Subnautica 2の発売元からKRAFTONが消えた
Subnautica 2のSteamストアページから、発売元の「KRAFTON」の名前が跡形もなく消えた。3月の判決から1ヶ月、公式発表のない静かな書き換えが、力関係の逆転を雄弁に物語っている。
Subnautica 2のSteamストアページから、発売元の「KRAFTON」の名前が跡形もなく消えた。3月の判決から1ヶ月、公式発表のない静かな書き換えが、力関係の逆転を雄弁に物語っている。
発売元欄は「Unknown Worlds」単独表記に
2026年4月14日現在、Subnautica 2のSteamストアページを開くと、発売元の欄の小さな異変に気づく。ほんの数週間前まで当たり前のように載っていた「KRAFTON」の4文字が、いまはどこにもない。
開発元にも発売元にも、Unknown Worlds Entertainmentが単独で並ぶだけだ。同じ変更はEpic Games Store、Xboxストアの商品ページでも確認されている。SteamDBのログを見る限り、これは一時的な表示キャッシュの不具合ではなく、ストアのデータそのものが書き換わった結果だ。
ただ、関係が完全に清算されたわけでもない。Steamのフランチャイズ欄には、いまも「Subnautica, KRAFTON, Inc.」の表記が残ったままだ。書類上の親会社関係と、商品ページ上の「誰が売っているのか」は別問題である。
3月の判決が、流れを決定的に変えた
これを偶然の事務処理と見る人は、たぶんいない。先月の出来事を思い出せば、理由は明らかだ。
2026年3月、米デラウェア州衡平裁判所のローリ・W・ウィル副裁判長は、Unknown Worldsの共同創業者ら3人を不当に解雇したとしてKRAFTON側に全面敗訴を言い渡した。
判決文はテッド・ギル氏を「ただちにCEOとして復帰させる」と命じ、KRAFTONに対しては、ギル氏のSteamプラットフォームへのアクセスを直ちに回復するよう釘を刺している。
KRAFTONは買収契約に違反し、正当な理由なく主要従業員を解雇した上で、Unknown Worldsの経営権を不当に掌握した。
これが判決文の核心だ。KRAFTONは「判決には敬意を払いつつも見解を異にする」と声明で反発したが、命令そのものには従わざるを得なかった。そして今、ストアの顔からも名前が外された。
争いの軸は2億5000万ドルの成功報酬
この騒動の背景には、生々しい金の話がある。
2021年10月、KRAFTONは名作水中サバイバル『Subnautica』を生み出したUnknown Worldsを買収した。契約には非公開の買収額とは別に、一定期間内の売上目標達成を条件とする成功報酬、いわゆるアーンアウト条項が盛り込まれていた。
その金額、2億5000万ドル。本日のレート1ドル約159円で換算すると 約398億円 。100人規模のスタジオにとっては、従業員一人ひとりの人生設計が変わるレベルの巨額である。
2025年7月、KRAFTONはギル氏を含む共同創業者3人を突如解雇し、ほぼ同時にSubnautica 2を2026年へ延期した。裁判所が認定したのはこういうことだ。この一連の動きは、アーンアウトの期限である2025年末を意図的に逃すための、計算された手順だった、と。
判決は報酬の期限を2026年9月15日まで延長し、さらに創業者側の選択で2027年3月15日まで延ばせる権利を認めた。
消そうとした債務は、消えるどころか新しい期日を得て戻ってきた。その上で、ストアの顔からも名前が外される事態になっている。この数ヶ月のKRAFTONは、勝ち目の薄い賭けを打ち続けた者が迎える典型的な終盤戦に入っている。
早期アクセスは5月、主導権はギル氏の手に
Subnautica 2は2026年5月の早期アクセス開始を予定している。判決からわずか1ヶ月で、ゲームの運命を握る「いつ、どう出すか」の決定権は、一度は追い出された男の手に再び戻った。
ただし、その発売時期の「発表」自体は、ギル氏の知らないところで進んだと本人は主張する。発売日の告知は本来、大規模なマーケティング活動と一体で演出されるべきもので、その主導権はCEOにあるべきだ。それをKRAFTON側が独断で決めたことは、判決が認めた運営権への明確な侵害にあたる、という言い分である。
KRAFTON側は「ギル氏には独立した判断権がある。我々の発表はそれを妨げるものではない」と応じた。水面下の小競り合いは、早期アクセスの初日まで続きそうな気配だ。
フランチャイズ欄に残る名前が、静かに物語ること
一方で、ストアの「フランチャイズ」欄には、いまもKRAFTONの名が並んでいる。Subnauticaシリーズの権利保有者は、法的にはまだKRAFTONなのだ。
| 項目 | KRAFTON | Unknown Worlds |
|---|---|---|
| スタジオの法人所有 | ○ | × |
| シリーズ権利の保有 | ○ | × |
| ストア発売元表記 | × | ○ |
| CEOの運営権限 | × | ○ |
| 発売日の決定権 | × | ○ |
書類上の所有と、商品上の顔。今回の書き換えは、後者だけを裏返す作業だった。
書類上の所有はKRAFTONのまま。だが、ストアの表層、つまり「誰が売っているのか」はUnknown Worldsが取り戻した。この非対称が、いまの両社の関係を正確に写している。
それでもユーザーがSubnautica 2のページを開いて最初に目にする「誰が売っているのか」からKRAFTONの名前が消えたという事実は、ギル氏にとって象徴的な勝利には違いない。
発売まで、あと1ヶ月。判決の翌月に静かに進められたこの書き換えは、プロジェクトの舵取りが誰の手にあるかを、言葉よりもはっきりと示している。
あとはもう、ゲーム本体が語る番だ。
参照元
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