AICoreが10GB食う理由、Googleがついに釈明

Pixelユーザーが長年悩まされてきた「AICore」のストレージ肥大化問題に、Googleがついに重い口を開いた。理由は、フェイルセーフのために新旧2バージョンのAIモデルを最大3日間並行して保持しているためだという。

AICoreが10GB食う理由、Googleがついに釈明

Pixelユーザーが長年悩まされてきた「AICore」のストレージ肥大化問題に、Googleがついに重い口を開いた。理由は、フェイルセーフのために新旧2バージョンのAIモデルを最大3日間並行して保持しているためだという。


「これって何?」と検索する前に、ストレージは消えていた

ここ1〜2年、AndroidのストレージにGB単位で居座る謎のシステムサービスがある。名前は「AICore」。Pixel 8 Pro以降のデバイス、Galaxy S24シリーズ、一部のOnePlusやXiaomiの端末には、ユーザーの許可なくこのアプリが常駐し、ある日突然10GB近くまで膨れ上がる。

Googleは2026年5月初旬、Androidの公式サポートページにこのAICoreの仕様を解説するセクションを追加した。長年のユーザーの怒りに、ようやく公式回答が出た格好になる。

公式の説明によれば、ストレージ使用量が一時的に増えるのは、バックグラウンドで AIモデルの更新 が走っているときだという。Gemini Nanoのような数GB規模のモデルを更新する際、AICoreは新旧両方のバージョンを最大3日間並行して保持する。これは「新バージョンに不具合があった場合、瞬時に旧バージョンへ戻せるようにするフェイルセーフ」だと説明されている。

アップデートが安定したと確認されると、余分なストレージ領域は自動的に解放される。

新バージョンが壊れていた場合、もし旧モデルを即座に削除していれば、ユーザーは数GBものデータを再ダウンロードする羽目になる。回線が不安定な場所では致命的だ。理屈としては筋が通っている。


AICoreは何者か

AICoreはAndroid 14と同時に投入された、オンデバイスAIのための裏方サービスだ。中央集権的なマネージャーとして、Gemini Nanoをはじめとする基盤モデルのダウンロード・更新・実行を一手に引き受ける。

このサービスが動かしているのは、Androidに組み込まれた多くの「賢い機能」である。Google Messagesのスマートリプライ、レコーダーの音声要約、Pixel スタジオの画像生成、通話メモ、Gboardの文章校正、迷惑メッセージの検出。ユーザーが日常的に触っている機能の裏側に、AICoreがいる。

オンデバイスで処理が完結することの利点は明確だ。データはクラウドに送信されず、機内モードでも動作し、サーバー応答を待つ遅延もない。プライバシーと応答速度の両立を狙った設計思想そのものは、評価されてしかるべきだ。

問題は、その代償が 見えにくい場所 に押し付けられていることにある。

Play Storeに溢れる怒りの声

公式説明が出る前、ユーザーの感情は別の場所で発火していた。Google Play StoreのAICoreページの星評価は、レビュー2万件超で「3.0」。Googleの基幹サービスとしては低い数字だ。

最近のレビューを覗くと、温度感がよく分かる。

このアプリ、もう5回もアンインストールしたのに、また勝手に戻ってくる。私のストレージを10GBも食う。毎週ストレージ整理のたびにこいつをアンインストールしている。AI機能なんて使わないし、私が金を払って買った端末に勝手にインストールする許可なんて出していない。

このレビューには3人が「参考になった」を押している。別のユーザーはこう書いている。

イベントの最中に突然ストレージが足りなくなって、写真が撮れなくなった。よく見たらこのナンセンスが 8GB も食っていた。無効化したら子どもの写真がまた撮れるようになった。要らないアプリのために、8GBの空きが7.99GB程度の余裕しか残されていなかった。

12人がこのレビューに共感を示している。

5GB、6GB、11GBと使用量を訴える書き込みは枚挙にいとまがない。「AIなんて使っていないのに」という共通項が、怒りの底にある。


「使っていない人」にも降ってくる

Googleの説明は技術的には妥当だ。だが、その説明が答えていない問いがある。AIを使わない人 から、なぜ無断で数GBを徴収するのか。

PixelやGalaxyのフラッグシップは、最低構成でも128GBのストレージを積んでいる。だがAndroid Policeのレポートによれば、Pixel 10 Pro(米国版・128GB)では、システムファイルとAICoreを含む消せないアプリ群を引いた段階で、ユーザーが実際に使えるのは96GB前後しか残らないという。新品開封から2週間で、4分の1のストレージが「触れない領域」と化す計算だ。

しかも問題はストレージだけにとどまらない。Android AuthorityがPixel 9 Pro XLを実測したところ、AICoreとTensorチップのAIプロセッサ専用に約2.6GBものRAMがロックされていることが判明している。OSがあらかじめメモリを切り取って、AI処理のために確保している。

AICoreはシステムアプリ扱いであり、Play Storeの「アンインストール」ボタンが用意されていない。完全に削除する手段はない。

半端な「無効化」しかできない

不満を抱えたユーザーが取れる手段は、限定的だ。設定 > アプリ > すべて表示 > AICore と進み、「無効にする」を押し、メニューから「アップデートのアンインストール」を選ぶ。これでダウンロード済みの大型モデルが消え、サービスが停止する。

この処置と引き換えに失うものもある。オフラインのスマートリプライ、Pixel スクリーンショット、通話メモの自動要約、レコーダーの音声要約、Gboardの高度な文章校正。普段使っていなければ気にならない機能群だが、たまに頼りにしている人にとっては、選択を迫られる構図になる。

AIは使わない、でもPixel Studioは便利だから残したい——そんな部分的な選択肢は、用意されていない。

これは設計の問題であって、技術の問題ではない。


説明と納得は別物

Googleの今回の公式説明は、長らく続いた「これは何だ」「なぜ消せない」というユーザーの混乱に、初めてまともな回答を提示したものだ。フェイルセーフという発想自体は防御的に正しいし、Gemini Nano 4への移行が控えている今、同様の一時的な肥大化が再発する可能性も高い以上、仕組みを開示しておく価値はある。

ただし、説明されたからといって、不満が消えるわけではない。ストレージとRAMを切り崩している主体は、ユーザーが意識的に選んだ機能ではなく、メーカー側が「いずれ便利になるはずだから持っておけ」と先払いさせている未来のためのインフラだ。

128GBの端末を米国で約999ドル(約15万7,000円)で売りつつ、その十数パーセントを使いもしないAIモデルに割り当てる。この構造を「フェイルセーフ」の一語でユーザーに飲み込ませるのは、いささか虫が良すぎる。

スマホのストレージは、もはや写真や動画やアプリのためだけのものではなくなりつつある。AIという見えない基盤を抱える時代に、私たちは何を「自分のもの」と呼べるのだろうか。


参照元

他参照

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