OpenAI、GPT-5.6を限定公開。Mythos級のサイバー能力
OpenAIは6月26日、次世代モデルGPT-5.6シリーズを限定プレビューとして公開した。昨日報じた米政府の事前介入を受けた段階的リリースだ。ただしOpenAIは発表と同時に、政府の承認プロセスそのものに異議を唱えている。
Mythos Previewと並ぶ、トークン3分の1
GPT-5.6シリーズは、フラグシップのSol、日常業務向けのTerra、高速・低価格のLunaという3つのモデルで構成される。命名体系も変わり、世代番号(5.6)とティア名(Sol・Terra・Luna)を分離した。各ティアは独立したペースで更新される。
最も注目すべき数字はサイバーセキュリティだ。ExploitBenchは攻撃能力をクラッシュからコード実行まで16項目のフラグで段階的に測る。SolはここでAnthropicのMythos Previewに匹敵するスコアを記録した。しかも出力トークン数は約3分の1で済んでいる。
ExploitGymはUCバークレーの研究者がOpenAIや他のフロンティアラボと共同で構築したベンチマークだ。ここでもSol・Terra・Lunaの全モデルが、推論時間を増やすほどサイバー能力が向上する傾向を示した。
コーディングでもSolは既存モデルを上回る。CLIでの実務的なワークフロー89タスクを測定するTerminal-Bench 2.1で88.8%を記録し、GPT-5.5の88.0%を超えた。OpenAIの測定ではClaude Mythos 5の84.3%を引き離している。複数のサブエージェントに作業を分割するUltraモードを使ったSol Ultraでは91.9%に達した。
ゲノミクスと定量生物学の分析能力を測るGeneBench v1では、GPT-5.5より少ないトークンで高いスコアを達成した。
Criticalには達していない
Solのサイバー能力はOpenAIのPreparedness Frameworkで「High」に分類された。Criticalではない。Criticalとは、堅牢に防御された実世界の多数のシステムに対し、あらゆる深刻度のゼロデイ脆弱性を自律的に発見・攻略できるとOpenAIが定義した水準だ。
Solは、ChromiumとFirefoxに対する評価でバグの発見とエクスプロイトの構成要素の特定まではできたが、自律的にフルチェーンのエクスプロイトを完成させるには至らなかった。Terra・Lunaもサイバーセキュリティと生物・化学の両領域でHighに分類されている。
この「Highだが、Criticalではない」という評価は、GPT-5.5とまったく同じだ。ただしOpenAI自身が認めているとおり、ベンチマーク上の閾値では、他のツールとの組み合わせや多段階の攻撃チェーンなど実世界の使われ方を捉えきれない。
70万GPU時間の自動レッドチーミング
GPT-5.6のセーフガードは、OpenAIがこれまでに構築した中で最も層が厚い。
モデル自体が危険な要求を拒否するよう訓練してあるだけではない。出力の生成中にリアルタイムで分類器が動作し、サイバーや生物学的な悪用に関わる出力を検知すると、より大きな推論モデルが会話全体の文脈を審査する。問題があれば出力はユーザーに届かない。
OpenAIは汎用的なジェイルブレイク(特定のプロンプトだけでなく、多くの文脈で機能する攻撃パターン)の発見に焦点を当て、自動レッドチーミングに70万A100相当のGPU時間を投じた。人間の専門家によるレッドチーミングも並行して実施されており、プレビュー期間中も継続される。
Fable 5の半額
API価格は100万トークンあたり、Solが入力5ドル・出力30ドル。GPT-5.5と同額だ。Terraは入力2.5ドル・出力15ドルで、OpenAIによればGPT-5.5と同等の性能を半額で提供する。Lunaは入力1ドル・出力6ドルになる。
Anthropicの(現在アクセス停止中の)Fable 5は入力10ドル・出力50ドルだった。Solの入力価格はその半額にあたる。
| モデル | 入力 | 出力 |
|---|---|---|
| GPT-5.6 Sol | $5 | $30 |
| GPT-5.6 Terra | $2.50 | $15 |
| GPT-5.6 Luna | $1 | $6 |
| GPT-5.5 | $5 | $30 |
| Fable 5 | $10 | $50 |
プロンプトキャッシュの仕組みも変わった。キャッシュの書き込みには通常入力価格の1.25倍が課金されるが、キャッシュの読み取りは90%引きになる。最低キャッシュ保持時間は30分で、明示的なキャッシュブレークポイントの設定にも対応した。
7月には、AIチップメーカーのセレブラスのハードウェア上でSolを提供する計画も発表された。推論速度は毎秒最大750トークンで、選ばれた顧客から順次アクセスが開かれる。
政府のプロセスは長期的にあるべき姿ではない
OpenAIは公式ブログで、政府の事前承認プロセスについて「このような政府によるアクセスプロセスが長期的な標準になるべきではないと考えている」と記した。ユーザー、開発者、サイバー防御者、グローバルパートナーから最良のツールを遠ざけてしまうとの理由だ。
そのうえで、現時点では6月2日の大統領令に基づくサイバーAIの評価枠組みが策定されるまでの短期的措置として、政府と協力する道を選んだと説明している。大統領令は署名から30日以内(つまり7月2日までに)「対象フロンティアモデル」の分類プロセスを確立するよう求めている。
約20社のパートナーに限定されたプレビューはAPIとCodexを通じて提供されており、ChatGPTや一般APIへの展開は「近い将来」としか案内されていない。数週間以内のより広範な提供を目標としているとOpenAIは述べているが、具体的な日付は示されなかった。
参照元: OpenAI公式 - Previewing GPT-5.6 Sol: a next-generation model