Windows 11の天気アプリ、macOSの約5倍のRAM消費。広告も表示
有料OSに標準搭載された天気アプリが、Chromiumベースのウェブラッパーとして9つのプロセスを走らせている。
有料OSに標準搭載された天気アプリが、Chromiumベースのウェブラッパーとして9つのプロセスを走らせている。
天気を見るためのブラウザ
Windows 11の天気アプリを開くと、タスクマネージャーに9つのサブプロセスが並ぶ。プロセス名はChromiumのそれだ。
天気アプリの正体はMSN Weather、つまりMSNブランドのウェブアプリをWebView2(Chromiumベースの埋め込みブラウザ)でラッピングしたものにすぎない。Microsoft Storeで検索すると、アプリ名が「MSN Weather」であることが確認できる。
実測で、待機状態のRAM消費は1.2GBを超えた。スクロールもクリックもしていない。天気データを表示しているだけの状態でこの数字だ。
同じ条件で比較すると、macOSの天気アプリはネイティブの単一プロセスで動作し、RAM消費は246.7MBにとどまる。およそ5分の1で済んでいる。天気データの詳細度に大きな差はない。レーダーオーバーレイ、時間ごとの風速・降水量、大気質指数、月齢まで、両者とも同等の情報を提供している。差を生んでいるのは情報の質ではなく、アプリの構造だ。
広告が天気データに化けている
RAM消費だけではない。天気アプリの画面をスクロールすると、気温カードや風速カードと同じ視覚デザインで広告タイルが挿入されている。あるテスト環境ではAdobe AcrobatのAI機能を宣伝するタイルが、天気データのグリッドの中に自然に溶け込んでいた。
Appleの天気アプリには広告がない。気象データのライセンス費用がかかる点は同じだ。ForecaやECMWF(欧州中期予報センター)など、MSN Weatherが利用している気象データ提供元はMicrosoftのクレジットページで確認できる。データの調達コストはどちらも負担しているが、片方だけが広告を差し込んでいる。
もっとも、Appleはハードウェアの利益率でソフトウェアのコストを吸収できる立場にある。Microsoftにはその余地が小さい。広告の存在自体を一方的に批判するのは公平ではない。
だが、有料のOSに広告付きのウェブラッパーを同梱し、それがネイティブアプリのふりをして1.2GBのRAMを占有するとなれば、話は変わる。
なぜ天気アプリだけが取り残されるのか
Microsoftは2026年、Windows 11の品質改善に大きく舵を切った。
3月にはパートナーアーキテクトのルディ・ヒュイン(Rudy Huyn)氏が「100%ネイティブなアプリ」を開発する新チームの結成を表明した。Build 2026ではWinUIを「唯一のネイティブUI基盤」と位置づける方針が宣言され、スタートメニューのReact NativeからWinUIへの書き換えも進んでいる。電卓、カメラ、時計、メディアプレーヤー、メモ帳、ペイント、フォト、サウンドレコーダーの計8つの付属アプリは既にアップデートの対象になった。
天気アプリはそのリストに入っていない。
理由は推測できる。天気アプリは「Windowsの付属アプリ」ではなく、「MSNブランドの製品」だからだ。ヒュイン氏が率いるネイティブアプリチームの管轄が、MSNブランドのアプリにまで及ぶかどうかは明らかになっていない。組織の壁が技術的な改善を阻んでいる可能性がある。
ウェブラッパーの構造的な代償
天気アプリが1.2GBを消費する機序は単純だ。WebView2でウェブページを描画するには、Chromiumのレンダリングエンジンをアプリごとに起動しなければならない。GPUプロセス、ネットワークプロセス、レンダラー、ユーティリティ。ブラウザのタブを1つ開くのと本質的に同じ負荷が、天気の確認という行為にかかっている。
| Windows 11 | macOS | |
|---|---|---|
| アプリの構造 | ||
| 実装方式 | WebView2 | ネイティブ |
| プロセス数 | 9 | 1 |
| RAM消費 | 1.2GB超 | 246.7MB |
| ユーザー体験 | ||
| 広告 | あり | なし |
| 詳細度 | 同等 | 同等 |
| MSA要求 | 推奨 | 不要 |
macOSの天気アプリは、ネイティブフレームワークで書かれた単一プロセスだ。天気データの取得と表示に必要な処理だけが走る。ブラウザエンジン一式を常駐させる必要がない。
この差は天気アプリに限った話ではない。Windows 11では動画編集アプリのClipchampもWebView2ベースだ。Copilotに至っては、WinUIベースの「ネイティブアプリ」に一度なった後、再びEdgeを丸ごと同梱するウェブラッパーに戻った。ネイティブ回帰を掲げながら、足元のアプリがウェブラッパーのままというのがWindows 11の現在地だ。
広告が消えても、1.2GBは消えない
Microsoftは2026年7月、Windows 11の検索から広告を削除する方針を発表した。OS全体で広告を減らす動きは進んでいる。仮に天気アプリの広告が将来的に消えたとしても、WebView2の構造が変わらない限り、9つのプロセスと1.2GBのRAM消費はそのまま残る。
MicrosoftがWinUIの性能改善を重ねているのは事実であり、WebView2の効率化にも取り組んでいるという。だが、ウェブラッパーをどれだけ磨いてもネイティブアプリにはならない。天気アプリをWinUIで書き直せば、246.7MBに近い数字は十分に射程に入る。
天気というのは、PCを使うなかでもっとも日常的な情報の一つだ。朝、出かける前に確認する。傘がいるか、上着がいるか。それだけのことに1.2GBのRAMとブラウザエンジン一式が必要な世界は、技術の進歩とは呼べない。
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