CXMT製DDR5が8800MT/sに到達。16GBモジュールでSK hynixに並ぶ

3週間前に報告された弱点が、数字の上では急速に埋まりつつある。

CXMT製DDR5が8800MT/sに到達。16GBモジュールでSK hynixに並ぶ
CXMT

3週間前に報告された弱点が、数字の上では急速に埋まりつつある。


8600から8800へ、数週間で

中国のPCパーツメーカーColorful(七彩虹)が、自社のiGame Shadow IIメモリキットでDDR5-8800MT/sの安定動作を達成した。使われたのはCXMT(長鑫存儲技術)製の2Gbダイ。プラットフォームはAMDのX870Eで、iGame X870E Vulcan W OCマザーボードとの組み合わせだ。

構成に目を向けると面白い。32GB(16GB×2枚)と48GB(24GB×2枚)の両構成で8800MT/sを記録し、いずれもMemTestを100%パスしたとColorfulは説明している。

UNIKO's Hardwareの分析によれば、16GB×2枚での8800MT/s到達は技術的に難しい。

SK hynixのダイを使ったキットでも、Intel Z890のQVL(互換性検証リスト)では24GB×2枚構成で9600MT/sに達する製品がある一方、16GB×2枚構成は8200〜8600MT/sが上限になることが多い。容量が小さいほうが有利に思えるが、メモリコントローラへの負荷の掛かり方が異なり、16GBモジュールで高クロックを維持するのは別の技術的課題がある。

数週間前、同じColorfulが同じ構成で達成していたのはDDR5-8600MT/sだった。そこから200MT/sの上積みを短期間で実現した。

3週間前の弱点は消えたのか

この速度域は、SK hynixのA-dieやM-dieといった最上位ダイのオーバークロック領域と重なる。CXMT製ダイがSK hynix製と同じ土俵に立ったように見える数字だ。

ただ、7月にオーバークロッカーのSafedisk氏がテストした結果では、CXMT製DDR5ダイに4つの弱点が報告されていた。電圧を上げてもクロックが伸びない、サブタイミングの調整余地が小さい、バッチ間のシリコン品質にばらつきがある、そして手動オーバークロックの到達点でSK hynix製に劣る。

今回Colorfulが公開したスクリーンショットは解像度が低く、メモリタイミングやDRAM電圧といった詳細な設定値を読み取ることができない。参考として、市場に出回っている高速DDR5-8800キットのタイミングは42-55-55-140、電圧1.45V前後が典型的な設定だ。Colorfulの結果がこれと同等の条件で達成されたのか、それともより緩い設定なのかは、現時点では確認できない。

弱点が解消されたのか、それともColorfulのBIOS最適化が特定条件下で弱点を回避しているのか。判断材料はまだ足りない。

DUVで作ったダイが、EUV世代に追いつく意味

この結果を技術的な文脈で見ると、別の面が見えてくる。

CXMTは米国の輸出規制によりEUV(極端紫外線)露光装置を入手できない。DDR5ダイの製造に使っているのはDUV(深紫外線)ベースの16nmプロセスだ。これは大手3社(Samsung、SK hynix、Micron)がかつて使っていた1z nm(約14〜15nm)世代と同程度で、現行の最先端ノードからは数年遅れている。

SK hynixのM-dieは1a nm(約14nm)のEUVプロセスで製造される24Gb(3GB)ダイで、密度、電力効率、高周波数への到達性いずれでも世代的に上位にある。高速DDR5キットの大半がSK hynix M-dieの24GBモジュールで構成されているのは、この技術優位による。

CXMTが古い世代のリソグラフィで、新しい世代に匹敵する周波数を叩き出したというのが、今回の結果の本質的な意味だ。

CXMTダイとSK hynix M-dieの技術比較
CXMTSK hynix M-die
プロセスノード16nm1a nm(約14nm)
露光装置DUV(深紫外線)EUV(極端紫外線)
ダイ容量16Gb(2GB)24Gb(3GB)
モジュール構成16GB×2 / 24GB×224GB×2
最高OC到達速度8800MT/s9600MT/s
※OC到達速度はオーバークロック環境での最高記録。CXMTはColorfulのiGame Shadow II、SK hynixはG.Skillのキットで達成

プロセス技術の差がそのまま性能差に直結するとは限らないことを、実測値で示した。

マザーボードメーカーが地ならしを終えている

この結果は孤立した出来事ではない。2026年に入ってから、主要マザーボードメーカーがCXMT製DDR5ダイへのBIOSレベルの対応を急速に進めている。

MSIは7月にAMDおよびIntelプラットフォーム向けのCXMT対応BIOSを公開し、DDR5-8200の動作検証を完了した。GIGABYTEも7月下旬にAMDの800/600シリーズとIntelボード全般でCXMT対応を発表し、最大8200MT/sの動作を確認している。ASUSも同時期にB850M系ボードでCXMTダイの8400MT/s動作を報告した。

CXMT製DDR5のBIOS対応とOC記録の推移
2026年7月
MSI、CXMT対応BIOS公開
AMDおよびIntel向けにDDR5-8200検証完了
2026年7月
ASUS、B850MでCXMTダイ8400MT/s
CXMTダイの8400MT/s動作をB850M系ボードで報告
2026年7月
GIGABYTE、CXMT対応を発表
AMD 800/600シリーズとIntelボードで最大8200MT/s
2026年7月
Colorful、CXMT製ダイで8600MT/s達成
iGame Shadow II+X870Eで16GB×2枚構成
2026年8月
Colorful、8800MT/sに到達
16GB×2枚と24GB×2枚の両構成で安定動作
※速度はオーバークロック結果を含む。各社の公式保証速度はDDR5-8000〜8200

Colorfulの8800MT/sはオーバークロック結果であり、メーカー各社が公式に保証する速度域(8000〜8200MT/s)とは性質が異なる。だがメーカー側の対応は、CXMT製ダイが「認定された選択肢」として定着しつつあることを意味する。

買えるかどうかは、まだ先の話

このメモリを日本で買えるかと言えば、現時点では買えない。CXMT製ダイを搭載したメモリキットは、ほぼ中国国内市場に限定されている。CXMTの生産能力は2027年末まで大手OEMの予約で埋まっており、自作PC向けの国際流通はまだ始まっていない。

だが供給網の変化は始まっている。CorsairのDDR5メモリキットにCXMT製ダイが搭載されていた事例が5月に確認され、HP、Dell、AcerなどのOEMも中国市場向け製品でCXMT製メモリを採用し始めた。

CXMTは7月27日に上海証券取引所のSTARマーケットに上場し、初日に株価が466%急騰。時価総額は約3兆3000億元に達し、一時A株市場で最大の上場企業となった。約86億ドルの資金を調達し、その大半をDRAM生産能力の拡大に投じる計画だ。

EUVなしで8800MT/sに到達したダイと、その生産を年間数十万枚のウェーハ規模で回す資金。CXMTが持っているのは、今この瞬間のベンチマーク記録ではなく、DRAM市場の勢力図を書き換えるための時間と資本だ。

関連記事

この記事を共有する