LinuxのDirtyDecrypt、パッチ済み脆弱性のPoCが公開

Linuxカーネルの権限昇格脆弱性DirtyDecryptに対し、root権限を奪取できる概念実証コード(PoC)が公開された。4月25日に修正済みの脆弱性だが、PoCが出回ったことで未パッチ環境への攻撃リスクが増している。

LinuxのDirtyDecrypt、パッチ済み脆弱性のPoCが公開

Linuxカーネルの権限昇格脆弱性DirtyDecryptに対し、root権限を奪取できる概念実証コード(PoC)が公開された。4月25日に修正済みの脆弱性だが、PoCが出回ったことで未パッチ環境への攻撃リスクが増している。


パッチ済みでもPoCが出た意味

DirtyDecryptは、LinuxカーネルのrxgkモジュールのPageキャッシュ書き込みに起因するローカル権限昇格の脆弱性だ。DirtyCBCという別名でも知られる。

rxgkとは、AFS(Andrew File System:分散ネットワークファイルシステム)向けの通信セキュリティ機能で、CONFIG_RXGKというカーネル設定オプションで有効になる。この設定が有効なLinuxディストリビューションでのみ悪用が成立する。

攻撃の条件はある。カーネルにCONFIG_RXGKオプションが有効なこと。主に最新のアップストリームカーネルを追跡するFedora・Arch Linux・openSUSE Tumbleweedが対象となる。

V12セキュリティチームが5月9日に独自発見・報告したところ、メンテナーから「すでにメインラインで修正済みの重複バグ」と通知を受けた。

「5月9日に発見・報告したが、メンテナーからは重複だと知らされた。rxgk_decrypt_skb内のCOWガード欠如によるrxgkのPageキャッシュ書き込みだ」とV12は述べた。

公式のCVEが存在しない事情

この脆弱性に公式のCVE識別子(脆弱性を一意に識別する番号)は割り当てられていない。ただし脆弱性アナリストのウィル・ドーマン氏(Tharros社)は、今回の内容が4月25日にパッチが当たったCVE-2026-31635の詳細と一致すると指摘している。

公式CVEがないままPoCが出回ると、修正の存在を知らないユーザーは対応が遅れるリスクが生じる。「CVEを確認していないから気づかなかった」では、その間に実害が出てしまう。

V12によるPoCはFedoraとメインラインのLinuxカーネルでのみ動作確認されているが、対象環境のユーザーに求められる対応は変わらない。

続く権限昇格の連鎖

ここ数週間、Linux向けの権限昇格脆弱性が相次いでいる。DirtyDecryptもその一つで、Dirty Frag・Fragnesia・Copy Failと同系統の脆弱性クラスに属する。

2026年4〜5月 Linux権限昇格脆弱性まとめ
Dirty Frag Fragnesia Copy Fail Dirty
Decrypt
公開日 5月8日 5月13日 4月29日 5月18日
CVE -43284
/ -43500
-46300 -31431 なし
パッチ
(4/25)
PoC あり あり あり あり
野外
悪用
確認済
影響範囲 主要全般 主要全般 主要全般 限定的
※ CVE番号は先頭の「CVE-2026」を省略。DirtyDecryptはCVE-2026-31635と一致するとみられるが公式割り当てなし。影響範囲「限定的」はCONFIG_RXGK有効な環境(Fedora・Arch Linux・openSUSE Tumbleweed等)のみ対象。

この背景として見逃せないのがCopy Failの動向だ。CISA(米国サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁)は5月1日、Copy Fail(CVE-2026-31431)を実際に攻撃で悪用された脆弱性のリストに追加し、連邦政府機関に対して5月15日までにLinux端末を保護するよう指令を出した。

「このタイプの脆弱性は、悪意あるサイバー攻撃者にとって常套的な攻撃経路であり、連邦企業に重大なリスクをもたらす」とCISAは警告した。

Copy Failが実際に悪用されている今、同系統のDirtyDecryptのPoCまで出回っている。攻撃者が使える手が増えた。

今すぐできる対処

DirtyDecryptの影響を受けるディストリビューションのユーザーは、速やかに最新のカーネルアップデートを適用することが推奨されている。

すぐにパッチを当てられない場合の暫定対策は、Dirty Fragで使用された緩和策と同じコマンドで対応できる。ただしこの操作は IPsec VPNとAFS も無効化する点に注意が必要だ。

sh -c "printf 'install esp4 /bin/false\ninstall esp6 /bin/false\ninstall rxrpc /bin/false\n' > /etc/modprobe.d/dirtyfrag.conf; rmmod esp4 esp6 rxrpc 2>/dev/null; echo 3 > /proc/sys/vm/drop_caches; true"

4月には、PackageKitデーモンに約12年間見過ごされていた別の権限昇格脆弱性(Pack2TheRoot)のパッチも各ディストリビューションが配布した。これだけ短期間に同系統の問題が続くのは、セキュリティ研究者の活動が活発化しているためとみられる。攻撃者も同じ方向に動いている以上、更新を先延ばしにできる状況ではない。


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