Fable級に中国はいつ届くか。マスク氏の「来年Q1」をZ.ai創業者が否定
Fable 5が止まって1週間。止めた側は動けず、追う側が加速している。
7か月差か、それ以下か
中国がFable 5にいつ追いつくか。6月18日、イーロン・マスク(Elon Musk)氏が「おそらく来年Q1」と投稿した。
Probably Q1
— Elon Musk (@elonmusk) June 18, 2026
返答は早かった。Z.ai(旧Zhipu AI、智譜)共同創業者のタン・ジエ(唐杰、Tang Jie)氏が、同じスレッドで一言。
won’t take that long
— jietang (@jietang) June 18, 2026
won't take that long(そんなに時間はかからない)
Q1、つまり2027年1月〜3月すら待たない。年内の到達を示唆している。
きっかけはあるユーザーの投稿だった。Z.aiが6月16日にオープンウェイトで公開したGLM-5.2を引き合いに、中国がFableクラスに到達するまでのタイムラインを尋ねた。マスク氏が「おそらくQ1」と返し、タン氏がそれを上書きした。
規制が生んだ加速
この応酬に、1週間前の出来事が重なる。
Anthropicが6月9日にFable 5を一般公開した。3日後の6月12日、米商務省がFable 5とMythos 5を輸出規制の対象に指定し、Anthropicは全ユーザーのアクセスを停止した。ジェイルブレイクの報告を受けた措置だとされるが、Anthropic側は「軽微な脆弱性で、GPT-5.5でも再現できる」と反論している。6月19日時点で規制は解除されておらず、Fable 5は世界中で使えないままだ。
その翌日、6月13日にZ.aiはGLM-5.2を発表した。タン氏は発表の場で、特定のフロンティアモデルへの突然のアクセス制限を「深く遺憾に思う」と述べている。Fable 5の停止を明確に意識した発言だ。3日後の6月16日にはMITライセンスでオープンウェイト公開に踏み切った。
Z.aiの公式ベンチマークによると、GLM-5.2の性能はClaude Opus 4.7〜4.8と同等圏だ。OpenAIのGPT-5.5やGoogleのGemini 3.1 Proを複数の指標で上回り、Code ArenaのWebDev部門ではFable 5に次ぐ2位。パラメータ数は約7530億、コンテキスト長100万トークン。API価格は入力100万トークンあたり1.40ドル、出力4.40ドルで、Fable 5(入力10ドル、出力50ドル)の数分の1だ。
Fable 5が止まった翌日に、その一歩手前まで来たモデルがオープンウェイトで世に出た。
6月9日 Anthropic、Fable 5を一般公開 Anthropicの最新フロンティアモデル 6月12日 米商務省、輸出規制を発動 ジェイルブレイクの報告を受け、全ユーザーのアクセスが停止 6月13日 Z.ai、GLM-5.2を発表 フロンティアモデルへのアクセス制限を「深く遺憾」と表明 6月16日 GLM-5.2、オープンウェイト公開 MITライセンス。 Opus 4.7〜4.8同等圏、API価格はFable 5の数分の1 6月18日 マスク氏「来年Q1」、タン氏「そんな時間はかからない」 |
株価が映す市場の判断
Z.aiは2019年に清華大学のスピンオフとして設立され、2026年1月8日に香港証券取引所に上場した。大規模言語モデルの開発企業としては世界初の上場だった。IPO時の株価は116.2香港ドル。6月18日の終値は2094香港ドルで、上場から5か月で約18倍になっている。時価総額は7400億香港ドルを超えた。日本円で約15兆円だ。
6月12日、輸出規制が出た日の終値は1061香港ドルだった。それが6月18日に2094香港ドル。わずか4営業日で株価はほぼ倍増した。米国のフロンティアモデルが止まった空白を誰が埋めるか、市場はすでに値段をつけている。
「守りたかったもの」の逆説
マスク氏は「来年Q1」と見積もった。タン氏はそれを「そんなにかからない」と否定した。どちらが正しいかは今はわからない。だが両者とも、中国がFable 5に追いつくことを前提にしている。焦点はもう「追いつくか」ではない。「いつか」だ。
輸出規制の目的は、米国のAI技術の優位を守ることだ。Fable 5を止めたことで、少なくとも短期的にはその優位を外国の手に渡さないという目的は果たされた。だが同時に、Z.aiのようなオープンウェイトの対抗馬に世界中の開発者を押し流す結果も生んでいる。Fable 5を使いたくても使えない開発者が、GLM-5.2に流れる。その流れが止まらないうちに、次のバージョンが出る。
守りたかったものが、守ろうとした行為で失われつつある。この1週間は、その逆説をはっきり見せた。
参照元:Elon Musk - X
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