GTA 6のPC版見送り、CEOが語った「コア顧客」論の矛盾

『グランド・セフト・オートVI』のPC版が発表されない理由について、テイクツー・インタラクティブのCEOストラウス・ゼルニックがついに口を開いた。コア顧客論を持ち出した説明には、自身の発言の中に隠れた矛盾がある。

GTA 6のPC版見送り、CEOが語った「コア顧客」論の矛盾

『グランド・セフト・オートVI』のPC版が発表されない理由について、テイクツー・インタラクティブのCEOストラウス・ゼルニックがついに口を開いた。コア顧客論を持ち出した説明には、自身の発言の中に隠れた矛盾がある。


「コア顧客はコンソールにいる」というCEOの説明

ロックスター・ゲームスは『グランド・セフト・オートVI(Grand Theft Auto VI)』を2026年11月19日に発売する予定だ。対応プラットフォームはPlayStation 5とXbox Series X|Sの2機種のみで、PC版についてはアナウンスがないまま発売まで半年強となっている。長らく沈黙が続いていたPC版の動向について、テイクツーCEOのストラウス・ゼルニック(Strauss Zelnick)がBloombergのインタビューで踏み込んだ説明を行っている。

インタビュアーは、ロックスターのスクープを過去何度も取ってきたジェイソン・シュライアー(Jason Schreier)だ。場所はラスベガスで開催されたESA主催のInteractive Innovation Conference(iicon)。シュライアーがPC版欠落の理由を直球で問うと、ゼルニックはこう答えた。

「ロックスターはいつもコンソールから始める。これくらいの規模のリリースになると、コアを満たせているかで評価が決まる。本当の意味でコア顧客に応えるということだ。コア顧客がそこにいなければ、最初に最良のものを届けなければ、他の顧客には届かない」

PlayStationとのマーケティング契約が影響しているのではないかという推測も、ゼルニックは即座に否定した。「いや。ロックスターは歴史的にコンソール先行でやってきた」とだけ答えている。

説明は一見筋が通っている。ロックスターの過去の事例を見れば、確かにそうだ。『GTA V』はPlayStation 3とXbox 360で2013年9月に発売され、PC版が出たのは2015年4月。1年7ヶ月の遅れだった。『レッド・デッド・リデンプション2』も同じパターンで、コンソール版が2018年10月、PC版が2019年11月だ。12ヶ月から18ヶ月の遅延は、ロックスター作品ではほぼ慣習化している。

CEO自身が認めた数字が、説明を裏切っている

ところが、同じインタビューの中で、ゼルニックはもう一つ重要な数字を口にしている。

ゼルニックがテイクツーに加わった2007年、PC版が『NBA 2K』シリーズの売上に占める割合はわずか5%程度だった。それが現在では「大型タイトルでPCの売上が45%から50%を占めることもある」と本人が認めている。コンソールがコアであるという論理が成立するのは、PCが少数派の場合だ。売上の半分近くを生む層を「コア顧客ではない」と切り捨てるのは、商業的な実態と噛み合わない。

矛盾はインタビュー内に閉じない。ゼルニックは2025年11月にCNBCの『Squawk Box』で「業界はPCに向かっている。クローズドからオープンへとビジネスがシフトしている」と語っていた。直近の大型タイトル『バトルフィールド6』(Battlefield 6)や『ARC Raiders』では、PCが売上の半数以上を占めている。PC優位の流れを認識していたCEOが、自社の最大タイトルだけ「PCはコアじゃない」で押し通しているのが現状だ。

ロックスターのコンソール先行戦略は、開発リソースの制約という現実的な側面もある。PC版は無数のハードウェア構成への最適化が必要で、コンソールのように標準化された環境では済まない。シュライアーがこの点を踏まえ、PC版を遅らせることが「ファンに二度買いさせるシナリオ」として機能していないかと問うと、ゼルニックは「成り行きを見るとしよう」とだけ答えた。否定はしなかった。

「コア」の正体は、収益の偏り

ゼルニックの「コア顧客」発言の背後には、より具体的な数字がある。

最近流出した財務データによれば、『GTAオンライン』の週次収益のうちPCが占める割合はたったの3%。週次アクティブユーザーで見ても約9%にとどまる。残りの大半はコンソールから来ている。PC版の『GTA V』プレイヤーの多くが、ロックスター本体ではなく、別建てのMODコミュニティ「FiveM」に流れているためだ。ロックスターは2023年8月にFiveMの開発元Cfx.reを買収しており、PC側のエコシステムを完全に把握しきれていない構造的な問題を抱えている。

つまり「コア顧客はコンソール」というのは、新作の販売本数のことではなく、継続課金の収益源のことを指している可能性が高い。新作の売上で言えばPCも45-50%を占めるが、ローンチ後の長期収益という観点ではコンソールが圧倒している。

それでも、CEOの発言の建前はあくまで「販売段階のコア顧客」だった。建前と実態のズレは、PC版を待つプレイヤーから見れば軽視されたという感覚に繋がる。

「期待値が怖い」というCEOの本音

同じインタビューでゼルニックは『GTA VI』への期待値について、「興奮するし、怖くもある。期待値があまりに高すぎる」と漏らしている。前作『GTA V』は史上2番目に売れたゲームであり、発売から12年経った今も収益を生み続けている怪物だ。後継作はそれを超える成績を求められる。

「我々は成功を予め主張することはしない。最高のクリエイティブチームに、無制限の資金とリソースを与え、完璧を目指してもらう。それだけだ」

開発費は2025年時点で20億ドル超との推測も出ている。これだけの規模の投資をかけたタイトルに、PC版同時発売のリスク要因を持ち込みたくない、というのが実務的な本音だろう。コンソールという標準化された環境で完璧な状態に磨き上げ、PC版はその後で出す。技術的には合理的だが、PCゲーマーから見れば「最初から作る気がない」のと変わらない。

ロックスターが過去の遅延を踏襲するとすれば、PC版の発売は早くて2027年末から2028年。すでに2回延期されている本編が予定通り出るかどうかも、まだ油断できない状況だ。

売上の半分を占める層に対する、CEOの呼び方

PC版を「core consumer」ではなく「other consumers」と呼んだゼルニックの言葉選びは、おそらく無意識のものだろう。だが、業界用語として「コア」と「その他」を分ける構造そのものが、CEOの中でPCゲーマーがどう位置づけられているかを露わにしている。

売上の半分を稼いでくれる層を「その他」と呼ぶ感覚は、コンソール優先で20年やってきた経営者の認識構造から来ている。市場が変わっても、頭の中の地図は変わっていない。PCゲーマーが釈然としないのは、この温度差ではないだろうか。


参照元

関連記事

この記事を共有する