Anthropicが最強AI「Claude Mythos」を誤漏洩——自社認定の「前例なきサイバー脅威」

「安全性第一」を掲げるAnthropicが、自社CMSの設定ミスで未発表の最強モデルを世界に晒した。内部文書が明かしたのは、同社が「他のあらゆるAIのサイバー能力を凌駕する」と評価するほど危険なモデルの存在だった。

Anthropicが最強AI「Claude Mythos」を誤漏洩——自社認定の「前例なきサイバー脅威」

「安全性第一」を掲げるAnthropicが、自社CMSの設定ミスで未発表の最強モデルを世界に晒した。内部文書が明かしたのは、同社が「他のあらゆるAIのサイバー能力を凌駕する」と評価するほど危険なモデルの存在だった。


CMSの設定ミスで約3,000件が公開状態に

今回の漏洩の根本原因は、CMSの「デフォルト公開」という設計仕様にある。Anthropicが使用するコンテンツ管理システムでは、アップロードされたアセットはユーザーが明示的に非公開へ切り替えない限り、誰でもアクセスできる公開URLが自動的に割り当てられる仕組みだ。この設定を見落とした結果、画像・PDF・音声を含む約3,000件のアセットが誰でも検索・閲覧できる状態でインターネット上に放置されていた。

Fortune誌の依頼で公開データを独立評価したLayerX SecurityのAIセキュリティ研究者と、ケンブリッジ大学のサイバーセキュリティ研究者が状況を確認。Fortune誌の通報を受けた翌朝、Anthropicはデータストアへのパブリックアクセスを遮断した。同社はCMSツールの設定問題により下書きコンテンツがアクセス可能になっていたと認め、原因を 「ヒューマンエラー」 と説明している。

クラウドストレージの誤設定は「防ぎやすいが頻発する脆弱性」としてセキュリティ業界では広く知られている。問題は、この種の初歩的な失敗が、国家安全保障にも影響しうるAIを開発する企業で起きた、という事実だ。

Opusを超える新階層——「Claude Mythos」とは何か

漏洩した内部文書が示す最大の発見は、Anthropicがモデル体系を刷新しようとしているという事実だ。現在の同社モデルラインアップは「Opus(最高性能)」「Sonnet(バランス型)」「Haiku(最小・高速)」の3段階で構成されている。

これにOpusをさらに上回る上位ティアとして加わるのが、 「Capybara」 と呼ばれる新階層だ。Opusより「大型で高知能」なモデル層が加わるとともに、コスト面でも大幅に高くなることが示唆されている。

「Claude Mythos」 はその第一弾モデルの正式名称で、ドラフトには「これまで開発したAIモデルの中で群を抜いて最も強力なモデル」と記されている。Claude Opus 4.6と比べてコーディング・学術的推論・サイバーセキュリティのテストで「劇的に高いスコアを記録した」とあり、高コストかつ一般公開の準備は整っていないとも明示されている。

Anthropicの広報担当者は、このモデルについて次のように述べた。

「コーディング、推論、サイバーセキュリティにおいて意義深い進歩を持つ汎用モデルを開発している。その能力の高さを踏まえ、リリースには慎重に取り組んでいる。少数のアーリーアクセス顧客とともにテストを実施しており、これまでに構築した中で最も高性能なモデルだ」

能力の段違いさを自ら認めながらも、リリース時期には言及しなかった。

Anthropicが自ら書いたサイバーリスクの警告

今回の漏洩で最も強烈な印象を残したのは、モデルのベンチマーク数値ではなく、Anthropicが内部文書に書き記した自己評価の言葉だ。

ドラフトには、このモデルが「現時点で他のあらゆるAIモデルをサイバー能力において凌駕している」と記され、「防衛側の努力を遥かに上回るスピードで脆弱性を悪用できるモデルの波を予告している」と続く。 「前例のないサイバーリスク」 という言葉を、Anthropicは他社製品ではなく、自社製品の評価として書いた。

この自己認識を踏まえたリリース戦略として同社が選んだのは「防衛側への先行提供」だ。サイバーセキュリティ組織に限定したアーリーアクセスを先に与え、AI駆動のサイバー攻撃が本格化する前に防衛側がコードベースを強化する時間を確保させるという構想だ。

この戦略を現実の文脈で見ると、危機感の根拠が見えてくる。2025年11月、中国政府と連携した疑いのあるハッキンググループがClaude Codeを使い、テック企業・金融機関・政府機関を含む約30の組織への侵入を試みていた。Anthropicはこれを検知し、10日間の調査ののち関与アカウントを停止・被害組織に通知している。AIを悪用したサイバー攻撃は、すでに現実の被害として記録されている。


「安全性優先」企業が突きつけられた問い

今回のインシデントが露わにしたのは、能力評価の精緻さとオペレーション管理水準のギャップだ。フロンティアAIのリスク審査体制を整え、業界内でも安全性への真剣な姿勢で知られるAnthropicが、未発表の安全評価レポートや製品計画をCMSの初期設定のまま放置していた。

漏洩したキャッシュには、英国のカントリーハウスホテルで予定されている欧州企業CEO向けの招待制リトリート詳細も含まれていた。未発表のClaude機能の体験セッションを組み込んだこのイベントにはCEOのダリオ・アモデイが参加予定で、「欧州で最も影響力のあるビジネスリーダー」が対象の「親密な対話の場」として設計されていた。Anthropicは「過去1年のシリーズイベントの一環」と説明したが、意図せず世界に公開された形になった。

Claude Mythosの正式リリース時期は現時点で公表されていない。防衛側に先手を渡すという戦略は合理的だが、それが機能するためには自社の情報管理が前提として成立していることが必要だ。CMSの設定ミスが、その前提を揺るがした。

「安全性優先」の旗手であることを証明するのは声明ではなく、運用の積み重ねだ——そのことを、今回の流出は静かに問うている。


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