PCIe 8.0ドラフト0.5が公開、銅は限界に近づいている

PCI-SIGがPCIe 8.0仕様ドラフト0.5を会員企業に公開した。x16構成で双方向1 TB/sの帯域目標は維持されたが、注目すべきは別の一文だ。コネクタ技術が「評価中」と記された。

PCIe 8.0ドラフト0.5が公開、銅は限界に近づいている

PCI-SIGがPCIe 8.0仕様ドラフト0.5を会員企業に公開した。x16構成で双方向1 TB/sの帯域目標は維持されたが、注目すべきは別の一文だ。コネクタ技術が「評価中」と記された。


1 TB/sという数字よりも重要なこと

PCI-SIGが米国時間5月6日、PCIe 8.0仕様のドラフト0.5を会員企業に公開した。データ転送レートは256 GT/s、x16構成で双方向最大1 TB/sという、PCIe 7.0の倍の帯域を維持する。最終仕様の批准は2028年が予定されている。

PCI-SIG
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ドラフト0.5は単なる中間版ではない。最初の本格ドラフトであり、アーキテクチャの主要な要素、つまり電気的特性、論理層、コンプライアンス、ソフトウェアをすべて網羅し、概念目標と仕組みをこの段階でほぼ固める。AMD、Intel、NVIDIAをはじめとするハードウェア設計者やIP/PHYベンダーが、本格的なプロトタイプ作業に着手できる成熟度に達したという意味だ。

PCI-SIGの開発フローでは、ドラフト0.3でコンセプトを示し、0.5で全要件を網羅し、0.7で機能を凍結する。0.5は機能追加が許される最後の段階であり、ここから先は微調整しか入らない。つまりPCIe 8.0の骨格は、もう動かない。

PCIe 7.0が会員向けに正式リリースされたのは2025年6月。そこから1年も経たないうちに次世代のドラフトが姿を現したことになる。PCI-SIGが3年ごとに帯域を倍増させるという伝統的なペースを、AI需要の圧力下でも崩していない事実は素直に評価していい。

PCI-SIG社長兼会長のアル・ヤネス(Al Yanes)氏は、PCIe 8.0アナウンス時に「3年ごとに帯域を倍にする伝統」を維持すると強調していた。AI需要の急拡大という追い風はあるとはいえ、規格策定スピードがそれに追従できている事実は注目に値する。

歴代の世代を並べると、その倍々ペースの実態が見えてくる。

・PCIe 5.0(2019年): 32 GT/s、x16で64 GB/s片方向
・PCIe 6.0(2022年): 64 GT/s、x16で128 GB/s片方向
・PCIe 7.0(2025年): 128 GT/s、x16で256 GB/s片方向
・PCIe 8.0(2028年予定): 256 GT/s、x16で512 GB/s片方向

「評価中」の二文字が意味するもの

ドラフト0.5の発表で、技術メディアが揃って取り上げたのは速度ではない。新しいコネクタ技術の評価という一文だった。

これは普通のロードマップ記述ではない。Tom's Hardwareは、ロスバジェット、クロストーク、反射といった電気特性の制約がPCIe 5.0と6.0の時点ですでに深刻な課題になっており、256 GT/sのPCIe 8.0では悪夢に変わると分析している。銅ベースの規格でこの転送レートに達したものはこれまで存在しない。エッジコネクタとマザーボード上の配線という古典的な構成では、過剰な電力(イコライザ用)か遅延(FEC用)を払わなければ信号品質が確保できなくなる可能性がある。

PAM4(4値パルス振幅変調)とFEC(Forward Error Correction、前方誤り訂正)、Flit Modeエンコードという3点セットはPCIe 6.0から続く設計だ。これらを維持しつつ256 GT/sを実現するには、変調方式以外の場所で物理層を見直すしかない。

つまり、PCIe 8.0は「銅配線で作る最後のメインストリームPCIe」になるかもしれない。

後方互換性という縛り

ただし、PCI-SIGは後方互換性の維持を明言している。PCIeはマザーボード上のスロット形状を含めて、約20年にわたり拡張カード市場を支えてきた。これを根本から変えれば、エコシステム全体を巻き込む大手術になる。だから劇的なコネクタ変更は当面期待できない。

代わりに考えられるのは、スロットの素材や公差を見直す、配線距離をさらに短縮する、リンクあたりのリドライバ数を増やすといった漸進的な対応だろう。それでも、いつかは無理が来る。

なお、Phoronixのブリーフィング報告によれば、PCIe 8.0は新技術によって消費電力のさらなる削減も狙っている。帯域を倍にしながら電力を抑え込むという課題は、コネクタ問題と表裏一体の難題だ。

CopprLinkと光の世界

PCI-SIGがすでに用意している「逃げ場」が、ケーブル規格のCopprLinkと、開発中の光インターコネクトだ。

CopprLinkはマザーボード上の銅配線が長距離で信号を保てなくなった現実への回答として、2024年に内部・外部ケーブル規格として登場した。現在はPCIe 5.0と6.0をサポートし、PCIe 7.0と8.0への対応も計画されている。CPUからアクセラレータへ、CPUからストレージへといった経路を、もはやマザーボード上の短い配線では引けない時代に入っている証左だ。

光ファイバ側の動きも進んでいる。PCI-SIGは2025年6月にPCIe 6.4と7.0向けのOptical Aware Retimer ECN(光対応リタイマーのエンジニアリング変更通知)を公開しており、PCIe 8.0でも光関連の更新が予定されている。

ServeTheHomeが指摘するように、信号到達距離は信号速度の上昇とともに困難さを増しており、光PCIeの重要性が高まっている。MicrochipはQSFP56-DDを使ったPCIe Gen5 x16の伝送デモを公開しており、キオクシア、AIO Core、京セラの3社は光経由のPCIe Gen5対応SSDを共同開発している。デモから標準化への距離は、思ったより短いのかもしれない。

現状のPCIeは、CPU、GPU、アクセラレータ、メモリ拡張、ストレージ、ネットワーク機器を結ぶ主要I/Oファブリックの座にある。AIプラットフォームが拡大するなかで、PCI-SIGは高速化に加えて非順序I/OやMultiLinkといった機能でレイテンシと帯域の両面に対応しようとしている。

コンシューマには遠い話、でも無関係ではない

「PCIe 8.0は2028年の規格で、コンシューマPCに来るのは何年も先だろう」。その見方は正しい。実際、コンシューマ向けマザーボードはまだPCIe 5.0が最先端で、PCIe 6.0すらほぼデータセンター専用だ。

しかしPCIeの物理層が変わるなら、その波はいずれコンシューマにも届く。GPU、SSD、Wi-Fiカード、サウンドカードといった拡張カードの設計思想全体が、20年支えてきたエッジコネクタを前提にできなくなる時代が、ぼんやりと見え始めている。「評価中」の3文字が指しているのは、そういう遠くて近い未来だ。

ServeTheHomeによれば、ドラフト0.5は予定より前倒しで完成したという。スケジュールは順調そのものだ。3年ごとの倍々ペースを銅線でどこまで延長できるかは、いま試されている最中だ。

数字だけ見れば、PCIe 8.0は計画通り進んでいる。コネクタの一文を読むと、PCIeという規格がそろそろ節目を迎えるのが見えてくる。


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