Windows Update、ドライバー上書き問題を解消へ

Windows Update、ドライバー上書き問題を解消へ

Windows Updateが、ユーザーが自分でインストールした新しいGPUドライバーを古いバージョンに勝手に上書きしてしまう。長年悩まされてきたこの問題に、Microsoftがようやくメスを入れる。


4部HWIDを2部HWID+CHIDに切り替える

Microsoftが5月12日に公開した公式ブログで、グラフィックスドライバーの配布ポリシーを抜本的に変更すると発表した。中核は、これまで使われてきたHardware ID(HWID)4部構成の配布方式を、より絞り込んだ2部HWID+CHIDの組み合わせに置き換えるというものだ。Computer Hardware ID(CHID)は、コンピューター全体を識別するIDを意味する。

公式ブログの冒頭は、Microsoft自身が問題の存在を認める一文で始まる。

グラフィックスドライバー領域で寄せられる顧客フィードバックの最上位は明確だ。「Windows Updateが私のドライバーをダウングレードする」というものだ。

このダウングレードは、技術的にはWindows Updateの「ランク付け」の仕組みに起因する。GPUベンダーやOEMが配布する4部HWIDマッチのドライバーが、ユーザーが手動で入れた新しいドライバーよりも「ランクが高い」と判定され、結果として置き換えが発生する。バージョン番号や日付ではなく、HWIDの一致度合いで優先度が決まる構造だ。

つまり、ユーザーが最新版を入れていても、Windows Updateは平然と古い「ランクの高い」ドライバーで上書きしにいく。これがNVIDIA、AMD、Intel問わず、グラフィックス周りでもっとも苛立たしいトラブルの源泉になってきた。

グラフィックスドライバー配布方式の構造変化
これまでの方式 新しい方式
識別ID 4部Hardware ID 2部HWID
+ CHID
配布の
絞り込み
広範マッチ PC単位で限定
CHIDの
設定箇所
未使用 出荷ラベル段階
ドライバー
INFの変更
不要
強制上書き 発生する 抑制される
適用対象 既存全デバイス 新規デバイス
のみ
※ 4部HWIDは過去にWindows Updateで4部HWIDドライバーが当たったデバイスで継続使用される。新方式は新規デバイス向けのディスプレイドライバー提出にのみ適用される。

新規デバイス限定、既存環境は救済されない

ここで注意すべきは、新しいポリシーが適用される範囲だ。

公式ブログは、対象を「新規デバイス向けの新しいディスプレイドライバー提出」と明示している。既存ドライバーは現行のまま動き続けるということだ。

Microsoftが定義する「新規デバイス」とは、過去に4部HWIDのWindows Updateドライバーが入ったことのないデバイスを指す。4ID履歴を持つPC、すなわち既に何度かWindows Update経由でGPUドライバーが当たってきた大半の既存ユーザーは、GA(本格適用)後の保護対象から外れる。

長年の不満を持っていた既存ユーザーにとって、ここはやや残念な点だと感じる。新しく組むPC、新しく買うラップトップは恩恵を受けるが、いま使っているマシンは引き続き勝手にダウングレードされる可能性が残る。

ドライバーINFは触らない、CHIDはshipping labelで指定

実装面で興味深いのは、IHV(独立系ハードウェアベンダー)とOEMの作業負担を最小に抑えている点だ。

CHIDはドライバーのINFには含めない。Hardware Dev Centerの出荷ラベルの段階で適用される。

ドライバーパッケージそのものには手を入れず、Microsoft側の認定ポータルで配布範囲を絞り込む。この設計により、既存のドライバー製造・パッケージングの工程に変更は不要だとMicrosoftは説明している。

OEMは自社デバイス向けのCHIDを指定するだけで、どのドライバーが自社製品に届くかを完全にコントロールできる。IHVがOEM代理で配布する場合は、OEMの承認を得てCHIDを指定する形になる。既存の製造工程は無変更で済む。

Hardware ID(HWID)とComputer Hardware ID(CHID)とは?
HWIDはGPUチップ自体のベンダー・デバイスIDを示し、CHIDはマザーボードや筐体を含む「コンピューター全体」を識別するIDだ。4部HWIDは互換性の幅が広く、2部HWID+CHIDは「このGPUを、このコンピューターに搭載した場合」のみという、より狭い適用範囲を作り出す。

パイロットは2026年4月から、本格適用は年末

スケジュールは2段階で組まれている。

パイロット期間は2026年4月から9月まで。この間にMicrosoftはパートナーから「2部HWID+CHIDでは足りないシナリオ」を収集する。本格適用、いわゆるGA enforcementは 2026年Q4〜2027年Q1 にかけて開始される予定だ。

ディスプレイドライバーのみ対象で、ほかのドライバークラスは現時点で適用外だとMicrosoftは明記している。プリンタやネットワークアダプタなどは従来通りの仕組みが続く。

ポリシー切り替えのスケジュール
2026年
5月12日
発表ポリシー変更を公表
Microsoftが公式ブログで、4部HWIDから2部HWID+CHIDへの切り替えを公表。
2026年
4月〜9月
試験運用パイロット期間
IHV・OEMから「2部HWID+CHIDで足りないシナリオ」のフィードバックを収集。本格適用前の調整期間として機能する。
2026年Q4
〜2027年Q1
本格適用GA enforcement
新規デバイス向けディスプレイドライバー提出への2部HWID+CHID強制が段階的に開始。既存4ID履歴を持つデバイスは現行枠組みを継続。
※ パイロットは2026年4月開始だが、Microsoftによる公式アナウンスは同年5月12日。GAは新規デバイス向けの新規ドライバー提出のみが対象。

どれほど深刻だったか

ドライバー強制ダウングレードへのユーザーの不満は、長年にわたって積み重なってきた。

技術メディアWindows Latestの実環境テストでは、Windows Updateが2026年4月時点のドライバーを2024年以前のバージョンで置き換える事例が観測されたという。Microsoftのフィードバック Hubには、ドライバー上書き問題に関する2万件以上の賛成票を集めた投稿が存在する。

ユーザーが何年も声を上げ続け、ようやくMicrosoftが構造に手を入れる決断をした。公式ブログが冒頭で問題の存在を率直に認めたところに、姿勢の変化を見る思いがする。

ただ、救済対象が新規デバイスのみという点は、苦笑いを誘う。いま手元のPCで毎月のようにドライバーを巻き戻されている人には、まだしばらく我慢が必要だ。


参照元

他参照

関連記事

この記事を共有する