Microsoft、3つ目のCopilot系エージェント開発
ローカルで動くオープンソースAI「OpenClaw」に似たエージェントを、Microsoftが365 Copilotに組み込もうとしている。半年弱で3つ目だ。社内ですら棲み分けに即答できそうにない。
ローカルで動くオープンソースAI「OpenClaw」に似たエージェントを、Microsoftが365 Copilotに組み込もうとしている。半年弱で3つ目だ。社内ですら棲み分けに即答できそうにない。
また一つ、Copilotの分身が増える
The Informationが先に報じ、TechCrunchが追いかけた話だ。Microsoftは、ローカルで動くオープンソースエージェント「OpenClaw」に似た機能を、既存のMicrosoft 365 Copilotに組み込もうとしている。新機能は法人向けで、OpenClawよりも厳しいセキュリティ制御を備える計画だという。
OpenClawは、ユーザーのPC上でローカルに動き、本人の代わりにタスクをこなすエージェントを作るためのオープンソースツールだ。元の名前は「Clawdbot」、次に「Moltbot」を経て、2026年1月末に「OpenClaw」へと落ち着いた。まだ生まれて半年ほどの、若いプロジェクトでもある。
それでもMac Miniに常駐させて24時間動かす使い方が界隈で流行り、小さな箱型デスクトップが急に売れ始めるくらいには無視できない存在になった。Microsoftが「うちもやる」と言い出すのは、自然な流れではある。
問題は、Microsoftがすでに似たようなものを何個も発表しているという事実のほうだ。
3月にCowork、2月にCopilot Tasks、そして今回
時系列を整理しておこう。
2026年2月26日、Microsoftは「Copilot Tasks」をリサーチプレビューとして公開した。メールの整理から、旅行や予約の手配、業者への連絡まで、複数ステップのタスクを片付けるエージェントだ。Microsoft自身は「開発者や企業だけでなく、すべての人のため」と位置づけている。実行環境はMicrosoft自身のクラウド上のサンドボックス。専用のブラウザと計算リソースを立ち上げて作業を進める設計だ。
2026年3月9日、Microsoftは「Copilot Cowork」を発表した。Outlook、Teams、Excelといった365アプリの中で実際に手を動かすエージェントで、検索結果や別ペインのチャットにとどまらない。裏側にはWork IQと呼ばれる文脈把握レイヤーがあり、ユーザーごとの仕事のしかたを365全体から拾い上げる。
ここが重要なのだが、Coworkは「Claude Coworkを動かしている技術」をMicrosoft 365 Copilotに移植したものだ。Microsoftが昨年末に提携したAnthropicのCoworkがそのままエンジンになっている。「マルチモデル戦略」と説明されてはいるものの、Coworkの中身はClaudeである。
そして今回の3つ目だ。The Informationによれば、Microsoftが準備しているのは「常に動き続け、いつでもアクションを取れる365 Copilot」というコンセプトの新エージェントだ。長時間にわたるマルチステップのタスクをこなすのが目玉らしい。ローカル実行になるかどうかは、現時点ではまだ確定していない。
Microsoftの広報は、新しいClaw的エージェントが既存のエージェント群とどう棲み分けるのかというTechCrunchの問い合わせに、まだ回答していない。
棲み分けの説明が出てこないのは、社内でも整理がついていないからではないか、と勘ぐりたくもなる。
重なる輪郭、消えない違和感
冷静に見ると、半年弱の間に「タスクをこなすCopilot系エージェント」が3つ並んだことになる。
Copilot Tasksは個人から法人まで幅広く、クラウド実行。Copilot Coworkは法人のMicrosoft 365向けで、クラウド実行、エンジンはClaude。新しいClaw的エージェントは法人向けで、常時稼働、ローカル実行の可能性がある。機能の輪郭は重なっている。違いは「実行場所」「常時稼働かどうか」「想定ユーザー層」あたりだろうが、ユーザー目線で見れば「結局どれを使えばいいのか」という疑問しか残らない。
これは新しい現象ではない。MicrosoftはWindows Phone時代から、SkypeとTeamsとLyncが並走していた頃まで、同じカテゴリに複数のプロダクトを並べて、後から無理に統合する癖がある。今回もその癖が出ているように見える。
興味深いのは、OpenClawの主戦場がMac Miniになっている点だ。Microsoftが「自社プラットフォーム以外で流行っているローカルエージェント」を見て、慌てて対抗策を作っている、という構図が透けて見える。
OpenClawとAnthropic、Microsoftの三角関係
ここで、もう一つ忘れてはいけない事実がある。OpenClawの作者ピーター・シュタインバーガー氏は、今年2月にOpenAIへ移籍した。プロジェクト自体はオープンソース財団に移され、OpenAIが支援を続ける形になっている。OpenAIのサム・アルトマン氏は、彼を「次世代のパーソナルエージェントを率いる人物」として迎え入れた。
ところが今月4日、Anthropicが波紋を呼ぶ動きに出た。Claude PRO/Maxのサブスクリプションでは、もうOpenClawなどのサードパーティハーネスを通じてClaudeを使えない、という通告だ。OpenClawをClaudeで動かし続けたければ、API経由の従量課金に切り替える必要がある。さらに4月10日には、シュタインバーガー氏自身のClaudeアカウントが一時停止された。数時間後に復旧したものの、Anthropicのエンジニアは「OpenClaw利用を理由とした処分ではない」と説明している。
ピーター・シュタインバーガー氏はオーストリア出身の独立系開発者で、PDFKitフレームワーク「PSPDFKit」の創業者として知られる。OpenClawは2025年11月に「Clawdbot」の名前で公開されたサイドプロジェクトで、メッセージアプリから話しかけられる、ローカル常駐型のAIエージェントとして急速に広まった。
シュタインバーガー氏はXで、こう言い放った。
「人気の機能をクローズドなハーネスにコピーしてから、オープンソースを締め出す。タイミングが面白いね」
ここで一度、構図を描き直してみる価値がある。Anthropicは自社のCowork(Claude Cowork)を持っている。MicrosoftのCopilot Coworkは、まさにそのClaude Coworkを動かしている技術を取り込んだものだ。つまり、AnthropicがOpenClawをClaudeから締め出したその同じ瞬間に、Microsoftは「Claudeで動くOpenClaw的なもの」を法人向けに準備していることになる。OpenClawの居場所だけが、ぽっかり消えていく。
そして6月のMicrosoft Buildの発表者リストには、シュタインバーガー氏の名前が載っている。OpenAIに移ったOpenClawの作者が、Microsoftの開発者会議に登壇する。業界内の力関係は、もはや単純な敵味方では描けない。
Buildで何かが見える、かもしれない
The Vergeによれば、Microsoftはこの新しいClaw的ツール(あるいは既存ツールの強化版)を、6月2〜3日にサンフランシスコで開催する開発者会議「Microsoft Build 2026」で披露する見込みだ。
おそらくその場で、3つのエージェントの関係についても何らかの整理が示されるはずだ。そうでなければ、開発者は「どのSDKに賭ければいいのか」という、答えの出ない問いを抱えて帰るしかない。
ローカルで動くエージェントは、たしかに2026年のテックトレンドの一つだ。プライバシー、コスト、レイテンシ、すべての面でクラウド一辺倒からの揺り戻しが起きている。Microsoftがこの流れを無視できないのは当然で、対応すること自体は正しい判断だろう。
ただ、流れに乗ることと、自社の製品ラインを散らかすことは別の話だ。何個目のCopilotであっても、ユーザーが選ぶ理由を一文で説明できなければ、それは戦略ではなく反射神経でしかない。
半年後、3つのエージェントのうちいくつが残っているだろうか。
参照元
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