Claude偽サイトが開発者を狙撃、新種バックドアBeagle拡散

「Claude-Pro Relay」を装う偽サイトclaude-pro[.]comが、新種のWindowsバックドアBeagleを開発者に配布している。ソフォスの解析で、感染チェーンはPlugXと酷似するがペイロードは別物と判明した。

Claude偽サイトが開発者を狙撃、新種バックドアBeagle拡散

「Claude-Pro Relay」を装う偽サイトclaude-pro[.]comが、新種のWindowsバックドアBeagleを開発者に配布している。ソフォスの解析で、感染チェーンはPlugXと酷似するがペイロードは別物と判明した。


Claude Code開発者を狙い撃ちにする偽サイトの正体

claude-pro[.]comというドメインで運営されている偽サイトは、Anthropicの正規Claudeサイトに似せたフォントと配色を使い、開発者向けの「Claude-Pro Relay」と称する高速リレーサービスを売り込んでいる。狙いは明確で、Claude Code開発者にピンポイントで刺さる文言が並ぶ。

ソフォス(Sophos)X-Opsの調査によれば、偽サイトのリンクの大半はトップページへのリダイレクトに留まっており、実態は中身のないハリボテだ。それでも開発者が「もっと速いリレーが欲しい」と感じてダウンロードボタンを押した瞬間、感染が始まる。

ファイルは「Claude-Pro-windows-x64.zip」という約505MBのアーカイブで、正規のSDK配布物のような大きさが油断を誘う。中身はMSIインストーラーで、これがWindowsのスタートアップフォルダーに3つのファイルを置く。

配置されるファイルは3つ。NOVupdate.exeはG DATAアンチウイルス製品の署名済みアップデーターで正規ファイル、avk.dllは攻撃者が差し替えた悪性DLL、NOVupdate.exe.datは暗号化されたペイロードだ。

このトリオがそろうと、署名済みの正規実行ファイルが悪性DLLを「サイドローディング」する典型的な攻撃が成立する。エンドポイント保護ソフトから見れば、走っているのはG DATAの正規バイナリだ。

PlugXのチェーンを流用しながら、最終ペイロードだけが新顔

ここからがソフォスの新発見になる。NOVupdate.exe+avk.dll+暗号化データという三点セットの組み合わせは、2026年2月にLab52がレポートしたPlugXキャンペーンとほぼ一致する。サイドローディングの段取り、暗号化データの復号方式、ファイル名の付け方まで揃っている。

ところが、avk.dllが復号して実行する最終ペイロードはPlugXではなかった。シェルコードはオープンソースのインメモリインジェクターDonutLoaderで、これがメモリ上に展開する本体は、ソフォスが調べた限り公開報告のない新しいバックドアだった。

ソフォスはこのバックドアをBeagleと命名した。2004年にDelphiで書かれたBagle/Beagleワームとは別物で、コードベースもまったく異なる。

Beagleが受け付けるコマンドは8つに限られている。uninstall(自身の削除)、cmd(コマンド実行)、upload(ファイル送信)、download(ファイル取得)、mkdir(ディレクトリ作成)、rename(ファイル名変更)、ls(一覧表示)、rm(ディレクトリ削除)の構成だ。

機能は最小構成だが、シェル実行とファイル送受信が揃っていれば、攻撃者は感染ホストを実質的に手中に収められる。機能を削ぎ落とすほど検出機構の網に引っかかる挙動も減る。

C2は「license[.]claude-pro[.]com」、ブランドを最後まで使い倒す

Beagleが通信するC2サーバーは「license[.]claude-pro[.]com」で、TCP 443番またはUDP 8080番ポートを使う。配布ドメインとC2ドメインを同じ親ドメイン配下に置く構成は、運用者の練度としては高くない部類に入る。

ただし、配布側はCloudflare、C2側はAlibaba Cloudと、ホスティングは別々にしている。テイクダウンの導線を片方で切られても、もう一方が生き残る分散構成だ。

通信の中身はハードコードされたAESキーで暗号化されている(beagle_default_secret_key_12345!)。パケットごとに16バイトのランダムIVを生成する作りで、回線を流れる通信は通常のHTTPSと見分けがつきにくい。

Malwarebytesがサンドボックス上で観察した挙動では、NOVUpdate.exeは実行からわずか22秒で C2サーバー(8.217.190.58、Alibaba Cloud帯)への最初のアウトバウンド接続を確立した。そして偽インストーラーは、本物のClaudeアプリケーションを「C:\Program Files (x86)\Anthropic\Claude\Cluade\」というフォルダーに展開する。Anthropicの綴りを真似ながら「Claude」を「Cluade」とタイプミスしている点は、唯一の見分けどころと言える。


同じ部品で別のキャンペーンも進行中

VirusTotalで同じXOR鍵を使う検体を遡ると、2026年2月から4月にかけて複数のサンプルが提出されていた。ソフォスの解析では、これらは決して使い捨てではなく、運用者が同じコードベースを継続的に使い回している。

4月の検体は2種類確認されている。1つ目は「Claude-Pro-Relay-Technical-Overview.zip」名義で、licence[.]claude-pro[.]comに接続しており本稿のサンプルとほぼ同型だ。2つ目は「GolddTV.msi」名義で、update-trellix[.]comに接続する。同じIP(192.252.186.62)にはupdate-crowdstrike[.]comとupdate-sentinelone[.]comもホストされている。

同じ運用者が、Claude偽装のほかにCrowdStrike・SentinelOne・Trellixといった大手セキュリティベンダーの「アップデート」を装う並走するキャンペーンを持つ可能性が高い。3月のサンプルではAdaptixC2のシェルコードが確認されており、感染後に異なるC2フレームワークを呼び込む選択肢も用意していた。

ルアー(誘い文句)を取り換えながら同じインフラを使い回す手口で、開発者向けからセキュリティ管理者向けまで幅広く狙いを変えてくる。

「Claude Codeを速くする」は、開発者の警戒心を解く合言葉になる

このキャンペーンが厄介なのは、対象が開発者である点だ。一般的なフィッシングと違い、コマンドラインで何かをインストールすることが日常のターゲットを相手にしている。MSIインストーラーが起動して何らかの「セットアップ」が走っても、開発者は「そういうものだ」と受け流しがちだ。

しかも「Claude-Pro Relay」というネーミングは開発者の実需を突いている。Claude CodeのAPIレスポンスが時々遅くなることに苛立った経験のある開発者なら、「リレーで高速化できる」と聞けば一度はクリックしてみたくなる。攻撃者は技術コミュニティの実需を読み込んだうえで偽サイトを設計している。

感染確認の手順としては、スタートアップフォルダーにNOVupdate.exe・avk.dll・NOVupdate.exe.datのいずれかが存在するかをまず確認する。さらに「C:\Program Files (x86)\Anthropic\Claude\Cluade\」というスペルミスのあるディレクトリの有無を調べると確実だ。

Anthropicの正規Claudeダウンロードはclaude.comのみで、Anthropicは「Claude-Pro Relay」という製品をリリースしていない。スポンサー検索結果の上位に表示されるリンクを踏む前に、URLを必ず確認すべきだ。

開発者は脆弱なターゲットになりにくいと思われがちだが、技術的に詳しいからこそ「自分は引っかからない」という自信が逆手に取られる。Claude Codeの利便性を高めようとした一手が、ホストへのフルアクセスを攻撃者に渡す結果になりうる。


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