Forza Horizon 6が4秒で起動、AMD Radeonにシェーダー配信が来た

Forza Horizon 6が4秒で起動、AMD Radeonにシェーダー配信が来た

ゲームの初回起動で1分半待たされていた読み込みが、4秒で終わる。Microsoftのシェーダー先行配信技術が、ついに一般のAMD Radeonへ降りてきた。ただし、置いていかれたカードもある。


90秒が4秒になった、その中身

ゲームを起動して、進捗バーが少しずつ伸びるのを眺める時間。あれが何のための時間なのか、考えたことはあるだろうか。

多くの場合、待たされているのはシェーダーのコンパイルだ。シェーダーは画面の光や質感、物理挙動を計算する小さなプログラムで、PCのGPUとドライバの組み合わせごとに最適な形へ変換しなければ動かない。この変換を起動時にまとめてやると長い読み込み画面になり、プレイ中に少しずつやると、あの不快なカクつき(スタッター)になる。

Microsoftが進めている Advanced Shader Delivery(ASD)は、この変換を「配信時」に済ませてしまう発想だ。ゲームをダウンロードする段階で、その人のハードウェアに合わせて事前コンパイル済みのシェーダーを一緒に届ける。起動時にもプレイ中にもコンパイルが要らなくなる。

そして数字が出てきた。Forza Horizon 6で計測したところ、起動の読み込みは 約1分半から4秒 へ短縮された。Microsoftはこれを95%の時間削減と表現している。計測機材はRadeon RX 7600とRyzen 7 5800。決してハイエンドではない構成で、待ち時間がほぼ消えた。

Forza Horizon 6 起動読み込み時間(ASDの有無)
※ Microsoft計測値。Radeon RX 7600 + Ryzen 7 5800構成。「約1分半」を90秒として図示。
起動の速さは、地味だが毎日積み重なる。1日に数回ゲームを立ち上げる人にとって、1分半と4秒の差は、年単位で見れば無視できない時間になる。

「Xbox Ally専用」から「普通のPC」へ

ここで一度、ASDがどこから来たのかを振り返っておきたい。なぜ今になって一般のPCに広がったのか、という話につながる。

ASDが最初に世に出たのは2025年10月、ROG Xbox Allyという携帯ゲーム機の上だった。携帯機はハードウェア構成が固定されているぶん、事前コンパイルとの相性が良い。いわば実験場として手堅い選択だった。

今回の発表で、その対象が Windows 11搭載PC へ広がった。デスクトップ向けの単体GPUと、ゲーミングノートの内蔵GPUの両方が含まれる。携帯機という閉じた環境で検証した技術を、構成がバラバラな一般PCへ持ち出した格好になる。

対象となるのはAMDのRDNA 3、RDNA 3.5、RDNA 4アーキテクチャだ。製品名で言えばRadeon RX 7000、RX 9000シリーズや、Ryzenに載る内蔵グラフィックスRadeon 700M、800Mが含まれる。比較的新しいRadeonを使っているなら、対象に入っている可能性が高い。

試すための条件は、少しだけ高い

良い話には、たいてい注釈がつく。ASDを今すぐ体験するには、いくつか条件を満たす必要がある。

OSはWindows 11 24H2以降。ドライバはAMDの Adrenalin 26.5.2 以降が必須で、それより古いドライバでは動かない。このドライバ自体は5月14日に公開され、Forza Horizon 6と007 First Lightへの対応が追加されている。

そして見落としやすいのが配布チャネルだ。今回のASDは「PC Gaming Preview」というXbox Insiderのプログラム経由でのみ提供される。誰でも自動的に降ってくる更新ではなく、自分でInsiderに登録して取りに行く必要がある。

動作しているかどうかは、ゲームの起動画面に「Precompiled shaders installed」(事前コンパイル済みシェーダーがインストール済み)という表示が出るかで確認できる。

対応タイトルも、まだForza Horizon 6が中心だ。しかも今のところXbox PCアプリ版が前提で、Steam版で同じように機能するかは明言されていない。技術としての完成度と、手元で使える範囲の広さは、まだ別の話だと考えておいたほうがいい。

RDNA 2が対象から外れた理由

発表に対する反応を見ていくと、称賛の隣に同じ質問が何度も並んでいた。「これはRDNA 2でも使えるのか」。AMDの開発者向けアカウントの投稿には、複数のユーザーが繰り返しそう尋ねている。

答えは、現時点では「いいえ」だ。対象はRDNA 3以降であり、RX 6000シリーズなどのRDNA 2世代は今回の対応リストに入っていない。新機能が新しい世代から先に来る流れが、AMDのGPUでは何度か繰り返されてきた。

MicrosoftはASDを今後数か月でほかのWindows対応デバイスへ広げると述べているが、RDNA 2への対応時期は具体的に示していない。RX 6000を現役で使っている人にとって、いつ順番が回ってくるか見えないのは心細い。今すぐ恩恵を受けられる層 と、見通しのないまま待つ層に分かれたのは確かだ。

リプライ欄には「自分の愛するLinuxにも来るのか」という声もあった。こちらの答えはさらに見えにくい。ASDはWindows 11のDirectXに組み込まれた仕組みであり、Linux対応の予定は今のところ示されていない。

NVIDIAとIntelは、まだ「準備中」

シェーダーのカクつきはAMDだけの問題ではない。だからこそ、他のGPUメーカーがどこにいるのかも見ておきたい。

ASDの構想自体は、AMD、Intel、NVIDIAの3社すべてが関わって進められている。NVIDIAは「年内にGeForce RTXユーザー向けのASDを立ち上げる」とコメントし、IntelもLunar Lake、Panther Lake世代での対応を表明している。方向としては、業界全体がこの仕組みへ向かっている。

それでも、実際に一般ユーザーが今日触れるのはAMDだけだ。リプライ欄には、NVIDIA向けのドライバは内部的には存在するものの、現状は開発者向けの限定的な経路でしか手に入らず、一般公開のGame Readyドライバとしては降りてきていない、と詳しく説明する投稿もあった。実機に届いたのはAMDが最初 という事実は、ここで一度はっきりさせておきたい。

GPUメーカー3社のASD対応状況
項目 AMD NVIDIA Intel
提供段階 実機提供中 表明のみ 表明のみ
対象 RDNA 3 / 3.5 / 4 RX 7000・9000など GeForce RTX 年内対応を表明 Lunar Lake /
Panther Lake 対応を表明
一般ユーザーの
入手
可能 未提供 未提供
※ ASDの構想自体は3社が共同で関与。実機プレビューに到達しているのは現時点でAMDのみ。

つまり今回の発表は、3社競争の号砲というより、AMDが一歩先に実機へ届けたという話だ。Microsoftは今後数か月でWindows対応デバイスと他社ハードウェアへ広げると述べている。シェーダーコンパイルという、PCゲームが長く抱えてきた古い痛みが、ようやく業界全体で削られ始めた。次に4秒の起動を体験するのが、どのGPUの持ち主になるのか。


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