DisneyがSteamからゲーム29本を無言で消した──その背景

Disneyが再びSteamからクラシックゲームを一斉削除した。今度は15本。1月の14本と合わせて、2026年だけで29本が姿を消している。

DisneyがSteamからゲーム29本を無言で消した──その背景

Disneyが再びSteamからクラシックゲームを一斉削除した。今度は15本。1月の14本と合わせて、2026年だけで29本が姿を消している。


予告なし、説明なし、15本が一夜で消える

4月14日、SteamDBのトラッキングデータに異変が記録された。Disney傘下のタイトル15本が一斉に「Retired(引退)」ステータスに変更されている。発見したのはゲームのディール情報で知られるWario64で、彼の投稿をきっかけに複数のメディアが報じた。

削除されたのは、Star Wars: Dark Forces(1995年オリジナル版)やStar Wars: Rebellion、Outlaws + A Handful of Missions(オリジナル版)といったLucasArts時代の名作から、Disney Princess: My Fairytale AdventureやHigh School Musical 3まで、年代もジャンルもバラバラな15タイトルだ。Pirates of the Caribbean: At World's End、Planet of the Apes: Last Frontier(旧20世紀フォックス名義)、Alice in Wonderland、Chicken Little、Tangled、G-Force、Treasure Planet: Battle of Procyon、Disney Universe、Brave: The Video Game、Boltも含まれている。

Disneyは今回の削除について公式な声明を一切出していない。Valveからのアナウンスもない。

ストアページ自体はまだ残っているが、購入ボタンは消え、「このタイトルはSteamストアで販売されていません」という表示に置き換わっている。すでに購入済みのユーザーはライブラリからダウンロード・プレイが可能だが、 新規購入は不可能 になった。

2026年だけで29本──1月の「第一波」との合流

これは単発の出来事ではない。2026年1月にも14本のDisneyタイトルがSteamとGOGから同時に削除されている。Disney's Hercules、Finding Nemo、Armed and Dangerous、Afterlifeなど、こちらも映画タイアップからLucasArtsのオリジナルIPまで広範だった。

2回の削除を合わせた 累計29本 を見渡すと、一つの傾向が浮かぶ。開発スタジオも発売時期もジャンルもバラバラだということだ。90年代のDOS時代のPCゲームから2010年代のWii向けタイアップまで、まるで「Disney名義で出ていたもの」を片っ端からリストアップしたかのような網羅ぶりになっている。

ライセンス問題で一括削除されるケースは珍しくないが、これらはすべて Disneyが自らパブリッシャー を務めた作品だ。自社IPのライセンスが切れるという理屈は成り立たない。1月の削除ではSteamだけでなくGOGからも同時に消えたタイトルがあり(Armed and Dangerous、Afterlife、Stunt Islandなど)、プラットフォームを問わない「意図的な引き上げ」の色合いが濃い。

Star Wars: Dark Forcesの「消失」が意味すること

今回の削除で特に痛いのは、1995年のStar Wars: Dark Forces(クラシック版)だ。LucasArtsが手がけた初のスター・ウォーズFPSであり、カイル・カターンという象徴的なキャラクターを生んだ作品でもある。

救いがあるとすれば、Nightdive Studiosが2024年にリリースしたリマスター版がSteamとGOGで引き続き購入可能な点だ。Outlawsについても同様にリマスター版が存在する。ただし、オリジナル版にしかない「当時のまま遊ぶ」という体験は、正規の手段ではもう手に入らない。

レトロゲームの保存において、リマスター版が存在することは「オリジナルを消してよい」理由にはならない。原本へのアクセス手段が絶たれるたびに、ゲーム史の一部が正規流通から脱落していく。

Star Wars: Rebellionにいたっては、銀河規模の4Xリアルタイムストラテジーという、スター・ウォーズゲーム史上でもほぼ唯一のスケール感を持つ作品だった。リマスターも後継作も存在しない。正規の購入手段は、 事実上消滅 した。

背景にちらつくEpicとの15億ドル

このタイミングで無視できないのが、DisneyEpic Gamesの関係だ。2024年2月、Disneyは 15億ドル(約2385億円)をEpic Gamesに出資し、Fortniteを基盤とした「ゲームエンターテインメントユニバース」の構築を発表している。

そしてつい数日前、Bloombergが報じた内容がこの文脈に新たな意味を加える。EpicDisneyキャラクターを使ったエクストラクションシューターを開発中で、2026年11月のリリースを目指しているという。Disney、Pixar、Marvel、Star Warsのキャラクターが登場するPvPvEタイトルで、Arc Raidersに近いゲームプレイになるとされている。

Steamからの一斉削除とEpicへの巨額出資。因果関係は証明されていないが、「DisneyPCゲームEpic Games Store独占に移行する布石ではないか」という推測が出るのは自然な流れだろう。もっとも、The Gamerが指摘するように、Dark ForcesとG-Forceが同じコレクションに収まる未来は 想像しにくい 。「コレクション化の前準備」という説には、無理がある。

ただし、BoltやG-ForceのためにEpic Games Storeをインストールするユーザーがどれだけいるかは、別の問題だ。

「デジタルの棚」から消えるということ

Steamでの削除は、ゲームがこの世から消えることとは違う。物理メディアは中古市場に残り、非公式な手段も存在する。だが、正規のデジタルストアから消えるということは、そのゲームを「ふと思い出して、合法的に買って遊ぶ」という最もシンプルな導線が断たれることを意味する。

Disneyはかつて映画でも「ヴォールティング」──限定期間だけ販売し、その後は封印する──という手法を使っていた。ゲームに対しても同じ感覚で棚を整理しているのだとしたら、デジタル時代のゲーム保存にとって厄介な前例になる。

29本の削除に共通するのは 「予告がなかった」 ことだ。最後の購入チャンスすら与えられない。Disneyにとっては売上のわずかな機会損失かもしれないが、ユーザーにとっては選択肢そのものが奪われている。

次にどのタイトルが消えるのかは、Disney以外の誰にもわからない。そしてDisneyは黙ったままだ。


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