マスク、OpenAI公判の2日前にブロックマンへ和解打診と恫喝

イーロン・マスクが公判開始の2日前にOpenAI社長へ和解を打診し、断られた直後に「君とサムはアメリカで最も嫌われる男になる」と送りつけていた。法廷へ提出された書面でやり取りが明らかになり、証拠採用が申請されている。

マスク、OpenAI公判の2日前にブロックマンへ和解打診と恫喝

イーロン・マスクが公判開始の2日前にOpenAI社長へ和解を打診し、断られた直後に「君とサムはアメリカで最も嫌われる男になる」と送りつけていた。法廷へ提出された書面でやり取りが明らかになり、証拠採用が申請されている。


「最も嫌われる男になる」と送られた一通

オークランドの連邦地裁で進むマスク対OpenAIの公判が、想定外の局面を迎えている。CNBCが報じた日曜深夜の書面によれば、イーロン・マスク(Elon Musk)はおおよそ2026年4月25日、公判初日の2日前にあたるその日、OpenAI社長のグレッグ・ブロックマン(Greg Brockman)に対してテキストメッセージを送り、和解の意向を確認していた。事実関係は、サム・アルトマン(Sam Altman)とブロックマン側の弁護人が日曜夜に提出した書面に基づく。ロイター電も同内容を伝えている。

ブロックマンは「双方が請求を取り下げる形ではどうか」と返したという。注目すべきは、その提案を受け取った直後のマスクの反応だ。

「By the end of this week, you and Sam will be the most hated men in America. If you insist, so it will be.」(今週末までに、君とサムはアメリカで最も嫌われる男になる。そう望むなら、そうなるだろう)

数十億ドル規模の訴訟を自ら起こしておきながら、開廷の直前になって相手へ和解を打診する。そして拒まれた瞬間に、相手の社会的評価そのものを脅す。この温度差が、訴訟のもう一つの面を浮き彫りにしている。

弁護団は「動機の証拠」として採用を申請

OpenAI側の弁護団は、このメッセージを公判の証拠として採用するよう申請した。書面の中で弁護団は、メッセージが「動機と偏見を示すもの、特にマスク氏が訴訟を起こした動機が競合企業を攻撃することにある点を裏付けるものだ」と主張している。

ブロックマンは月曜(5月4日)にも証言台に立つ予定で、OpenAIの弁護団は彼の尋問の際にこのメッセージを持ち出すつもりだとも書面に記している。

ここで、訴訟の核心と、訴訟を起こした側の動機が同じ俎上に載る。マスクは2024年に提訴し、2015年の創業時の「人類のための非営利」という約束を裏切られたと主張してきた。一方、被告側は当初から「これは慈善訴訟の体裁をとった競合潰しだ」という反論を組み立てていた。今回のメッセージは、その被告側の反論を強化する材料になる可能性がある。

「請求を取り下げる」という相手の提案を受け取って、その瞬間に「敵」として扱う。和解の打診そのものが交渉ではなく、優位を確認するための儀式だったのではないか――被告側はそうした疑念を陪審に印象づけたいのだろう。

マスクが訴える「慈善の盗用」と、xAIという別軸

マスクは訴訟で、自らがOpenAIに寄付したおよそ 3800万ドル(約59億7000万円)が「無断で営利目的に使われた」と主張している。証言台では、OpenAIの営利化を「bait-and-switch(おとり商法)」と呼び、「彼らは慈善を盗もうとしている。我々はそれを止めようとしているだけだ」と語った。

ただ、その主張を聴く側にとって素直に受け取りづらい背景がある。マスクは2018年にOpenAIの取締役を辞した後、2023年に独自のAI企業xAIを立ち上げた。xAIは2026年2月に宇宙開発企業のスペースXと統合され、評価額 2500億ドル (約39兆2500億円)規模の存在となっている。

つまりマスクは「慈善の守護者」という立場と、「OpenAIと競合する企業の所有者」という立場を同時に背負って法廷に立っている。OpenAI側の弁護団が「攻撃の動機」と書いたのは、この二重の立場を指してのことだ。

マスクが2024年の提訴より前に、すでにxAIを発足させていた事実を、陪審はどう受け止めるだろうか。

公判はどこへ向かうのか

公判はオークランド連邦地裁のイボンヌ・ゴンザレス・ロジャーズ判事のもとで、2026年4月27日に陪審選定から始まり、4月28日に本格的な審理に入った。マスクは先週3日間にわたり証言台に立ち、自身のOpenAI設立への関与や、アルトマンとブロックマンが「慈善を盗もうとした」とする見立てを繰り返した。

OpenAI側はマスクの主張を「根拠がない(baseless)」と退け、訴訟の動機そのものに疑義を投げかけている。マスクが求めているのはOpenAIの経営体制の変更と、OpenAIおよびマイクロソフトに対する 1500億ドル (約23兆5500億円)規模の損害賠償だ。アルトマン、ブロックマン、そしてマイクロソフトのサティア・ナデラCEOも、今月中に証言予定とされている。

公判は今週月曜の現地時間午前11時30分、ブロックマンの証言から再開する。判決の見通しは5月中旬とされている。

訴訟、和解打診、そして恫喝。これら3つが並んだ状況で、陪審はマスクの動機をどう受け止めるのか。今週の法廷は、一通のテキストを軸に動く。

裁判はまだ序盤に過ぎない。和解を試みた直後に「最も嫌われる男になる」と書いたメッセージは、訴訟の建前と本人の動機との距離を、本人の言葉で陪審に示してしまった。


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