Appleのメモリ「買い占め」戦略が業界を揺るがしている

Appleが市場のモバイルDRAMを片っ端から確保し、競合他社を兵糧攻めにしている──韓国の大信証券が4月15日に公開したレポートが、半導体業界に波紋を広げている。

Appleのメモリ「買い占め」戦略が業界を揺るがしている
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Appleが市場のモバイルDRAMを片っ端から確保し、競合他社を兵糧攻めにしている──韓国の大信証券が4月15日に公開したレポートが、半導体業界に波紋を広げている。


Appleは「買い占め」ているのか

大信証券(Daishin Securities)のアナリスト、リュ・ヒョングン(Ryu Hyung-geun)が本日公開したメモリ市場レポートの核心はシンプルだ。Appleが北米市場の成長停滞期にメモリ不足を逆手に取り、モバイルDRAMを独占的に確保している、という指摘である。

単なる部品調達の話ではない。Appleは2026年のiPhone出荷目標を 2億4000万台 に引き上げたとされ、その製造を支えるために市場に出回るモバイルDRAMを独占的に確保している。Samsungが100%の値上げを提示しても、交渉なしで即座に受諾した──そんな供給チェーン筋の情報が複数のメディアで報じられている。

この戦略の意味を、大信証券のレポートは端的に表現している。

Appleの積極的な調達戦略は、制御できない業界危機を、制御可能な競争武器に変える効果がある。

この構図が意味するのは、メモリを確保できなかった競合メーカーが出荷目標を達成できず、Appleとの差がさらに開くという連鎖だ。実際、Counterpointの調査によれば、2026年第1四半期にAppleは世界スマートフォン出荷台数でシェア 21% を獲得し、第1四半期としては初めて首位に立った。市場全体が6%縮小するなかでの首位だ。

中国メーカーに広がるパニック

レポートが特に注目しているのは、Appleメモリ吸い上げが中国OEMに引き起こした連鎖反応だ。Apple自身が大量に備蓄を進めるのを見た中国のスマートフォンメーカーたちも、負けじとDRAMの買い溜めに走り始めた。これが市場の逼迫をさらに加速させている。

TrendForceのデータが示す現実は厳しい。2026年のスマートフォン生産台数は前年比で少なくとも 10%減 の約11億3500万台に落ち込む見通しだ。特にエントリーモデルを主力とするメーカーへの打撃が大きく、XiaomiやTranssionは2025年第4四半期の段階ですでに生産を絞り始めている。

一方で、2026年第2四半期のモバイルメモリ価格は前四半期比で約 80%上昇 するとレポートは予測する。顧客側は値上げに抵抗しておらず、一部のモバイル顧客は年間契約を高騰した第2四半期価格で確定させ、さらに下半期の購入量を増やそうとしているという。

メモリは一つの市場ではなくなった。戦略的配分の階層構造になった。

Microsoftが「証拠」を出した

このメモリ危機が机上の空論ではないことを、4月13日にMicrosoftが証明した。Surfaceシリーズの全製品を一斉に値上げし、フラッグシップモデルは発売時から最大500ドル(約7万9,700円)も高くなった。12インチSurface Proは799ドルから1,049ドルへ。13.8インチSurface Laptopは999ドルから1,499ドルへ。Microsoftは値上げの理由を「メモリとコンポーネントコストの上昇」と説明している。

皮肉なのは、この値上げによってMicrosoftのPCがAppleMacより割高になったことだ。64GB RAM・1TB SSDの15インチSurface Laptop最上位構成は3,649ドル。同等スペックの16インチMacBook Proは3,299ドル。Appleは自社でチップを設計し、メモリ調達で優位に立ち、しかも価格を据え置いている。メモリ危機競合の価格競争力を削る構図が、まさに今週のSurface値上げで可視化された。

「買い占め」ではない、という反論

ただし、この「戦略的サボタージュ」という見方には異論もある。中国のサプライチェーン関係者として知られるInstant DigitalがWeiboで明確に否定している。「一社がグローバルメモリ供給を買い占めることは不可能だ」というのがその主張だ。

Appleが高値を受け入れた理由は、長い交渉で自社の量産スケジュールが遅延するのを避けるためだった──というのがこの反論の骨子である。2026年にはiPhone 18シリーズに加え、折りたたみiPhoneという大型の新製品が控えている。安定したメモリ供給を確保する実務上の理由は十分にある。

Apple CEO ティム・クックは1月の決算発表で、メモリ価格上昇のマージンへの影響は「最小限」だったと述べたが、2026年第1四半期には「やや影響が大きくなる」と予告していた。

どちらの解釈が正しいかは、おそらく「両方」だろう。Appleが意図的にライバルを締め出そうとしているわけではなくても、巨大な現金準備を背景にした大量調達は、結果として同じ効果を生む。意図と結果の区別は、影響を受けるメーカーにとっては意味をなさない。

メモリは「新しい石油」になった

大信証券のレポートはメモリ市場の構造的な変化も指摘している。HBM4Eのスタック数が当初計画の16層・20層から12層・16層に引き下げられた。I/O速度は15〜16 Gbpsに引き上げられ、従来型DRAMとHBMの変換比率は3:1から最大5:1にまで拡大している。つまり、AI向けHBMの製造がDRAM生産能力をますます侵食しているということだ。

レガシーDRAMDDR4)の不足も深刻化している。SamsungSK HynixMicronの大手3社はSSD用のレガシーDRAMを自社供給できるため、NANDでも構造的優位を得ることになるとレポートは分析する。

Gartnerは2026年末までにDRAMSSDの価格が 合計で130%上昇 し、PCの価格が17%、スマートフォンの価格が13%押し上げられると予測している。IDCは2026年のスマートフォン市場を13%減と見積もり、出荷台数は11億台に落ち込むという。Appleは高価格帯のプレミアム製品に集中しているため影響を吸収できるが、低〜中価格帯のAndroidメーカーにとっては存続に関わる危機になりかねない。

SK Groupの会長チェ・テウォン(Chey Tae-won)は3月のNVIDIA GTC 2026で「ウェーハ不足の解消には最低4〜5年かかる」と述べ、2030年まで供給不足が続くとの見通しを示した。メモリはもはやコモディティではない。誰がどれだけ確保できるかで、製品が作れるかどうかが決まる時代に入った。


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