顧客の約64億円を暗号資産ETFに無断投資、8割超を失った葬儀会社

韓国の葬儀積立会社が積立金を無断で暗号資産のレバレッジETFに投じ、投資額の 8割超 を失っていたことが明らかになった。業界全体の43%が、顧客に全額返せない状態にある。

顧客の約64億円を暗号資産ETFに無断投資、8割超を失った葬儀会社

韓国の葬儀積立会社が積立金を無断で暗号資産のレバレッジETFに投じ、投資額の 8割超 を失っていたことが明らかになった。業界全体の43%が、顧客に全額返せない状態にある。


葬儀費用を前払いで集め、その金を暗号資産へ

韓国で「상조(サンジョ)」と呼ばれる葬儀積立サービスは、生前に毎月一定額を積み立て、亡くなった際の葬儀費用に充てる仕組みだ。日本の互助会に近い。長期間にわたって顧客からお金を預かる形になるため、各社はその資金を運用しながら事業を回している。

業界7位の「부모사랑(ブモサラン)」は2025年、顧客から集めた積立金のうち595億ウォン(約64億円)を、暗号資産レバレッジETF に投資した。具体的な投資先は、米国上場の暗号資産関連企業ビットマイン(BitMine Immersion Technologies)の株価に連動する「BMNU(T-REX 2X Long BMNR Daily Target ETF)」。ビットマインは世界最大級のイーサリアム保有企業であり、BMNUはその株価の日次リターンを2倍に増幅する商品だ。

2025年末時点でBMNUの帳簿価格は102億ウォン(約11億円)まで縮小。当初の595億ウォンから 493億ウォン (約53億円)が消えた計算になる。


レバレッジETFが長期保有に向かない理由

BMNUのような レバレッジETF は、「日次リターンの2倍」を目標とする。言葉だけ聞けば単純に聞こえるが、長期で持つほど不利な構造になっている。

「ボラティリティ減衰」と呼ばれる現象がその正体だ。たとえば通常の株が100から80へ下落(−20%)し、翌日に110まで回復(+37.5%)したとする。通常の株ならその日に元値を超えて利益になる。ところがレバレッジETFはこの損益を毎日2倍で累積していくため、下落した日に通常の2倍(−40%)落ち、翌日の回復では+75%になる。100→60→105で終わる。通常株が110まで戻っている一方、レバレッジETFは105にしかならない。

これが1日の値動きで生じる差だ。暗号資産市場のように毎分乱高下を繰り返す対象では、この「1日の誤差」が365日分重なっていく。

BMNUが対象とするビットマインはイーサリアムと連動して動く。暗号資産市場は2025年を通じて下落傾向にあった。「2倍レバレッジ×1年間の保有×暗号資産の乱高下」という条件が重なり、ブモサランの損失は雪だるま式に膨らんだ。


「規制の穴」が業界全体を蝕んでいた

ブモサランは特異な例ではない。国内75社の2025年監査報告書を全数調査したところ、43%(32社) で資産総計が顧客への返還義務額(先受金)を下回っていた。全員が一斉に解約を申し出たら、返すお金が足りない状態だ。

中小業者の中には、顧客から集めた積立金より大株主や関係会社への融資額の方が多い先もある。先受金が5億7000万ウォンしかない会社が代表に22億ウォンを貸し付けているケースも確認されている。

なぜこうなるのか。葬儀積立会社は保険会社と似た構造を持っているにもかかわらず、法的には「前払式割賦取引事業者」として分類され、金融当局ではなく 公正取引委員会 の管轄下に置かれている。

保険会社には財務健全性の基準があり、自己資本が不足すれば当局から是正措置を受ける。葬儀積立会社にはそれがない。顧客の積立金について「50%は現預金として保全する」という条件はあるが、残りの50%の運用先を縛る規制はほぼ存在しない。

業界全体で管理されている顧客資金は、10兆ウォン(約1兆700億円)規模とされている。その資金を扱う器に、金融機関並みの規制がかかっていない状態が長年続いてきた。


「問題ない」という説明と、動き出した国会

ブモサランの担当者は、今回の損失を「世界的な市場変動性による短期的な未実現損失」と説明し、「財務的なバッファーで十分に対応できる範囲」と述べた。

報道を受けて、韓国国会では関連法案の審議が始まっている。すでに6本の法案が提出されており、投機的な取引の全面禁止を含む制度改正が検討されている。

何年も後の葬儀のために月々積み立ててきた顧客にとって、その資金が暗号資産のレバレッジ商品に向かっていたという事実は、今回の調査で初めて明らかになった。「未実現損失」と呼ぶかどうかは、誰の立場から数えるかによる。


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