばれる現実

Microsoft(マイクロソフト)がウィスコンシン州のAIデータセンター「Fairwater」を予定前倒しで稼働させた。しかしナデラCEOのX発表は「Microslop」と揶揄する反応に埋もれ、想定外の温度の批判にさらされている。 単一クラスタに数十万基のBlackwell、前倒し稼働の中身 Fairwaterは315エーカーの敷地に3棟を構えるAI専用施設で、2024年5月に33億ドル(約5,200億円)規模の投資として発表されたプロジェクトだ。2025年9月にはMicrosoftがさらに40億ドルの追加投資を発表し、第2棟の建設計画も走っている。サティア・ナデラ(Satya Nadella)は4月16日のX投稿で「ウィスコンシンのFairwaterが予定より早く稼働する。世界で最も強力なAIデータセンターとして、数十万基のGB200を単一シームレスクラスタに統合する」と明かした。 Our Fairwater datacenter in Wisconsin is going live, ahead of schedule. As the world’s most powe