Bing、Google偽装を1年半続行中

Bing、Google偽装を1年半続行中

Microsoft Edgeで「Google」と検索すると、表示されるのはGoogleそっくりの画面だ。1年半前に炎上したこの手口は、100万ドル懸賞を打ちながら今も止まっていない。


いま起きていること

Microsoft Edgeのアドレスバーに「Google」と打ち込んでも、Google.comには直接飛ばない。代わりにBingが検索を横取りし、Googleのトップページに酷似したUIを表示する。

中央に大きな検索ボックス。その上に、Google Doodleを思わせる無難なイラスト。下には小さな注釈文字。配色も余白の取り方も「らしさ」を演出している。Bingの上に被せたGoogleの皮である。

この手口を最初に指摘したのは2025年1月のWindows Latestだった。当時は世界中の技術メディアが取り上げ、Google Chrome統括のパリサ・タブリズ(Parisa Tabriz)は「これは長年続くトリックの一つだ」と痛烈に批判した。それから1年4か月。Windows Latestは2026年5月12日、同じ手口がいまも生きていることを確認したと報じている。

報告者によれば、Microsoftアカウントにサインインせずに「InPrivate(シークレット)」タブで試したという。サインイン状態だと見え方が少し変わり、Microsoftは入力済みの検索バーの下に二つ目の検索バーを出してくる。どちらにせよ、ユーザーは知らないうちにBingの中に留まる構造だ。

偽装画面が出る条件は、Edge+Bing既定+未サインインの組み合わせ。アドレスバーを注意深く見れば「bing.com」のままだと気付けるが、流し見では区別がつきにくい。

報告者がスクリーンショットで示したのは、まさにこのパターンだった。アドレスバーは確かにBingを示している。ただ、本文側の見た目はGoogleそのものに近い。

Imitation is the sincerest form of flattery, but Microsoft spoofing the Google homepage is another tactic in its long history of tricks to confuse users & limit choice.(模倣は最大の賛辞だと言うが、MicrosoftがGoogleのホームページを偽装するのは、ユーザーを混乱させ選択肢を狭めるという昔ながらの手口の延長だ)

タブリズが2025年1月にX上で書いたこの一文は、いま読み返してもまったく古びていない。1年半経っても状況が変わっていないからだ。


100万ドルを配りながら、競合の顔を被る

奇妙なのは、Microsoftが同時に総額200万ドル規模の懸賞キャンペーンを走らせている点だ。

「Microsoft Rewards Total Prize Drop」と名付けられたこの企画は、2026年3月12日から5月21日までの期間限定で、現金100万ドルとメルセデス・ベンツ3台(各17万ドル相当)を賞品として用意している。応募は無料、ポイントプログラムへの登録が必要だ。対象国には米国・カナダ・英国・ドイツに加えて日本も含まれる。EdgeをデフォルトブラウザにしてBingで検索すること、Rewards拡張機能を入れること、Copilotを使うこと。Microsoftのエコシステム全域に手を伸ばすほど、当選確率が上がる仕組みになっている。

つまりMicrosoftは、片手で100万ドルの小切手を振りながらユーザーを呼び込み、もう片手でGoogleの顔を被って引き留めている。Windows Latestはこの矛盾を、必死さの匂いが漂う散弾銃式の獲得戦略だと切り捨てた。

Microsoftの二面作戦──呼ぶ手と、引き留める手
表の顔──呼び込む
100万ドル懸賞
EdgeをデフォルトにしてBingで検索すれば、現金100万ドル+メルセデス・ベンツ3台が抽選で当たる「Microsoft Rewards Total Prize Drop」を開催中。
2026年3月12日〜5月21日/日本も対象国
裏の顔──引き留める
Google偽装画面
Edgeのアドレスバーで「Google」と検索した未サインインユーザーに、Googleそっくりのトップ画面を見せ続けている。指摘から1年半経っても止めていない。
2025年1月初出→2026年5月12日時点でも継続確認
+ 同時進行 +

筆者の目から見ても、この二面作戦は不思議だ。Microsoftには資金がある。Windowsという世界最大のデスクトップOSがある。Copilotという生成AIの武器もある。正面から殴り合える条件は揃っているのに、なぜ「Googleのフリ」を続けるのか。


数字の上では、Bingは負けていない

実際、Bingの足腰はこの1年半で大きく変わった。

Microsoftの2026年度第3四半期決算(2026年4月29日発表)で、サティア・ナデラCEOはBingの月間アクティブユーザー数が初めて10億の大台に乗ったと明らかにした。Edgeのブラウザシェアは20四半期連続で拡大している。検索広告収益(トラフィック取得コストを除く)は前年同期比12%増。AI事業全体の年換算売上は370億ドル規模に達した。

当社のEdgeブラウザは20四半期連続でシェアを拡大しており、Bingの月間アクティブユーザー数は初めて10億に到達した。

ナデラの発言は、決算資料の中で淡々と読み上げられている。ただし留意点もある。StatCounterの集計では、Edgeの世界シェアは全デバイスで5.79%、デスクトップ単体でも12.75%にとどまる。対するChromeはデスクトップで69%超、全デバイスでも65%を保つ。10億MAUと5%シェアのギャップは、「Windowsの既定設定で流れ着いた低頻度ユーザー」がかなり混じっていることを示唆する。

Bingの10億ユーザーと、市場シェアのギャップ
※ Bing検索シェアおよびEdge/Chromeブラウザシェアは StatCounter GlobalStats の集計値。Bing MAU はMicrosoft FY26 Q3決算(2026年4月29日発表)。

それでも、3年前を思い出してほしい。当時のBingは「Google検索の入り口」程度の存在で、Microsoft自身がジェネレーティブAI統合を「検索における20年で最大の出来事」と煽っていた。あれから3年。Bingは少なくとも数字の上で、AI検索の第二極として可視化されるようになった。


「最大のチャンス」に「最弱の手」を打つ

技術的にBingが本当に追い付いたかどうかは、人によって評価が割れるだろう。だが、構造的なチャンスがいまMicrosoftの側にあるのは確かだ。

Googleは検索結果のトップにAI Overviews(AIによる要約欄)を押し込み、従来の青いリンクへたどり着くまでに何度もスクロールを強いるようになった。Google Discoverの推薦枠やSERPは、YouTube ShortsやスポンサードVideoで占有される傾向が強い。広告と自社サービス送客が、検索の純度を押し下げている。「効率的に情報を取りたい」というユーザーの欲求と、Googleのマネタイズ設計のズレが目に見える形で大きくなっている。

ここでMicrosoftが取るべき姿勢は、たぶん一つしかない。

「うちは騙して連れて来ない。きちんと、いい検索を見せる」。それだけだ。

ところが現実のMicrosoftは、賞金200万ドルでつないだユーザーに、開いた瞬間Googleもどきの画面を見せている。Bing.comのトップ自体も、クリックベイトのカルーセルと派手なバナーで雑然としていて、戻ってきたくなる理由に乏しい。信頼の積み方そのものを取り違えているように見える。

タブリズが2025年初頭に放った皮肉、「新年、新たな最低(New year; new low)」は、2026年5月のいまも刺さり続けている。1年半経っても、Microsoftはこの言葉に対する反論を、製品で示せていない。


競合のフリを続けるブランドに、人は戻ってくるのか

ブラウザも検索エンジンも、最終的に問われるのは「日常の操作動線として選ばれ続けるか」だ。ユーザーは、毎日触るものほどブランドの態度を覚えている。100万ドルの当選通知で乗り換えた人が、半年後にもまだBingを使っているとは限らない。むしろ、Googleもどきの偽装画面を一度でも見抜いた人は、その記憶のほうを長く引きずる。

Microsoftには本物の技術がある。CopilotもAI検索も、決して張りぼてではない。ただ、その技術を「他社のフリ」というラッピングで包んだ瞬間、製品の説得力は失われる。

10億MAUという数字を「成果」として誇るなら、その10億人にどう向き合うかが次の論点になる。賞金で振り向かせた人、設定で流れ着いた人、そして偽装ホームページに混乱した人。そのどれもが「ユーザー」と数えられるなら、その数字はやがて意味を失っていく。

信用は、配るものでも被るものでもない。日々の検索結果一つひとつで、地道に積むしかないものだ。


参照元

他参照

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