スペイン警察、スペイン語圏最大のマンガ海賊版サイトを摘発

2014年から稼働してきたスペイン語圏最大のマンガ海賊版サイトが、アルメリアでの家宅捜索で幕を閉じた。収益は400万ユーロ超。壁の温度計の中に隠された仮想通貨40万ユーロ分。背後には韓国の著作権団体がいた。

スペイン警察、スペイン語圏最大のマンガ海賊版サイトを摘発

2014年から稼働してきたスペイン語圏最大のマンガ海賊版サイトが、アルメリアでの家宅捜索で幕を閉じた。収益は400万ユーロ超。壁の温度計の中に隠された仮想通貨40万ユーロ分。背後には韓国の著作権団体がいた。


アルメリアの一軒家で終わった「スペイン語圏マンガ海賊版の聖地」

スペイン国家警察(Policía Nacional)は現地時間4月22日、スペイン南部アルメリアでスペイン語圏最大の海賊版マンガサイトを摘発したと発表した。2014年から稼働し、月間数百万のアクセスを集めていたサイトだ。運営に関わった3人が知的財産権侵害の継続犯の容疑で逮捕され、司法当局に送致された。

公式発表ではサイト名は明かされていない。だが、2014年設立・スペイン語圏最大の海賊版マンガサイトという記述は、業界の誰もが知る一つの名前を指している。TuMangaOnline(TMO)、通称ZonaTMOだ。すでに3月18日ごろから接続障害が発生し、主要ドメインzonatmo.comは登録業者によってclienthold(凍結状態)に置かれていた。TorrentFreakが4月17日に「韓国の権利者団体が背後にいる」と報じた件の、正式なスペイン当局による「答え合わせ」が今回の発表だった。

収益400万ユーロ超、広告の大半はポルノ

公式発表によれば、捜査は2025年6月に始まった。違法にマンガを提供するプラットフォームの存在を把握し、調べを進めた結果、スペイン語圏で最大のオンラインマンガ・リポジトリであることが判明した。

運営者は広告で収益を上げていた。特徴的なのは、閲覧・選択・ページめくりのあらゆる操作でポップアップ広告を出現させるモデルだった。膨大なトラフィックを広告インプレッションに変換する仕組みで、累計で400万ユーロ(約7億5000万円)超の収益を生んだ。

ここに深刻な問題がある。

表示されていた広告の大半はポルノ広告であり、利用者の多くが未成年者であったため、重大な社会問題となっていた。

海賊版の著作権侵害という「知的財産の話」に留まらず、未成年者をポルノ広告に晒す導線として機能していたという指摘だ。無料で読める海賊版サイトは、読者が「只より安いものはない」と思った瞬間に、別の形で対価を払わされていた。

壁の温度計に隠された仮想通貨40万ユーロ

家宅捜索の現場で発見されたものが、この事件の異様さを物語る。アルメリア市内の主犯の自宅には、プラットフォーム運営のための複雑な技術インフラが構築されていた。さらに、壁掛け温度計の内部にUSBデバイス2本が押収され、そこには40万ユーロ(約7500万円)超の仮想通貨コールドウォレットが格納されていた。

Policía Nacional

「サイト運営で稼いだ仮想通貨を、室内装飾に偽装して隠す」という発想は、単なる趣味の延長としての海賊版運営者像とはかけ離れている。公式発表によれば、逮捕されたこの人物は後継サイトの開発にも着手していたが、警察介入で立ち上げは阻止された。単に「サイトを閉じさせた」のではなく、次のサイトが生まれる前に止めたことが、今回の摘発の本質的な成果だ。


背後にいた韓国・COA──マンガ海賊版摘発の主役交代

今回の摘発で注目すべきは、スペインの警察が独力で動いたわけではない、という点だ。

COAの広報担当者はTorrentFreakに対し、「ZonaTMO(TuMangaOnline、TMO)は、韓国コンテンツの無許可スペイン語翻訳を配信する主要な違法プラットフォームとして長く認識されていた」と述べている。

TorrentFreakが先行報道した内容によれば、摘発の端緒を作ったのは韓国の著作権海外振興協会(Copyright Overseas Promotion Association、COA)だった。KakaoやWEBTOONといった韓国の大手ウェブトゥーン・出版プラットフォームを代表する団体だ。グローバル著作権執行企業IP-Houseとスペインの法律事務所Santiago Mediano Abogadosを組ませ、数カ月にわたる調査を実施。収集した証拠をスペイン当局に引き渡し、今回の強制捜査に至った。

つまり、スペイン語圏のマンガ・マンファ海賊版サイトを、韓国主導の国際チームが叩いた構図だ。日本の出版業界が主導したBato.to閉鎖(2026年1月)、ACEやUSTR圧力下でのHiAnime停止(2026年3月)に続き、2026年は海賊版サイト閉鎖ラッシュの年として記録されることになる。

興味深いのは、TMO摘発のトリガーを引いたのが日本のマンガではなく、韓国のマンファ・ウェブトゥーンだったことだ。TMOはもともとマンガ(日本の漫画)を主戦場としていたが、後年マンファやマンファ・チノ(中国の漫画)も大量に扱うようになり、韓国コンテンツの無許可翻訳ハブとして機能していた。Kakao・WEBTOON側からすれば、放置できない侵害だった。

「コンテンツの国」が本気を出した時代の合図

TMOの摘発は、単一のサイトが消えた話ではない。2024年時点のDeepSeeの調査では、zonatmo.com単独で2024年11月に推定10億ビューを叩き出していた。SimilarWebのデータでは、ネットワーク全体で2026年3月に5000万ユーザー超を集めていた。トラフィックの大半はメキシコ・チリ・コロンビア・スペインから。これだけの規模のプラットフォームが、Kポップに次ぐ「Kコンテンツ輸出の防衛戦」の一環として摘発された意味は大きい。

COAはTorrentFreakに対し、今回の行動はより広範な取り締まりの一部だと述べ、複数の法域で協調した法的行動を準備していると続けた。つまり、TMO摘発は始まりであり、終わりではない。

日本の出版業界も同じ道を歩んでいる。CODA(コンテンツ海外流通促進機構)がBato.to摘発で見せた執行能力は、今や韓国のCOAと肩を並べる形で動いている。かつて海賊版対策は「追いかけっこ」と揶揄されたが、コンテンツ輸出国が本気で法的リソースを投入する時代に入ったことを、2026年の一連の摘発は示している。

Bato.to(日本のマンガ主体、2026年1月閉鎖)、HiAnime(アニメ主体、2026年3月停止)、TuMangaOnline(スペイン語圏マンガ、2026年4月摘発)。3つの大規模プラットフォームが、それぞれ異なる権利者団体の主導で立て続けに崩された。

ユーザー側が見失いそうになる視点

SNSでは、TMO閉鎖に対する嘆きの声が飛び交っている。「TMOで初めてマンガに触れた」「ラテンアメリカでは公式の価格が高すぎる」「閉鎖は文化への打撃だ」──その心情自体を否定するつもりはない。だが、広告主体の海賊版モデルが未成年者をポルノ広告に晒していた事実は、この話題の片隅に置かれがちだ。

「無料で読めるマンガ」の対価は、読者自身が払っていないようで、別の形で支払われていた。読者の年齢層を考えれば、それは読者の保護者や社会が払っていたと言い換えてもいい。権利者保護の話だけでは見えない、もう一つの論点がここにある。

スペイン語圏のマンガ市場には、依然として公式の流通・翻訳・価格設定の課題がある。TMOを崩すだけでは、需要は別の海賊版サイトに流れる。現に、公式発表直後から後継を名乗る別ドメインが既に稼働しているという報道もある。本当の勝負は、合法的な選択肢がどれだけ届くかにかかっている。

壁の温度計から発掘された40万ユーロの仮想通貨は、「海賊版は趣味の延長」という幻想を終わらせた。これは、組織的な金融犯罪の隣接領域に入った話だ。


参照元

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