DLSS Enablerがx5/x6解放、RTX 40も対象

NVIDIAがRTX 50シリーズ専用としてきたマルチフレーム生成のx5/x6モードが、有志ツール「DLSS Enabler」の最新版でRTX 40や他社GPUでも動くようになった。囲い込みが、また外側から開かれている。

DLSS Enablerがx5/x6解放、RTX 40も対象
DLSS Enabler

NVIDIARTX 50シリーズ専用としてきたマルチフレーム生成のx5/x6モードが、有志ツール「DLSS Enabler」の最新版でRTX 40や他社GPUでも動くようになった。囲い込みが、また外側から開かれている。


RTX 50専用という壁が崩れる

NVIDIADLSS 4.5のDynamic Multi Frame Generationと6X倍率を、RTX 50シリーズ専用として4月上旬にNVIDIAアプリ経由で正式配信した。GeForce Game Ready Driver 595.97以降が必須で、対応表ではRTX 40が明確に「非対応」側に置かれている。CES 2026で 4K 240Hzパストレーシングを最大 35% 高速化する機能としてアピールされたが、恩恵を受けられるのは最新GPUの所有者だけという建前だった。

その建前は、わずか数日で有志の手によって形骸化した。

DLSS Enablerのバージョン 4.5.0.0 が4月14日に公開され、チェンジログには「MFG x5とx6モードをサポート」と明記されている。開発者の Artur Graniszewski 氏は、ゲーム側のStreamline 2.11ファイルへの更新を前提条件に挙げているが、条件さえ満たせばRTX 40はもちろん、AMDRadeonIntelのArcでも動作する。DirectX 12対応GPUであれば、世代もメーカーも問わない。

NVIDIAが「専用機能」と謳ったものが、なぜサードパーティで再現できてしまうのか。答えは技術の出自にある。

DLSSを使わないDLSS風マルチフレーム生成

ここが今回の話の面白いところだ。DLSS EnablerのMFG x5/x6は、名前こそDLSSの系譜にあるが、中身は AMDのFSR3ベース だ。チェンジログでは、非対応GPUは引き続きOptiScaler経由のFSRベースのフレーム生成パスに依存すると明記されており、FSR 3.0から3.1への移行や、対応GPU向けのDP4A改良も同時に進んでいる。

つまりこのツールは、NVIDIAのネイティブ実装を非RTX 50ハードで無理やり動かしているのではない。AMDが公開したオープンソースのフレーム補間コードを改造し、1フレームにつき複数の中間フレームを生成するようにしたうえで、NVIDIAのStreamlineフレームワーク(ゲーム側がMFG機能を呼び出す入口)に接続している。ネイティブDLSSG Multi-Frame Generationは依然としてRTX 50専用のままで、それ以外のGPUは別の経路でフレームを増やしているわけだ。

OptiScalerやNukem modsの隆盛は、ゲーマー向けの非公式ツールが「より作りやすく、より直感的」な方向へと進化してきた証拠でもある。ただし、これらのツールはオンライン対戦では依然として推奨されない。ゲームファイルの改変を伴うためだ。

ここにひとつの皮肉がある。DLSSの看板を掲げながら、中核部分は ライバルの技術 で動いている。NVIDIAが「ハードウェア固有の機能」として売っているものの境界線が、ソフトウェアレベルではすでに曖昧になっているということだ。

RTX 4090という「逆転の一手」

このツールが特に刺さるのは、前世代フラッグシップの所有者だろう。RTX 4090は今でも多くのゲームRTX 5080を上回るベース性能を持つ。ベースフレームレートが高いほどフレーム生成の品質は上がるため、RTX 4090でx5やx6を走らせれば、RTX 50シリーズの下位モデルよりも滑らかな映像を叩き出せる可能性がある。

実際、Crimson DesertのようなパストレーシングをフルオンにしたタイトルでRTX 4090にMFG x5を適用すると、220fpsを超えるという報告がある。ゲームベンチマークの世界で「壊れた数字」と呼ばれる領域だ。もちろん中間フレームはすべてFSRベースの補間なので、ネイティブな画質と同等ではない。だが、数字の上では確実に映る。

ただし注意点もある。基本となる実フレームレートが低すぎると、補間アーティファクトが目立つ。開発者やテスターが目安として挙げているのはベース40〜50fps以上という水準だ。20fpsの状態でx6を有効にしても、得られるのはノイズだらけの「なにか」でしかない。フレーム生成は、足りないものを生み出す魔法ではなく、十分にあるものをさらに滑らかにする研磨機に近い。

対応タイトルにはCrimson Desertのほか、Resident Evil Requiem、Samsonなどが挙がっている。DLSS 4をネイティブサポートする比較的新しいタイトル群だ。

NVIDIAの囲い込みと、それを崩す力学

今回の件で見えてくるのは、GPUメーカーによるハードウェア差別化戦略と、それを回避しようとするコミュニティの力関係だ。NVIDIADLSS 4、DLSS 4.5、そしてMulti-Frame Generationをそれぞれ特定世代に紐付けることで、新GPUの購入インセンティブを作ってきた。「最新機能が欲しければ新製品を買え」という王道の戦略だ。

だが、その機能の中核がソフトウェアである以上、外部からの再現や迂回は避けられない。OptiScaler、Nukem mods、そしてDLSS Enablerといったツール群は、ここ1年ほどで急速に洗練されてきた。公式の立場からは「非推奨」「オンラインでは使うな」という警告が出続けているが、 オフラインのシングルプレイ 用途では、これらを使わない理由を探すほうが難しくなりつつある。

AMDのRDNA 4にはINT8を用いたFSR 4が実装されているが、AMDは今のところこれをRadeon RX 9000シリーズに限定している。DLSS Enablerのようなツールは、少なくともユーザーが似た技術を試す道を残している。

今後の焦点はIntelの動きだろう。DP4Aベースのクロスベンダー対応版が出てくれば、GPU業界のソフトウェア機能を巡る景色は大きく変わる。ただしそこには素朴な疑問が残る。競合であるNVIDIAAMDのGPUが使える機能を、なぜIntelが率先して提供するのか。それがビジネスとして成立するシナリオを、まだ誰もきれいに描けていない。

「専用」という言葉の賞味期限

RTX 50シリーズの発売から約1年。フレーム生成の倍率は2Xから6Xまで、世代の壁を越えて広がってしまった。DLSS Enablerが完璧な代替になるわけではないし、ネイティブ実装の品質や遅延には及ばない。だが、「専用」という言葉がどんどん短命になっている事実は動かせない。

技術は囲い込まれた瞬間から、外側で似たものが作られ始める。これはGPUに限らず、ソフトウェアの歴史そのものが何度も証明してきたことだ。

ユーザーにとっての選択肢が増えることは、基本的に良いことだ。ただしその選択肢は、公式のサポートの外側にある。自己責任の領域に踏み込む覚悟と、安定を取るか性能を取るかの判断は、ユーザー自身に委ねられる。NVIDIAが次に引くラインがどこになるのか、それとも境界線そのものが意味を失っていくのか。見届ける価値のある攻防が、またひとつ始まっている。


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