Edgeサイドバー廃止に署名活動、Copilotだけが残る

Microsoftが「簡素化」を理由にEdgeのサイドバー機能を段階的に廃止する。Copilotだけは残る。これに納得しないユーザーがChange.orgで撤回を求める署名活動を始めた。

Edgeサイドバー廃止に署名活動、Copilotだけが残る

Microsoftが「簡素化」を理由にEdgeのサイドバー機能を段階的に廃止する。Copilotだけは残る。これに納得しないユーザーがChange.orgで撤回を求める署名活動を始めた。


「簡素化」という説明と、残るCopilot

MicrosoftがEdgeのサイドバー アプリの一覧を廃止する方針を打ち出した。アプリ タワー(App Tower)と呼ばれる、ユーザーが任意でアプリをピン留めできる縦の並び部分だ。公式サポート文書には「Microsoft Edge を簡略化しています」とあり、Microsoft アカウント(MSA)ユーザーから順に廃止が進められる。確定された廃止日は明示されていない。

新しいアプリの追加はすでに不可能で、ピン留め済みのアプリも今後のアップデートで削除されていく。それでもCopilotだけは影響を受けない。同じサポート文書がはっきり言い切っている。「Copilot はこの変更の影響を受けず、改善と強化を続けています」と。

サイドバーは、Edgeの右端からタブを切り替えずにメール・検索・ノート・SNSなどに飛べる小さな起動パネルだ。Edgeを他のChromium系ブラウザと差別化していた数少ない機能のひとつでもある。それが消える。一方、同じサイドバー領域に居座るCopilotは温存される。

「簡素化のために機能を消す」という説明が、Copilotだけを例外扱いした瞬間に、別の意味を持ち始める。

ユーザーが立ち上げた署名活動

廃止方針に対して、Change.orgで「Keep the sidebar and collections in the Microsoft Edge browser」(Microsoft Edgeブラウザのサイドバーとコレクションを残してほしい)と題した署名活動が立ち上がった。本日時点で認証済みの賛同は 79件 。規模としてはまだ小さい。

発信者の主張は短い。「Microsoft Edgeチームへ。ユーザーが愛している機能を消すのは筋が通らない。とても便利で、完璧に動く。しかも、Edgeを他のブラウザと区別する数少ない機能のひとつだ。今のサイドバーとコレクションを残してほしい、消さないでほしい」。

宛先にはMicrosoft España(マイクロソフト・スペイン)とMicrosoft本体が指定されている。スペインから始まった声だが、訴えそのものは英語で書かれており、地理に縛られない。コメント欄には英語圏のユーザーが「サイドバーは毎日使う、自分のスマホUIに似ていて気に入っている」と書き込んでいる。

数十人規模の署名で巨大企業の方針が覆った例は少ない。発信者自身もそれは分かっているはずだ。ただ、声を上げないまま消されるのと、声を上げた事実が記録に残るのとでは、意味がまったく違う。

Change.orgでは、賛同が30人台で目的を達成した署名活動も、500万人規模で結果を出した署名活動もある。署名数そのものより、その数が引き起こす行動が成果を決める、というのがプラットフォーム側の見解だ。

なぜ怒るのか、何を奪われたのか

Microsoftの公式Q&Aフォーラムには、廃止方針への不満が並んでいる。「マイクロソフトは正気を失ったのか。サイドバー機能はとても便利だ。Arcのようなブラウザに対抗するための簡素化はいいが、サイドバーを消すなら自分の作業環境はArcに移す」。「アプリランチャーは毎日使う。Copilotは一度も使っていない。便利で時短になり、作業を楽にする機能を消すのは少しおかしい」。

不満は単純な懐古ではない。サイドバーをワークフローの中心に据えていたユーザーがいる、という事実だ。論文や記事を読みながら、タブ切替なしで横にOutlookやMicrosoft検索を出して使う、という運用は、研究者やライターにとって地味に効く。これが消えると、画面分割を毎回手動でやる作業に戻る。

Edgeは「Copilot専用機」へ近づく。新しいタブのページにはCopilotの入力ボックスがあり、アドレスバーにもCopilotのAI検索が入り込み、右クリックメニューにも「Copilotに聞く」が現れる。ツールバーにもCopilotボタンがある。簡素化を理由にサイドバーを消すなら、なぜAIまわりの増殖から手をつけないのか、という疑問が出てくる。

公平を期すと、すべての見方が否定的なわけではない。Edgeのサイドバーはネイティブ実装からウェブベース実装に切り替わった後、使用頻度が下がったとする観測もある。Microsoftが社内で利用ログを見て、コストに見合わないと判断した可能性は十分にある。問題は、その判断を「簡素化」という言葉で包み、Copilotという例外を設けたところだ。

コレクションも消える、シンプルな構造変化

廃止対象はサイドバーだけではない。Microsoftはすでにコレクション機能の廃止も発表している。Edgeバージョン145(2026年2月12日リリース)から段階的に進み、新規アイテムの追加は不可能になった。MSAユーザーは保存済みのコレクションをBing Saves(bing.com/saves)で参照できる。組織アカウントユーザーはエクスポートで救出する選択肢が用意されている。

コレクションは2020年のChromium版Edge登場と同時に投入された機能で、ウェブページのクリップ・画像保存・ノート追加・他者との共有を1か所で扱える「軽量ワークスペース」として位置づけられていた。買い物リスト、研究メモ、旅行プラン――その用途で使い込んだユーザーは、移行先を自力で探すしかない。

サイドバーとコレクション。どちらもEdgeを「Chromium版Chrome+α」として差別化していた要素だ。Microsoft自身がIE時代からEdgeへの転換期に「ただのChromeではない」と訴えてきた、その「+α」の部分が削られていく。

残るのはCopilotとAI機能群だ。「Edgeはブラウザではなく、Copilotを動かす器」という再定義が静かに進んでいる。

数字の上では好調なEdge

サティア・ナデラ氏は最新の決算説明会で、Edgeが20四半期連続でシェアを伸ばしていると述べた。実際、2026年第1四半期のEdgeのグローバルシェアは全デバイスで約5.4%、デスクトップに限れば13.7%程度。デスクトップではSafariを抜いて2位に立つ場面も出ている。

数字だけ見ると、Microsoftの戦略は機能している。デスクトップで2位の座にいるブラウザが、ユーザーが愛着を持っていた差別化機能を捨ててAI路線に一本化する。これが正解かどうかは、結局シェアが伸び続けるか、ある時点でガクッと落ちるか、で答えが出る。

ただし、シェアの数字は Windowsのデフォルトブラウザ という地位に強く依存している。能動的に「Edgeを選んだ」ユーザーがどれだけいるかは、この数字からは読めない。サイドバーが「Edgeを選ぶ理由」だったユーザーが他のブラウザに移ると、その分は静かに削られていく。

「サイドバーがあるからEdgeに留まっている。Geminiも使っているのに、それでも」「もしこれが本当に実行されたら、自分はBraveに移る。2021年からEdgeをメインブラウザにしてきた。分割表示・サイドバーアプリ・サイドバー検索が理由だ」。フォーラムやSNSでこうした声を見つけるのは難しくない。

機能を消すコストは、すぐには見えない

ソフトウェアの機能を消す判断には、必ず賛否がある。コードベースを軽くし、開発リソースを集中させる効果は確かにある。一方で、消した瞬間にはコストが見えにくいものもある。「この機能のために選んでくれた少数のユーザー」の信頼は、後から取り戻せないからだ。

Microsoftが「簡素化」と言うとき、その言葉がユーザー側の作業環境を指すのか、それともMicrosoft側の保守コストを指すのか。両者は別物だ。今回のサイドバー廃止に関しては、Copilotという例外が設けられた時点で、後者の色合いが濃く見える。

それでもCopilotがすべてのユーザーにとって便利な道具であれば、結果論として「正解の簡素化」になるかもしれない。問題は、Copilotを欲していないユーザーから、Copilotではない便利機能だけを取り上げる構造になっていることだ。

巨大企業が一度決めた方針は、ユーザーフィードバックでは覆らない。これは経験則として正しい。覆らないと分かっていても声を上げる人がいる、という事実は記録される。Edgeのサイドバーは静かに消えるかもしれない。その記録は、次の機能廃止のとき、別の形で参照される。

短い間、ユーザーが愛した機能だった。消した判断が正解だったかどうかは、数年後の四半期決算に書かれる。


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