Linux 7.1、i486削除コードが正式マージ──反対ゼロ

予告通り、トーバルズがi486サポートの削除コードをLinux 7.1にマージした。4年間の議論に、ついに終止符が打たれた。反対意見はゼロだった。

Linux 7.1、i486削除コードが正式マージ──反対ゼロ

予告通り、トーバルズがi486サポートの削除コードをLinux 7.1にマージした。4年間の議論に、ついに終止符が打たれた。反対意見はゼロだった。


「予定」が「確定」に変わった日

Linux 7.1のマージウィンドウが開いた2026年4月14日(米国東部時間)、リーナス・トーバルズLinus Torvalds)がx86/platformブランチのプルリクエストを受け入れ、i486 CPUサポートの削除がメインラインカーネルに正式にマージされた。

今月初旬、インゴ・モルナー(Ingo Molnar)のパッチがtip/tip.gitの開発ブランチに投入された時点では、まだ「提出される見込み」という段階だった。マージウィンドウの通過はトーバルズの判断次第であり、確定ではなかったのだ。

結果は拍子抜けするほどあっさりしていた。ノスタルジーも、反対意見も、トーバルズの手を止めるものは何もなく、反対ゼロで決着がついた。

削除されたのはCONFIG_M486SX、CONFIG_M486、CONFIG_MELANの3つのKconfigビルドオプションだ。これにより、Linux 7.1以降のカーネルでi486互換イメージをビルドすることは不可能になる。

段階的廃止の「第一幕」が終わった

今回のマージで消えたのは、あくまでビルドオプションだけだ。i486をターゲットにしたカーネルイメージが作れなくなったという意味であり、ソースコード内のi486互換コードそのものはまだ残っている。

モルナーの計画では、苦情が出なければLinux 7.2以降で実際のi486サポートコードを本格的に除去する。ソフトウェアFPUエミュレーションライブラリやCMPXCHG8Bのエミュレーション機構が対象だ。2025年のRFCでは約80ファイル・ 1万4,100行 の削除が見積もられていた。

つまり今回は「入口を閉じた」段階であり、「中身を片付ける」作業はこれからになる。苦情が来る可能性はどうか。正直なところ、ゼロに近いだろう。既知のLinuxディストリビューションでi486カーネルを出荷しているベンダーは存在しない。

同時にマージされた「地味だが有用な」変更

i486の退場劇に注目が集まるが、同じx86/platformのプルリクエストには、もう一つ実用的な変更が含まれていた。

AMD ZenシステムにおいてAGESAバージョンカーネルログに出力されるようになったのだ。AGESA(AMD Generic Encapsulated Software Architecture)は、AMDプラットフォームのBIOS初期化を担うファームウェアライブラリで、マザーボードのBIOSアップデートでよく目にする「AGESA 1.2.0.2a」のような文字列の正体がこれにあたる。

とくにRyzenプラットフォームでは、AGESAの更新でC6ステートの安定性やメモリ互換性が大きく変わる。バージョンの違いが不安定性の原因になることが少なくない。

これまでLinux上でAGESAバージョンを確認するには、dmidecodeコマンドやBIOS画面を直接見る必要があった。Linux 7.1以降はdmesg | grep AGESAの一行で済む。

トラブルシューティングの現場では、AGESAバージョンの違いが不安定性の原因になることが少なくない。とくにRyzenプラットフォームでは、AGESAの更新でC6ステートの安定性やメモリ互換性が大きく変わる。地味だが、AMD環境のデバッグ効率を確実に上げる改善だと思う。

コミュニティの反応──寂しさより安堵

Phoronixのフォーラムでは、前回の「予定」報道時から議論が続いていた。正式マージ後の反応を見ると、感傷よりも合理性を支持する声が圧倒的だ。

i486は良い時代を過ごした。でも退場の時だ」というユーザーの言葉が象徴的だろう。NetBSDがi486をまだサポートしていることに触れ、「レトロハードウェア勢にはそっちがある」と提案する声もあった。32ビットの受け皿は、Linuxの外にも存在する。

一方で、あるユーザーはFPGAベースのao486コアや産業用組み込みシステムの存在を指摘し、「まったく誰もいないわけではない」と反論している。ただし、そうしたユースケースでもLTSカーネルで十分対応可能であり、最新カーネルを必要とする理由はほぼないという点では一致していた。

興味深いのは「i486の次は何か」という議論だ。i686以前のCPUサポート、BIOSブートパスのUEFI一本化、さらにはFirefoxがすでに32ビットx86 Linuxサポートを終了していることなど、レガシーアーキテクチャの「底上げ」は複数の方向で進んでいる。

2012年のi386、2026年のi486、次は?

2012年のLinux 3.8でi386サポートが廃止されたとき、削除されたのは24ファイル・425行だった。今回のi486は、最終的に80ファイル・1万4,100行に達する見込みだ。カーネルが大きくなった分、レガシーコードの負債も膨らんでいたことがわかる。

i386廃止からi486廃止まで 14年。このペースで考えれば、次のターゲットがすぐに来るわけではない。だが、カーネルの「最低ライン」が上がり続けていることは確かだ。32ビットx86そのものの将来も、いずれ同じ議論の俎上に載るだろう。

i486Kconfigオプションがソースツリーから消えても、1989年にこのチップが確立したオンチップFPUとパイプライン実行の設計思想は、今日出荷されるすべてのx86プロセッサに息づいている。コードは消える。設計は残る。


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