AI規制

Spotify、スパム7500万曲削除の裏でAI機能拡大

AI音楽

Spotify、スパム7500万曲削除の裏でAI機能拡大

Spotifyが7500万曲のAIスパムを削除した一方、AIチャット機能を有料会員に提供し始めた。排除と活用が同時に進んでいる。 削除された7500万曲の正体 Spotifyは2025年9月、過去12か月間で7500万曲以上のスパムトラックを削除したと発表した。生成AIツールの普及で大量生産が容易になった低品質な楽曲、SEOを悪用した偽装トラック、極端に短い再生回数稼ぎの音源が対象だ。 同社でアーティスト・マーケティング・ポリシーの責任者を務めるサム・デュボフ(Sam Duboff)氏は、AIの活用と悪用の境界が曖昧になっていると認めている。プロのアーティストもスタジオでAIツールを使い始めており、「何がAI音楽か」の定義自体が揺らいでいる。 作るのに労力がかからない音楽は品質が低くなりがちで、聴衆を見つけられない傾向にある(デュボフ氏) 数字の規模感を別の角度から見ると、Spotifyには毎日約10万曲が新たにアップロードされている。ライバルのDeezerが4月に公表したデータでは、同社に届く新曲の44%がAI生成だった。1日あたり約7万5000曲。そのうち実際に再生され

xAI、Grokで児童性的虐待画像を生成したユーザーを提訴

AI

xAI、Grokで児童性的虐待画像を生成したユーザーを提訴

xAIが訴える側に回った。Grokのディープフェイク問題で追及されてきた同社が、自社ツールを悪用したとするユーザーをテキサス連邦裁判所に訴えている。 訴状の中身 xAIは7月14日(現地時間)、テキサス州北部地区連邦裁判所にサウスカロライナ州の男性テリー・ウェイン・ハーウッド(Terry Wayne Harwood)氏を相手取る訴状を提出した。AI企業が自社ユーザーを児童性的虐待素材(CSAM)の生成を理由に提訴した、初めての事例の一つとなる。 訴状によると、ハーウッド氏は偽名で複数のxAIアカウントを開設し、成人や未成年を写した普通の写真をGrokにアップロードして性的なディープフェイクに加工しようとした。Grokがコンテンツモデレーションに基づいて要求を拒否すると、ハーウッド氏は指示の表現を変えて繰り返しセーフガードの回避を試みたという。 xAIは損害賠償(金額は未定)と、ハーウッド氏のプラットフォーム永久利用禁止を裁判所に求めている。 すでに逮捕されていた男 ハーウッド氏は67歳。今年2月26日、サウスカロライナ州ローレンス郡で逮捕されている。容疑は未成年の性的搾

豆包とQwen、擬人化エージェントを7月15日に停止へ

AI

豆包とQwen、擬人化エージェントを7月15日に停止へ

7月15日、中国で「擬人化AI暫定弁法」が施行される。AIが人間の人格や感情を模倣して継続的にやり取りするサービスを規制する、世界初の法的枠組みだ。施行9日前にして、中国の主要AIアプリ3つからエージェント機能が消えることが確定した。 施行を前に動いた3社 バイトダンスの豆包(ドウバオ)は現地時間7月4日夜、ユーザーに通知を出した。エージェント機能を7月15日に停止する。 関連データは10月15日まで閲覧・保存が可能だが、それ以降はプライバシーポリシーに基づいて処理され、アプリ内での閲覧・復元はできなくなる。バイトダンスはユーザーに対し、スクリーンショットやテキスト共有による事前のバックアップを推奨している。 アリババのQwen(通義千問)は翌7月5日朝に同様の通知を出した。擬人化エージェントとユーザー作成エージェントの機能を7月10日に無効化し、より広範なエージェント機能とサービスを7月15日にオフラインにする。 エージェントの設定や過去の会話履歴は、停止後アクセスできなくなる。バイトダンスが10月15日までの猶予期間を設けたのに対し、アリババは移行先も猶予期間も示してい

トランプ政権のAI規制を業界が懸念 政策変更と献金の関係を検証

AI

トランプ政権のAI規制を業界が懸念 政策変更と献金の関係を検証

シリコンバレーの億万長者たちは、バイデン政権のAI安全政策が米国のイノベーションを潰すと警告し、トランプ陣営に巨額を献金した。AIを自由に伸ばす、規制はしない。就任直後のトランプ大統領はその期待通りに動き、州レベルのAI規制を封じることに注力した。 2026年6月、その約束は跡形もない。 「バイデン式の規制が恋しい」 6月に入り、ホワイトハウスはAnthropicとOpenAIに対して立て続けに介入した。Anthropicの最上位モデルMythos 5とFable 5には輸出管理指令が出た。外国籍者へのアクセスを禁じる内容で、Anthropicは国籍の即時判別ができないため全ユーザーを遮断した。OpenAIにはGPT-5.6のリリースを政府が承認した約20社に限定するよう要請した。いずれもサイバーセキュリティ上の懸念が理由とされるが、具体的な基準は示されていない。 6月26日、ラトニック(Howard Lutnick)商務長官がAnthropicに書簡を送り、Mythos 5については100社超への再配布を許可した。ただしFable 5の制限解除には触れていない。同じ日にOp

基準なき規制がフロンティアAIを止めている

AI

基準なき規制がフロンティアAIを止めている

Fableが止まった。GPT-5.6も制限された。だが何が安全かの基準は、まだ存在しない。 「許可」の条件を、誰も知らない フロンティアAIモデルの一般公開が、米国政府によって事実上の許可制に移行している。 AnthropicのFable 5が輸出管理指令で全ユーザーから遮断されたのは6月12日。それから2週間、復旧のめどは立っていない。6月26日にはOpenAIのGPT-5.6が、政府が個別に承認した約20社のパートナーだけに限定リリースされた。フロンティアモデルの公開を米国政府が事前に制限したのは、これが初めてになる。 フロンティアAI規制の経緯(2026年2月〜6月) 2月Anthropicをサプライチェーンリスクに指定国防総省が指定。連邦機関での利用を禁止 3月Anthropicがトランプ政権を提訴サプライチェーンリスク指定の違憲性を主張 6月2日AIサイバーセキュリティ大統領令に署名「任意の」事前テスト提供を規定。事実上の事前承認制 6月4日Great American AI Act ドラフト公表超党派の連邦AI規制法案。269ページ 6月9

米政府がGPT-5.6のリリースに介入。顧客ごとの承認制へ

AI

米政府がGPT-5.6のリリースに介入。顧客ごとの承認制へ

OpenAIの次期モデルGPT-5.6のリリースが、米政府の要請で大きく変わった。一般公開ではなく、政府が承認した少数のパートナー企業だけがアクセスできる限定プレビューとして提供される。 AIモデルのリリースに政府が踏み込んだ日 6月25日、OpenAIのサム・アルトマン(Sam Altman)CEOが社内Q&Aで従業員に伝えた内容が報じられた。GPT-5.6は当初の一般公開を取りやめ、限定プレビューとしてリリースする。プレビュー期間中、政府が顧客ごとにアクセスを承認するという。 要請の出どころは、ホワイトハウスの国家サイバー長官室(ONCD)と科学技術政策局(OSTP)だ。米政府がAI企業に対し、モデルのリリース前に制限を求めたのはこれが初めてになる。 Anthropicに対する輸出規制指令とは性格が異なる。Fable 5とMythos 5の件では商務省が法的拘束力のある指令を出し、全ユーザーのアクセスが即座に停止された。今回は強制ではなく協議だ。政府の要請にOpenAIが応じている。 Mythos級のサイバー能力 なぜ政府はGPT-5.6に踏み込んだのか。 アルト

AI企業を巡る45億円訴訟が決着 争点と判決を整理

AI

AI企業を巡る45億円訴訟が決着 争点と判決を整理

マンハッタンの民主党予備選に、AI業界の対立する両陣営が合わせて約45億円を注ぎ込んだ。負けたのは標的にされた候補だけではない。金を出した側も、勝利宣言ができずにいる。 結果と、その奇妙な静けさ 現地時間6月23日夜、AP通信がニューヨーク第12選挙区の民主党予備選の当選確実を出した。勝者はマイカ・ラッシャー(Micah Lasher)氏。開票率94%の暫定結果で得票率39%、次点のアレックス・ボレス(Alex Bores)氏が35%、ケネディ家のジャック・シュロスバーグ氏が約11%で続いた。 34年間この選挙区を代表してきたジェリー・ナドラー下院議員の引退に伴う後任選びだ。ラッシャー氏はナドラー氏本人、キャシー・ホークル州知事、マイケル・ブルームバーグ元ニューヨーク市長という民主党の主要人物から支持を得ていた。ブルームバーグ氏は約1000万ドル(約16億円)をラッシャー氏を支持するPACに投じている。 だがこの選挙を全米の注目の的にしたのは、ラッシャー氏の勝利ではない。ボレス氏をめぐるAI業界の代理戦争だった。 約45億円が一つの選挙区に集中した理由 ボレス氏は元パラ

スターマー辞任が残すテック政策の宿題

テクノロジー

スターマー辞任が残すテック政策の宿題

キア・スターマー(Keir Starmer)首相が6月22日、辞任を表明した。2024年7月の地滑り的勝利からわずか2年足らず。英国は10年で7人目の首相を迎えることになる。スターマー氏がテック政策に残した遺産を検証する。 「AI超大国」を掲げた2年間 スターマー政権のテック政策は、一言でまとめるなら「壮大な計画書と、未完の法律」だ。 2025年1月、首相はマット・クリフォード(Matt Clifford)氏に委託した「AI機会行動計画」を発表し、50の提言すべてを受け入れると宣言した。国内のAI計算資源を2030年までに20倍にする。750万人にAIスキル研修を受けさせる。英国をG7最速のAI導入国にする。数字は大きく、意思は明確だった。 辞任のわずか2週間前、London Tech Week 2026の壇上でも勢いは衰えていなかった。AIチップ購入に4億ポンド(約850億円)を含む11億ポンド規模のAIハードウェア計画を発表。AMDが最大20億ポンド、ネビウス(Nebius)が17億ポンドの英国投資を表明し、英国初のソブリンAIフロンティアモデル「Lumen Sovere

「欧州2031」が描いた危機。フィクションより現実が速かった

AI

「欧州2031」が描いた危機。フィクションより現実が速かった

ブリュッセルのシンクタンクが5年後の欧州崩壊シナリオを書いた。AIで出遅れた欧州が米中に挟まれ、主権を失う。架空の未来が、公開翌日に現実に追いつかれた。 フィクションの翌日に現実が来た 欧州がフロンティアAIへのアクセスを米国に断たれる。そんな未来を描いた思考実験が6月11日に公開され、翌12日に現実になった。 「Europe 2031」と題されたこのシナリオは、ブリュッセルのシンクタンクArq Foundationを拠点に8人が執筆し、サイエンスライターのトム・チヴァーズ(Tom Chivers)が1万8000語の物語に仕上げた。主人公は欧州委員会で働く架空のフランス人職員、キャロリーヌ・デュボワ。2025年1月のDeepSeek R1公開から2031年3月まで、欧州がAI革命への対応を誤り続け、最終的に米国の保護領か中国への依存か孤立かの三択を突きつけられるまでを描く。 著者の一人はこう投稿している。「シナリオではフロンティアモデルの輸出規制は2028年の出来事だった。現実では2日で起きた」。 6月12日、米商務省がAnthropicのClaude Fable 5とMy

Fable級に中国はいつ届くか。マスク氏の「来年Q1」をZ.ai創業者が否定

AI

Fable級に中国はいつ届くか。マスク氏の「来年Q1」をZ.ai創業者が否定

Fable 5が止まって1週間。止めた側は動けず、追う側が加速している。 7か月差か、それ以下か 中国がFable 5にいつ追いつくか。6月18日、イーロン・マスク(Elon Musk)氏が「おそらく来年Q1」と投稿した。 Probably Q1 — Elon Musk (@elonmusk) June 18, 2026 返答は早かった。Z.ai(旧Zhipu AI、智譜)共同創業者のタン・ジエ(唐杰、Tang Jie)氏が、同じスレッドで一言。 won’t take that long — jietang (@jietang) June 18, 2026 won't

OpenAI、ホワイトハウスAI政策の立案者を獲得。Anthropic規制の翌週に

AI

OpenAI、ホワイトハウスAI政策の立案者を獲得。Anthropic規制の翌週に

OpenAIが、トランプ政権でAI政策の中枢にいた人物を新チームの長に迎える。Anthropicが米政府の輸出規制で最新モデルを止められた、その翌週の人事だ。 「内側に入らなければ前に進めない」 ディーン・ボール(Dean W. Ball)氏が6月18日、OpenAIへの参加を発表した。入社は7月6日付で、OpenAIが新設するStrategic Futures(戦略的未来)チームを率いる。最高戦略責任者ジェイソン・クォン(Jason Kwon)氏の直属だ。 ボール氏はトランプ政権下でホワイトハウス科学技術政策局のAI・新興技術担当上級政策アドバイザーを務めた。2025年7月の「AIアクションプラン」の主要起草者であり、米国のAI政策の骨格を内側から書いた当事者だ。退任後はFoundation for American Innovation(テクノロジー規制緩和を掲げる中道右派のシンクタンク)のシニアフェローに復帰し、「Hyperdimensional」と題したSubstackでAI政策の分析を発信し続けてきた。OpenAI入社後もFAIには非常勤で残る。 Strategic

G7で浮上した「AIのキルスイッチ」問題

AI

G7で浮上した「AIのキルスイッチ」問題

Fable 5とMythos 5の輸出規制から1週間。G7エビアン・サミット最終日のワーキングランチで、マクロン仏大統領とモディ印首相が、米国によるAIアクセス遮断のリスクを正面から問題にした。 「スイッチを切れる」という現実 6月17日、フランス・エビアン=レ=バンで行われたG7のワーキングランチ。AIをテーマにしたこの場には、Anthropicのダリオ・アモデイCEO、OpenAIのサム・アルトマンCEO、Google DeepMindのデミス・ハサビス(Demis Hassabis)CEO、Mistral AIのアーサー・マンシュ(Arthur Mensch)CEO、そしてトランプ大統領が同席していた。 エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領はこの席で警告を発した。米国がAIへのアクセスを一夜にして遮断できる状態は、欧州の顧客経済だけでなく米国のAI企業そのものを傷つける。いつ止められるか分からないAIを買う国はない、とも踏み込んだ。 ナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相もAnthropicのモデル規制への懸念を示したと報じられて

英国が16歳未満のSNS利用を全面禁止へ。その先にある問い

テクノロジー

英国が16歳未満のSNS利用を全面禁止へ。その先にある問い

キア・スターマー(Keir Starmer)首相が現地時間6月15日、ダウニング街で記者会見を開き、16歳未満の子どもに対するSNSプラットフォームの利用を全面的に禁止すると発表した。年内に議会で規制を通し、2027年春の施行を目指す。対象はSnapchat、TikTok、YouTube、Instagram、Facebook、Xなど主要プラットフォーム。WhatsAppやSignalといったメッセージサービスは含まない。 2025年12月に世界で初めて同様の禁止法を施行したオーストラリアを超える範囲の規制を、英国は打ち出した。ゲームでの見知らぬ人物との通信やライブストリーミングの遮断、AIチャットボットの「恋愛コンパニオン」機能への18歳未満の利用制限など、SNSの外にまで網を広げる。 子どもの安全をめぐる政策として、これは間違いなく大きな一歩だ。だが、禁止の先にある問題は、まだ誰も答えを出していない。 「子どもに子ども時代を返す」という宣言 スターマー首相は会見で繰り返した。SNSは子どもを不幸にしている、いじめを助長している、精神的健康を損なっている、と。保護者の9割が1

米セキュリティ専門家40人超がFable禁止の撤回を要求

AI

米セキュリティ専門家40人超がFable禁止の撤回を要求

トランプ政権がAnthropicのFable 5とMythos 5に輸出管理指令を出してから3日。Adobe、Zoom、ソフォス、NVIDIAの幹部やセキュリティ研究者を含む40人超が、ホワイトハウスに対して禁止措置の撤回を求める公開書簡に署名した。書簡が訴えるのは一点。この措置は防御側から最良のツールを奪っただけで、攻撃側には何の影響も与えていない。 書簡が突きつける問い 公開書簡を取りまとめたのは、元Facebook最高セキュリティ責任者のアレックス・スタモス(Alex Stamos)氏。現在はAIコーディングセキュリティ企業Corridorの最高製品責任者を務める。 書簡は「防御側にAIを提供することが不可欠だ」と正面から訴える。自社や顧客のコードに潜む脆弱性を、攻撃者より先に見つけて塞ぐ。その切り札と見なされていたのがFable 5だ。 署名者にはLuta SecurityのCEOケイティ・ムスリス(Katie Moussouris)氏、SocialProof SecurityのCEOレイチェル・トバック(Rachel Tobac)氏、Veracode共同創業者のクリ