レクイエム、フランスでは55%がパッケージ版。「デジタル90%」の内側
カプコンの「デジタル90%」を分解すると、新作AAAの現実はまるで違う。
カプコンの「デジタル90%」を分解すると、新作AAAの現実はまるで違う。
見えなくなる数字
カプコンの2026年4-6月期の決算で、ゲーム売上の93.3%がデジタルだったことが明らかになった。ソニーが2028年1月のディスク廃止を発表した直後の数字だけに、「やっぱり物理はもう終わり」という語りを後押しする材料として広まった。
だが、この93.3%には仕掛けがある。
カプコンの四半期売上のうち、PCが60.4%を占めている。PCにはそもそもディスクドライブがない。PCの売上を除いたコンソール単体でみると、物理比率は推定で約17%まで跳ね上がる。
さらに、この四半期で売れたタイトルの89%はカタログタイトルだ。『モンスターハンター:ワールド』や『バイオハザード7』のような、何年も前に発売されたタイトルが大半を占めている。
旧作を今から物理で買う人はほとんどいない。旧作のデジタル比率が全体平均を引き上げている。
では、新作AAAはどうなのか。
国ごとに割れるレクイエムの売上
ゲーム業界アナリストのクリストファー・ドリング氏(Christopher Dring、The Game Business共同設立者)が、Ampere Analysisのデータをもとに、『バイオハザード レクイエム』の国別パッケージ版比率を共有した。6月末までの集計だ。
In the US, just 22% of Resident Evil Requiem's sales were physical (to end of June), but it was over 55% physial in France, 51% in Japan, 43% in Australia and 40% in UK. This is according to Ampere. Not all markets are built the same when it comes to the digital transition
— Christopher Dring (@Chris_Dring) August 12, 2026
フランス:55%がパッケージ版。デジタルより多い。
日本:51%。ほぼ半々だが、こちらもパッケージ版が上回った。
オーストラリアでは43%、イギリスでは40%。カナダは29%、サウジアラビアは12%。そして米国は22%。
| パッケージ版 | デジタル | |
|---|---|---|
| フランス | 55% | 45% |
| 日本 | 51% | 49% |
| オーストラリア | 43% | 57% |
| イギリス | 40% | 60% |
| カナダ | 29% | 71% |
| 米国 | 22% | 78% |
| サウジアラビア | 12% | 88% |
ゲームは一つ。発売日も価格帯も変わらない。それでも国によって数字がここまで開く。
Ampere Analysisのゲームリサーチ責任者、ピアス・ハーディング=ロールズ氏(Piers Harding-Rolls)は、カプコンの「デジタル93%」という全体数字の内訳を指摘している。
💿Resident Evil Requiem’s physical vs. digital sales across different countries.
— RENEWS (@RENews_X) August 12, 2026
Piers Harding-Rolls, Head of Games Research at Ampere Analysis, shared new estimates for Resident Evil Requiem’s physical sales through the end of June 2026, following Capcom’s recent comments:… pic.twitter.com/aUKpQsdm7G
この四半期の販売本数の89%がカタログタイトル(旧作)だった。新作AAAの物理比率は全体平均とは別の現実にある、と。
米国だけを見ると見誤る
米国の22%だけを見れば、「物理は終わった」と結論づけるのは簡単だ。
だが、『バイオハザード レクイエム』は発売以来800万本以上を売り上げている。仮に全市場の物理比率を加重平均で30%とすれば、約240万本がパッケージ版で売れたことになる。mp1st.comは、各市場の売上比率から逆算して物理版は約300万本と推計している。
しかも、パッケージ版は発売直後にほぼ完売した。在庫不足だけが理由じゃない。需要そのものが供給を上回っていた。
米国でパッケージ版の入手が困難だったことを指摘する声も複数ある。十分な数が出荷されていたら、22%はもっと高かった可能性がある。
ドリング氏は返信のなかでこう書いている。仮にパッケージ版がゲーム売上全体の10%しかなかったとしても、その10%は数十億ドル規模の市場だ、と。
「デジタル移行」は一枚岩じゃない
任天堂は8月6日の決算で、2026年4-6月期のソフト売上のうち38.5%が物理版だったと報告している。ソニーのPlayStation向けソフトのデジタル比率は82%。カプコン全体では93%。
だが、この3つの数字を並べても物理メディアの全体像は見えない。
カプコンの93%にはPCの60%が入っている。任天堂の38.5%は、Switch OnlineやDLC、ダウンロード専用タイトルの売上も「デジタル」に含んだ数字だ。
さらにカプコンはSwitch 2のゲームキーカードをデジタル売上として計上した。箱に入っていても、中身がダウンロードコードならデジタルだ。
比較の前提が揃っていない数字を並べて「業界全体がデジタルに移行した」と語るのは、フランスで55%がパッケージ版で売れている現実を無視することになる。
ソニーは7月1日、2028年1月以降のPlayStation新作ディスク生産を終了すると発表した。その判断の根拠は、全体のデジタル比率だ。だが今回のデータは、全体の数字が地域ごとの需要の差を覆い隠していることを浮かび上がらせた。
フランスのユーザーが55%パッケージ版を選んでいる市場と、サウジアラビアの12%の市場を、同じ方針で扱えるのか。レクイエムのデータが、その疑問を数字にした。
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