Intel、Raptor Lakeを「今後何年も」継続。DDR5高騰が生んだ逆流
DDR5メモリの異常な高騰が、PC自作市場を揺さぶっている。Intelは旧世代CPUの供給を拡大し、来年にはさらなるリフレッシュも控える。
DDR5メモリの異常な高騰が、PC自作市場を揺さぶっている。Intelは旧世代CPUの供給を拡大し、来年にはさらなるリフレッシュも控える。
Raptor Lakeが「コアポートフォリオ」になった理由
IntelでエンスージアストチャネルのVP兼GMを務めるロバート・ハロック(Robert Hallock)氏が、Raptor LakeアーキテクチャをIntelの製品群の中核として今後何年も提供し続ける方針を明かした。
LGA 1700はまだ良いソケットだ。DDR4に興味を持つ人はたくさんいる。だから提供を続けるし、価格も時間をかけて正常に戻るだろう。
Raptor Lakeは第13世代・第14世代のIntel CPUに使われているアーキテクチャで、DDR4とDDR5の両方に対応するLGA 1700ソケットを採用している。2年前であれば「枯れた旧世代」と呼ばれていたはずの製品群が、いまIntelのロードマップの中心に座っている。
背景にあるのは、DDR5メモリの価格暴騰。値下がりを待っていたユーザーの前で、値札は逆方向に走り出した。
メモリ危機が変えた「安い方の選択肢」
2025年半ばに80ドル前後で買えた32GB DDR5-6000キットは、2026年8月時点で380〜600ドル(約6万〜9万5000円)にまで跳ね上がっている。1年で4倍以上。AI向けデータセンターがHBM(広帯域メモリ)の製造キャパシティを食い尽くし、消費者向けDDR5の供給が削られた。
DDR4も安全地帯ではない。2025年10月に60〜90ドルだった32GB DDR4キットは、2026年初頭には150〜180ドルに倍増した。Q3 2026にはさらに50%以上の値上げが見込まれている。ただしDDR5と比べれば、まだ「マシ」な水準にある。
DDR5の32GBキットが最低でも380ドル(約6万円)。DDR4が150〜180ドル(約2万4000〜2万9000円)。「安い」の定義が根底から変わっている。
この価格差が、すでにDDR4環境を持つユーザーや、予算に制約のある自作ユーザーをLGA 1700プラットフォームに引き戻している。
在庫不足と価格高騰のジレンマ
Intelはこの需要の急増を予測できなかった。ハロック氏は「想定外の需要流入」だったと認めている。
手頃なハードウェアを求める人たちは、それでもお金に見合う最速のものを欲しがる。それがAlder LakeとRaptor Lakeだった。突然の需要の流入が起きた。ウエハーを仕込むのはずっと前だから、予測は非常に難しい。
結果として、Raptor Lake CPUの価格が不安定になっている。Core i5-14600Kは2025年の大半で200ドル以下だったが、現在は約250〜260ドルに上昇し、品薄も続く。Core i7-14700Kも本来330ドル前後のところが380ドル近くに上がり、Amazonでは売り切れの状態が続いている。
旧世代CPUの価格が下がるどころか上がっていく。メモリ危機が生んだ歪みは、サプライチェーンの末端にまで波及している。
Raptor Lake Nextと「二層構造」の未来
Intelはこの状況に手を打ちにかかっている。来年初頭には「Raptor Lake Next」と呼ばれる新たなリフレッシュの投入が予定されている。Core 7、Core 5、Core 3の3ラインで展開し、最大20コア構成、LGA 1700ソケット互換を維持する。Core 200ブランドを引き継ぐとされるが、アーキテクチャ自体はRaptor Lakeのまま。新機能の追加はない。
DDR4環境でのゲーム性能
Raptor LakeがDDR4環境でどこまで戦えるのか。自作ユーザーが最も気にしている部分だろう。Core i7-14700KとCore i7-13700Kは、DDR4環境においてRyzen 7 5800X3Dとゲーム性能で肩を並べ、アプリケーション性能では上回ったとされている。ただし、DDR4自体がゲームにおける主要なボトルネックであることも明らかになっている。メモリが足を引っ張る以上、CPU側の差は限定的になる。
DDR4で組むことの合理性は、「性能上限が低くても、総コストを抑えられる」という一点に集約される。
メインストリームとエンスージアストの分離
ハロック氏は、Raptor Lakeの供給拡大が次世代のNova Lakeの犠牲の上に成り立つものではないと強調した。むしろIntelは、業界全体の動きとして、メインストリーム向けとエンスージアスト向けの製品ラインを明確に分離する方向に動いている。
DDR5が高すぎて手が出ないユーザーにはRaptor Lake。予算に余裕があるエンスージアストにはNova Lake。メモリ価格の二極化が、CPU市場そのものの二極化を加速させている。
旧世代が「新しい選択肢」になる異常
AMDも動いている。DDR4対応のAM4プラットフォーム向けにRyzen 7 5800X3Dを復活させ、DDR4ユーザーの受け皿を用意した。IntelとAMDの両社が、本来なら退場しているはずの旧プラットフォームに再投資している。
この状況がいつまで続くかは、メモリ価格の正常化にかかっている。業界の予測では、DRAM価格の高止まりは少なくとも2028年まで、場合によっては2029〜2030年まで続く可能性がある。マザーボードメーカーもこの潮流を読んでおり、GIGABYTEはDDR4対応のLGA 1700マザーボードを新たに投入している。
Raptor Lakeは10nmプロセスの製品であり、Intelには何年もこの設計を維持できる製造基盤がある。組み込み向けのBartlett Lakeも10nmで生産が続いており、ラインが止まる気配はない。
PCを組むたびに「DDR5かDDR4か」を天秤にかける日々は、まだしばらく終わりそうにない。
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