AMD Zen 6、3種目のコア「LP」がLinuxパッチで判明
Zen 6のコア構成が2種類では終わらないという話は、リーク段階から出回っていた。Classicコア、Denseコア、そしてもう1つ。2026年6月29日、AMDのエンジニアがLinuxカーネルのメーリングリストに2本のパッチを投稿した。その「もう1つ」を公式に裏付ける内容だった。
性能でも効率でもない、3つ目の分類
パッチを投稿したのはAMDのヴィシャル・バドレ(Vishal Badole)氏。内容は、Linuxカーネルのx86トポロジにおけるCPUコアタイプの分類を拡張するものだった。従来はPerformance(性能)とEfficiency(効率)の2種類しかなかったところに、Low Power(低電力)という第3のタイプを追加する。
パッチの説明文によれば、AMDのヘテロジニアスプロセッサはCPUID命令の拡張トポロジ情報でコアタイプを報告する。値「2」が低電力コアを示す。バックグラウンド処理やアイドル時の消費電力を最小限に抑えることに特化したコアだという。
パッチが対処している実務上の問題は2点ある。1つは、Linuxのデバッグ用インターフェースが現時点でこの低電力コアを「unknown」と表示してしまう問題。もう1つは、低電力コアのブーストクロック制御を既存のエフィシエンシーコアと同じパスで処理する必要がある点だ。後者はAMDの電力管理フレームワーク(CPPC)に関わる部分で、低電力コアが固定の性能上限値ではなく動的な最高性能値でスケーリングするよう修正している。
たった十数行のコード変更だが、x86に新しいコアカテゴリが生まれるのは大きい。
AMDにとっての「初」
ここで整理しておくと、AMDのZenアーキテクチャは長らくコアタイプの違いが小さかった。Zen 4世代で初めてClassic(通常版)とDense(高密度版のZen 4c)の2種構成が導入され、Zen 5でもZen 5とZen 5Cという同様の2層構造が継続されている。ISAは共通、キャッシュ構成も基本的に同じで、ダイ面積と動作クロックの最適化ポイントだけが異なる。
対するIntelは、Alder Lake以降PコアとEコアという異なるマイクロアーキテクチャを混載してきた。Meteor Lakeではさらに低電力Eコア(LP Eコア)をSoCタイル上に追加し、3層構造に踏み込んでいる。Lunar LakeではEコア自体を低電力アイランドに配置する設計に切り替えたが、次世代のNova Lakeでは再びPコア・Eコア・LPコアの3種構成に戻るとされている。
今回のパッチで明示された「Low Power」は、Intelが先行するこの3層構造にAMDが本格的に踏み込む最初の公式な証拠だ。ISAを統一したままコアの電力特性だけを3段階に分ける設計は、IntelのようにPコアとEコアで異なるマイクロアーキテクチャを使う方式とは根本的に異なる。AMDの方式なら、OSやアプリケーションから見ればすべて同じ命令セットのコアであり、互換性の問題が生じにくい。
どこに載るのか
リーク段階の情報によれば、このLPコアが最初に搭載されるのはMedusaファミリーのAPU、とりわけMedusa Pointとされるモバイル向け製品だ。リーカーのHXL氏が公開した構成案では、Ryzen 5/7クラスのモデルで4つのClassicコア、4つのDenseコア、2つのLPコアという10コア構成が、Ryzen 9クラスでは12コアCCDを追加した最大22コア構成が示されている。
デスクトップ向けのOlympic RidgeでもLPコアの搭載が報じられている。Moore's Law Is Deadのリーク情報によれば、I/OダイにZen 5ベースの低電力コアが2基統合され、12コアCCD×2基と合わせて最大26コア構成になるという。LPコアがZen 6ではなくZen 5ベースになる可能性も指摘されている。今回のカーネルパッチはコアタイプの分類を追加するものであり、LPコアの具体的なマイクロアーキテクチャについては言及していない。
| コアタイプ | Medusa Point (R5/7) | Medusa Point (R9) | Olympic Ridge |
|---|---|---|---|
| Classicコア | 4基 | 4基 + 12基 (CCD) | 12基×2 (CCD) |
| Denseコア | 4基 | 4基 | — |
| LPコア | 2基 | 2基 | 2基 |
| 合計 | 10コア | 22コア | 26コア |
LPコアの性能についてもMLIDのリーク情報がある。IPCはZen 5 Classicの65〜75%、クロックは50〜60%の水準で、1コアあたりの消費電力は1W以下。IntelのEコアよりも消費電力が低いという。ただし、これは4nmプロセスでのシミュレーション結果とされており、実際の製品で採用されるプロセスノードによって数値は変わりうる。
見えてきた設計思想
今回のパッチだけでは、AMDがLPコアをどれほど本格的に活用するのかはわからない。だが少なくとも、Performance・Efficiency・Low Powerの3分類がLinuxカーネルに登録され、電力管理のコードパスまで整備されている。実験ではなく、製品に載せる前提の準備だ。
MedusaチップはCES 2027前後に正式発表されるとみられており、Olympic Ridgeも2027年の登場が有力だ。AMDの3層コア構造が実際の製品でどう機能するかはまだ見えないが、Linuxカーネルの受け入れ態勢は整いつつある。
参照元:x86/topology: Add support for Low Power cpu type
他参照:AMD Linux Patches Introduce New "Low Power" CPU Core Type
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