Omarchy 3.7、DHHのArch系がゲーミング全振りに

DHH率いるArch Linux系ディストリビューション「Omarchy」が3.7をリリースした。コードネームは「The Gaming Edition」。開発者向けの色合いから、ゲーミング統合環境へと舵を切る大型アップデートだ。

Omarchy 3.7、DHHのArch系がゲーミング全振りに

DHH率いるArch Linux系ディストリビューション「Omarchy」が3.7をリリースした。コードネームは「The Gaming Edition」。開発者向けの色合いから、ゲーミング統合環境へと舵を切る大型アップデートだ。


ゲーミング機能を一気に積み増し

Omarchyを率いるのは、Ruby on Railsの作者として知られるデイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン(David Heinemeier Hansson、通称DHH)だ。BasecampのCTOであり、ル・マン24時間レースのクラス優勝経験を持つ多才な人物が、自身の理想とするLinux環境として育ててきたのがこのディストリビューションになる。

3.7の目玉は、ゲーミング環境の整備に思い切り振り切った点にある。Steamインストーラーは完全自動化され、ユーザーが入力する手間がなくなった。多くのSteamゲームで起動トラブルの原因になっていたSDL_VIDEODRIVER環境変数の指定もデフォルトから外され、互換性が改善されている。アップグレード後はOSの再起動が必要だが、これだけでもLinuxでSteamを動かす際のハードルは確実に下がる。

レトロゲームのフロントエンドであるRetroArch もAUR依存をやめてプリコンフィグ済みになった。BIOSとROMファイルを~/Gamesに置いてスキャンすれば、CRT Royaleシェーダで磨かれた古い画面でゲームが立ち上がる。ここまでの初期設定をディストリ側がやってくれるのは、地味だが実用上の意味は大きい。

Battle.netからEpic Gamesまで

ゲーミングの選択肢はさらに広がる。Lutris (ルートリス)の追加で、Battle.netのタイトル、つまりDiabloやStarCraft、World of Warcraftといった往年の名作を起動する道筋が開けた。Heroic LauncherはEpic Gamesのカタログに対応する。ただしリリースノート自身が認めているとおり、インストール作業は今なお少しぎこちなく、待たされる時間も長めだ。

Heroic Launcherでのインストールは少しぎこちなく、時間もかかる。何も起こっていないように見える瞬間があっても、バックグラウンドでは処理が進んでいるので待ってほしい。リリースノートはそう率直に書いている。

加えて気になるのは、FortniteやRocket Leagueが依然としてプレイできないという但し書きだ。これはWineやProtonのせいというより、Heroic Launcher自体がアンチチート(不正対策)に対応していないことに由来する。アンチチート必須のタイトルは、ゲームの選択肢が広がってもLinuxには届かないまま だ。

ストリーミング系のサポートも入った。Moonlight はSunshineサーバを動かすWindows PCからゲーム映像を受け取るクライアントで、有線接続と高ビットレート設定を組み合わせれば「ローカルで動かしているのと区別がつかない」体験になる。Xbox Cloud Gamingはウェブアプリとして組み込まれ、Xbox Game Passの利用者なら1080pで快適にプレイできる。Linux上でFortniteのようなタイトルに触れたい場合、こうしたリモート方式が現実解になりつつある。


omarchyコマンドへの統合

ゲーミング以外の変更で見逃せないのが、コマンドラインインターフェースの再設計だ。これまでomarchy-*という名前で分散していた個別スクリプトが、統一されたomarchyコマンドに集約された。ドキュメント化されており、bashのタブ補完にも対応している。

~ > omarchy
Omarchy command center

Usage:
  omarchy <command> [args...]
  omarchy commands [--all] [--json] [--check]
  omarchy <group> --help

omarchy theme listomarchy capture screenshotomarchy system lockといった具合に、機能がグループごとに整理されている。スクリプトのソースを読んで使い方を推測する必要がなくなったのは、新規ユーザーにとって素直にありがたい変更だ。

旧コマンドからの主な改名: omarchy-cmd-screenshot → omarchy-capture-screenshot omarchy-lock-screen → omarchy-system-lock omarchy-sudo-passwordless-toggle → omarchy-sudo-passwordless

自分でホットキーやWaybar設定をカスタマイズしているユーザーは、設定ファイルを書き換える必要がある。Omarchy本体が同梱する設定は自動移行されるが、個人設定は手動対応だ。

TesseractでスクリーンショットOCR

地味な機能追加のなかで個人的に唸ったのが、画面の任意領域からテキストを抽出する仕組みだ。Tesseract のOCR(光学文字認識)エンジンを使い、Super + Ctrl + PrtScrで範囲を選ぶだけで、その中のテキストがクリップボードに吸い出される。

画像のフッターに埋め込まれた住所や、ウェブページの見出しに焼き付けられた電話番号、コピーできない形式で表示される情報を扱う場面で、こうした機能は予想以上に使う。AI全盛の時代に古典的なOCRがディストリ標準で組み込まれるのは興味深い選択だ。

Tesseractは光学文字認識のオープンソースエンジンで、もとはHewlett-Packardが1985年から1994年にかけて開発した。2005年にオープンソース化され、2006年から2017年まではGoogleが開発を支えた。現在はコミュニティが保守を引き継ぎ、多言語対応と精度の高さで定番の位置にある。

ほかにも、ノートPCの内蔵ディスプレイを外部モニターにミラーリングするトグル、TUIで動く音楽プレイヤーcliamp、GitHubのプルリクエスト管理を端末で完結させるghuiといった、細かいが日常使いに効く機能が追加されている。


結局、誰のためのディストリか

Omarchyは決して万人向けのLinuxではない。Hyprlandというタイル型コンポジタの操作体系に慣れる必要があり、すべてがキーボード中心で動く。マウスだけではログイン直後に何もできない、というのが象徴的だ。

それでも今回のリリースで明確になったのは、Omarchyが「開発者専用の尖ったツール」から「Linuxを日常マシンとして使い倒したい人向けの統合環境 」へと舵を切っているということだろう。ゲーミングの整備は、その方向性を象徴する変更だ。

Valveが長年積み上げてきたSteamとProtonの蓄積、Hyprlandの成熟、そしてDHHのキュレーション能力。3.7はそれらが噛み合った先に立っている。一方で、anti-cheatの壁やHeroic Launcherの動作の重さが示すとおり、Linuxゲーミングが完全に「普通」になるまでにはまだ距離がある。

新規ユーザーがArch Linuxを一から組み上げる必要なく、最初からゲームが動く状態でスタートできる。その意味は、思っている以上に大きい。


参照元

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