Apple、TelegramをApp Storeから一時削除。理由は1件のCSAM

月間10億人超が使うメッセージアプリが、1ユーザーの投稿を理由に全世界のApp Storeから約40分間消えた。CSAM(児童性的虐待素材)への対処は当然だが、1社がアプリの生死を瞬時に決められる仕組みが改めて露わになった。

Apple、TelegramをApp Storeから一時削除。理由は1件のCSAM

月間10億人超が使うメッセージアプリが、1ユーザーの投稿を理由に全世界のApp Storeから約40分間消えた。CSAM(児童性的虐待素材)への対処は当然だが、1社がアプリの生死を瞬時に決められる仕組みが改めて露わになった。


40分間の空白

現地時間8月3日の夜、TelegramがiOSとiPadOSのApp Storeから姿を消した。検索しても表示されず、直接リンクを開いても「ページが見つかりません」と返される。米国、インド、オーストラリア、シンガポールを含む複数の国と地域で同時に起きていた。

既にインストール済みのユーザーには影響がなかった。メッセージの送受信も通話も通知も、すべて通常通り動作していた。

止められたのは新規ダウンロードと再インストールだけだ。Mac App StoreとGoogle Playには一切影響がなく、削除はiOS/iPadOSのApp Storeに限定されていた。

約40分後、Telegramは復元された。

Appleの説明、Telegramの反論

Appleは9to5Mac宛ての声明で理由を明かしている。

当社の審査でApp Storeの厳格なガイドラインに違反する児童性的虐待素材(CSAM)が見つかったため、Telegramを一時的に削除しました。開発者が速やかにコンテンツを削除し、投稿したユーザーをBANした後、アプリを復元しました。

この声明は、アプリの復元から約20分後に出された。復元が先、説明は後だった。

Telegramは声明で異なるニュアンスを示した。Appleが報告したのはCSAMを共有した1ユーザーであり、即座にBANしたという。

加えて、2026年だけでCSAM関連のグループとチャンネルを33万7900以上削除したと強調した。2025年にもNCMEC(全米行方不明・被搾取児童センター)などNGOの報告を受けて2万9640件を処理したという。

TelegramはXに2件の投稿を残している

1件目は復元直後、「私の死亡報告は大げさだ」というマーク・トウェインの一節をもじり、末尾にAppleの絵文字を添えた軽口だった。2件目はAppleを名指しでタグ付けし、自社の安全対策ページへのリンクとともにこう書いている。「この基準がApp Storeの他のすべてのアプリにも等しく適用されるんですよね?」

「どのアプリも運用できなくなる」

この事件に最も強く反応したのは、Epic GamesのCEOティム・スウィーニー(Tim Sweeney)氏だ。AppleとのApp Store独占禁止訴訟を長年戦ってきた。

スウィーニー氏はXで、Appleが10億人のユーザーに影響する通信・プライバシーツールを「気まぐれに」排除したと批判した。

1ユーザーの違法投稿でアプリ全体を削除するなら、iMessageを含めどのアプリも同じ運命をたどりうると指摘している。

Appleはスウィーニー氏の指摘に対して追加のコメントを出していない。

CSAMの問題と、構造の問題

Telegramのコンテンツ管理には、以前から各国の司法が疑問を呈してきた。

創業者パベル・ドゥーロフ(Pavel Durov)氏は2024年8月にフランスのル・ブルジェ空港で逮捕され、CSAMの流通を含む12件で起訴された。渡航制限は2025年11月に解除されたが、フランスの刑事捜査は継続中だ。

2026年7月末には状況がさらに悪化した。ロシアのFSBがドゥーロフ氏をテロ幇助で起訴し国際指名手配に踏み切った。翌日にはオーストラリアの安全コミッショナーが、テロ関連コンテンツの未削除を理由にTelegramを最大5460万豪ドルの制裁金を伴う訴訟(約3800万米ドル)の対象にしている。

こうした背景を踏まえれば、AppleがCSAMを見つけた時点で即座に動いたことに意外性はない。

だが、今回の出来事が提起しているのは「Telegramのコンテンツ管理は十分か」だけではない。1つのアプリストアが世界中のiOSユーザーからアプリを瞬時に消せるという構造そのものが、再び目の前に現れた。

2018年にも同じことが起きた。2024年には中国政府の要求でTelegramがWhatsAppやSignalとともに中国App Storeから排除され、今もそのままだ。6月にはインド政府が試験不正を理由にTelegram全体を6日間遮断した。

Telegram、繰り返されるApp Storeからの排除
2018年2月
不適切コンテンツを理由にApp Storeから削除
保護機能の追加後に復元。App Store排除の最初の前例
2024年4月
中国App StoreからTelegramを排除
WhatsApp・Signalとともに政府命令で排除。現在も継続
2024年8月
ドゥーロフ氏、フランスで逮捕
CSAMの流通を含む12件で起訴。刑事捜査は継続中
2025年11月
フランスの渡航制限を解除
刑事捜査は終結せず継続。起訴内容も維持
2026年6月
インド政府がTelegramを6日間遮断
医学部入試の問題漏洩対策として全面遮断
2026年7月
ロシアFSBがテロ幇助で起訴・国際指名手配
翌日にはオーストラリアもテロコンテンツ訴訟を提起
2026年8月
CSAMを理由にApp Storeから約40分間削除→復元
Telegram側は「1件の報告で即対応」と反論
※CSAM=児童性的虐待素材。App Storeからの排除は2018年・2024年(中国)に続き3度目

CSAMは許されない。だがスウィーニー氏の疑問は残る。1ユーザーの行為でアプリ全体を10億人から引き剥がせる仕組みは、どこまで正当化できるのか。

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